人はそれを愛と呼び、彼は迷惑だと叫ぶ。

槇瀬光琉

文字の大きさ
上 下
112 / 179

今はただ…

しおりを挟む
2人で自分の部屋に戻ってきて、取り敢えず上着だけでも着替えるかと思い寝室に入っていったら驚いた。


俺はなんで梅村に押し倒されてるんだ?


なんてぼんやりと見下ろしてくる梅村の顔を眺めながら考えてた。

何かを考えてるような顔をして無言でじっと見下ろしてる。


「どうした?どうしたい?」
なら、こいつが吐き出せるようにしてやればいいだけ。頬に手を添えて親指で撫でれば俺の手に自分の手を重ねて、すりってすり寄る。

「ヒナ?どうしたい?」
もう一度、同じ言葉を口にすれば小さく首を振る。
「ヒナ、言わなきゃわからねぇよ」
何となくはわかるが、確信がない。だから、吐き出せと促すが、首を振るだけで何も言わねぇ。


しょうがねぇなぁ


俺は内心で溜め息をつきゴロンと上下逆転するように身体を動かす。

自分の下に梅村を組み敷きその頬を撫で
「俺の気持ちは変わってねぇぞ」
この男が気にしてるであろう言葉を口にする。
「…んとに…か?」
よく聞いてなきゃわからねぇほどの小さな声。この男の不安を物語ってる。

「当たり前だろ。寧ろ今の方がヒデェよ」
そう、この男の狂暴的な感情も込みで愛おしいと思ってるのだから。
「ガキん時から変わってないのにか?」
自分の中にある狂暴な部分、俺にだけはずっと曝しぶつけてきた。ガキだったからあの時は上手く受け止めてやれなかったそれ。だが、今は違う。

「そうだな、俺に殴りかかるなんてあん時のまんまだ。だけどよぉ、俺はそんなお前が好きなんだぜ?」
ずっと、ガキの頃それこそ桐渓の苛めにあうまでは日常茶飯事だった。両親に対するストレスを俺にぶつけてきてたんだからな。


まぁ、それを軽くあしらいながら受け止めて、甘やかしていれば依存し始めてもおかしくはない。お互いまだガキで、親に甘えたい年頃だったんだから…


「…侑司…」
甘えるように名前を呼び首に抱きついてくる。その身体を抱き締めながら
「お帰り、ヒナ」
本当の意味でのお帰りを告げる。

「ん、ただいま侑司」
甘える梅村を抱き締めて、そっとそっと頭を撫でてやる。


今はただそれだけでいい。


この男が本当の意味で落ち着くまで…


今はただ…



Fin

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

続きは第一図書室で

蒼キるり
BL
高校生になったばかりの佐武直斗は図書室で出会った同級生の東原浩也とひょんなことからキスの練習をする仲になる。 友人と恋の狭間で揺れる青春ラブストーリー。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

処理中です...