人はそれを愛と呼び、彼は迷惑だと叫ぶ。

槇瀬光琉

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今はただ…

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2人で自分の部屋に戻ってきて、取り敢えず上着だけでも着替えるかと思い寝室に入っていったら驚いた。


俺はなんで梅村に押し倒されてるんだ?


なんてぼんやりと見下ろしてくる梅村の顔を眺めながら考えてた。

何かを考えてるような顔をして無言でじっと見下ろしてる。


「どうした?どうしたい?」
なら、こいつが吐き出せるようにしてやればいいだけ。頬に手を添えて親指で撫でれば俺の手に自分の手を重ねて、すりってすり寄る。

「ヒナ?どうしたい?」
もう一度、同じ言葉を口にすれば小さく首を振る。
「ヒナ、言わなきゃわからねぇよ」
何となくはわかるが、確信がない。だから、吐き出せと促すが、首を振るだけで何も言わねぇ。


しょうがねぇなぁ


俺は内心で溜め息をつきゴロンと上下逆転するように身体を動かす。

自分の下に梅村を組み敷きその頬を撫で
「俺の気持ちは変わってねぇぞ」
この男が気にしてるであろう言葉を口にする。
「…んとに…か?」
よく聞いてなきゃわからねぇほどの小さな声。この男の不安を物語ってる。

「当たり前だろ。寧ろ今の方がヒデェよ」
そう、この男の狂暴的な感情も込みで愛おしいと思ってるのだから。
「ガキん時から変わってないのにか?」
自分の中にある狂暴な部分、俺にだけはずっと曝しぶつけてきた。ガキだったからあの時は上手く受け止めてやれなかったそれ。だが、今は違う。

「そうだな、俺に殴りかかるなんてあん時のまんまだ。だけどよぉ、俺はそんなお前が好きなんだぜ?」
ずっと、ガキの頃それこそ桐渓の苛めにあうまでは日常茶飯事だった。両親に対するストレスを俺にぶつけてきてたんだからな。


まぁ、それを軽くあしらいながら受け止めて、甘やかしていれば依存し始めてもおかしくはない。お互いまだガキで、親に甘えたい年頃だったんだから…


「…侑司…」
甘えるように名前を呼び首に抱きついてくる。その身体を抱き締めながら
「お帰り、ヒナ」
本当の意味でのお帰りを告げる。

「ん、ただいま侑司」
甘える梅村を抱き締めて、そっとそっと頭を撫でてやる。


今はただそれだけでいい。


この男が本当の意味で落ち着くまで…


今はただ…



Fin

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