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小さな異変

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何かがおかしい。


誰かが言い始めた。


『なんか、会長らしくないよね?』
『うん、なんか違うね』

『どうしたんだろ?』
『なんか、ちょっと変』


そんな、小さな噂話が少しずつ広まっていき、完全にその噂を知らないヤツが居ないぐらいにまで広まった。


当の本人はその噂を耳にしてるが首を傾げるだけだ。


「俺らしくなって何が?変って何が?」
フラッと風紀委員室に来ては俺にイヤ、俺たちに聞いてくる。


「そんなぁん、梅ちゃんが変なのはぁいつもだしぃ」
「特に気にすることではないと思いましよ」

鍋屋と二村はフォローになってないフォローをしている。

「ふざけんな!俺は真面目に聞いてんだよ!お前ら二人していい加減に答えるなぁー!」

そんな二人に梅村がぶちギレる。

この時点で変だっていうのをこの男は気が付いていない。

今までならどんなふざけたことを言われてもぶちギレはしなかったのだ。


それを見て俺は

『あぁ、もうすぐかぁ』

なんてボンヤリと思う。


俺が言わないから何もわからない、記憶にない記憶。

それが梅村を追い詰めていく。

不安と、苛立ち。苛まれていく精神。

もっとも、それを仕込んだのは俺自身。


梅村を取り戻すため。今だ眠っている記憶を呼び戻すため。


桐渓のバカが起こした事件で、中途半端に暗示が解けた。

子供の頃、それこそ俺が死にそうな状態で梅村に告げた言葉。


『俺を忘れろ、全て忘れろ』


あれは一種の暗示になって梅村に効いた。

そう、本来、梅村の中にあるモノも一緒に忘れるぐらいに効いたのだ。


今の梅村じゃダメなのか?


と聞かれれば答えはNOだ。


今の梅村は梅村で楽しみがいがあるからいい。コロコロ変わる表情に態度。大概、自分絡みなのでそれは見ていて楽しい。


だが、本来の梅村が目覚めれば違った意味で楽しいのだ。


巻き込まれるのは俺じゃなく周りになりそうだがな。


一人、くつりと笑えば、それを拾った梅村が俺を睨む。


「侑司お前…一人のんびり高みの見物してんじゃねぇ」
なんて、いつになく乱暴な言葉にまた、一人で笑えば眉間に皺がよっていく。

「お前が気が付かねぇ変化をみんなが気付き始めてるってことだろ?」
机に肘を着きコイコイと手招きをすれば、眉間に皺を寄せ睨み付けたままで傍に来る。

だから梅村の胸倉を掴み引き寄せ、そのままの勢いでキスをして

『今夜、部屋に来いよ』

耳元で囁いてから離せば


「なっ、なっ、なっ、セクハラ!」
顔を赤くして叫んだ。


こういういきなりなことは相変わらず恥ずかしくて、セクハラになるらしい。


面白いヤツだ。



「梅ちゃん…やっぱり梅ちゃんは梅ちゃんだよ」
「確かに…疑いようがないですね」

鍋屋と二村がそれを見て呆れていた。

「うっさい、てかなんでだよ!」
と、いつもの梅村の叫びが部屋の中に木霊した。



なんでだよはこっちの台詞だ。


この部屋に来て叫ぶな。


俺の傍で叫ぶから耳がいてぇ。



Fin
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