129 / 180
腕の中
しおりを挟む
「んっ」
闇に堕ちていた意識がふわりふわりと戻ってきた。眼を開ければそこには見知った傷跡があって一瞬、驚いたけどそのまま、その傷跡に噛みついた。
「っ、いてぇよ。寝惚けてんのか?」
その声と共に頭を撫でられた。いつもなら服を着てる身体も今日は着ていない。だから自然と傷に目が行くのだけど何故か今日は平気だった。
「…ん…イヤ…つい…傷があったから…」
自分でも意味の分からない言い訳をしてるなって思った。
「まぁ、いいんだけどよ。寝起きに噛むなや。ビックリするわ」
怒るわけでも文句を言うわけでもなく寝起きに噛むなと言われた。
「どうした?」
ぴたりと動かなくなった俺が心配になったのか顔を覗き込んできた。
特にこれという理由はなかった。
「んっ…なんでもない…ただ、自分でつけた歯形がすごいなって…」
自分でも驚くほどの痕があった。
「お湯が沁みるぐらいには酷いな」
言われた言葉にやっぱりかって思った。
「服…今日は着てないんだ…」
いつもなら着てるのに今日は服を着てないからそう呟いたら
「覚えてねぇのかよ」
って言われた。
はて?どういうこと?
「俺…なんかしたのか?」
本当に記憶が無い。
「俺が着ようとしたら着るなって怒りながら脱がしてきたんだよ」
溜め息交じりの言葉に眩暈がした。
自分が言っておきながら忘れるとか…
俺は小さく息を吐きその身体に抱き着いた。
「どうした?」
俺の身体を抱きしめながら聞かれ
「んっ…なんでもない…侑司のことがやっぱり好きだなって…」
俺は抱き着いた腕に力を込めた。
「そうか、俺も陽葵が好きだぞ」
俺を撫でながら紡がれる言葉に喜びが増す。
「なぁ…もう大丈夫だから…俺はこの傷痕もちゃんと見れるから…」
侑司を見上げて言えば
「お前は変なところで頑固になるからな。また、怖くなったらお前自身が塗り替えろ」
小さく笑いながら額にキスをされる。それが今日はなんだか恥ずかしい。だから俺は侑司の胸に顔を埋めた。
「今日は休みだし、このままもう少し寝るか」
そんな俺を抱き寄せ頭を撫でながら聞かれ
「うん。寝る。侑司の腕の中で寝る」
俺は頷きながらそう宣言した。
侑司の腕の中に抱きしめられ、トクトクと聞こえる心音を子守歌にしながら俺はまた眠りの中に墜ちていった。
やっぱり侑司の腕の中にいるのは落ち着く…
もっと…もっと…抱きしめていて欲しい…。
この腕の中に…
Fin
闇に堕ちていた意識がふわりふわりと戻ってきた。眼を開ければそこには見知った傷跡があって一瞬、驚いたけどそのまま、その傷跡に噛みついた。
「っ、いてぇよ。寝惚けてんのか?」
その声と共に頭を撫でられた。いつもなら服を着てる身体も今日は着ていない。だから自然と傷に目が行くのだけど何故か今日は平気だった。
「…ん…イヤ…つい…傷があったから…」
自分でも意味の分からない言い訳をしてるなって思った。
「まぁ、いいんだけどよ。寝起きに噛むなや。ビックリするわ」
怒るわけでも文句を言うわけでもなく寝起きに噛むなと言われた。
「どうした?」
ぴたりと動かなくなった俺が心配になったのか顔を覗き込んできた。
特にこれという理由はなかった。
「んっ…なんでもない…ただ、自分でつけた歯形がすごいなって…」
自分でも驚くほどの痕があった。
「お湯が沁みるぐらいには酷いな」
言われた言葉にやっぱりかって思った。
「服…今日は着てないんだ…」
いつもなら着てるのに今日は服を着てないからそう呟いたら
「覚えてねぇのかよ」
って言われた。
はて?どういうこと?
「俺…なんかしたのか?」
本当に記憶が無い。
「俺が着ようとしたら着るなって怒りながら脱がしてきたんだよ」
溜め息交じりの言葉に眩暈がした。
自分が言っておきながら忘れるとか…
俺は小さく息を吐きその身体に抱き着いた。
「どうした?」
俺の身体を抱きしめながら聞かれ
「んっ…なんでもない…侑司のことがやっぱり好きだなって…」
俺は抱き着いた腕に力を込めた。
「そうか、俺も陽葵が好きだぞ」
俺を撫でながら紡がれる言葉に喜びが増す。
「なぁ…もう大丈夫だから…俺はこの傷痕もちゃんと見れるから…」
侑司を見上げて言えば
「お前は変なところで頑固になるからな。また、怖くなったらお前自身が塗り替えろ」
小さく笑いながら額にキスをされる。それが今日はなんだか恥ずかしい。だから俺は侑司の胸に顔を埋めた。
「今日は休みだし、このままもう少し寝るか」
そんな俺を抱き寄せ頭を撫でながら聞かれ
「うん。寝る。侑司の腕の中で寝る」
俺は頷きながらそう宣言した。
侑司の腕の中に抱きしめられ、トクトクと聞こえる心音を子守歌にしながら俺はまた眠りの中に墜ちていった。
やっぱり侑司の腕の中にいるのは落ち着く…
もっと…もっと…抱きしめていて欲しい…。
この腕の中に…
Fin
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説




どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる