人はそれを愛と呼び、彼は迷惑だと叫ぶ。

槇瀬光琉

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デタラメ

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「委員ちょ~、大丈夫ですかぁ~?」
相変わらず間の抜けた言い方で鍋屋が声をかけてくる。

「何がだ?」
なんに対して聞いてるのかを確認すれば
「んー、梅ちゃん」
愚問とばかりの返事に溜め息がこぼれる。

「毎晩、俺の部屋で荒れてる」
来る度に聞きたくても聞けなくて悶々として八つ当たりを始める。
「あちゃぁ~」
「ってことは、会長の耳にも届いてるってことですよね?」
鍋屋は顔を手で覆い、二村は青ざめている。

「そうだろうな。あの荒れっぷりは…」
昨晩の梅村を思い浮かべて答えるが自然と溜め息が出た。


俺の部屋に来て、なにかを言うわけでもなく抱きついたと思ったらグーパンチをお見舞いされた。
その後は無言のまま何度も何度も殴られて、気が済むませそうさせてたら抱きついてきて
『…バカやろ…ちゃんと…戻ってこいよ』
小さく呟いた言葉。

違うと信じたい思いと、もしかしてと言う思いの狭間で揺れ動いてやがった。


「イヤ、まずねぇだろよ。俺が梅村以外のヤツに気持ちが奪われるとか…ねぇわ」
昨夜の梅村を思い浮かべたままで出た言葉に

「それをちゃんと梅ちゃんに言ったのぉ?」
「言わないと会長がまた壊れちゃいますよ」
鍋屋と二村が聞いてくるが

「言ってねぇよ。ってかあいつ壊すのも目的の一つだしな」
ニヤリと笑えば

「うわぁ~ひでぇ!悪魔!」
「鬼畜ですね。目的があるのはわかってるけど…会長がちょっと可愛そう」
顔をひきつらした。


「記憶が戻ってんなら完全に取り戻してぇじゃん、あいつを…」
俺が小さく笑って言えば

「でも、あれを知ってるのは俺と鍋屋だけなんですよね」
「ホントにいいのぉ~それでぇ」
二人が確認の意味を込めて聞いてくる。

「それでいいからこんなことしてんだろ?」
愚問だと言えば二人は肩をすくめる。

「じゃなきゃ、あんなデタラメを侑司がほっとくわけねぇっかぁ」
「確かに。笑える」
この二人も本性隠してやがるんだけど、時おりこうやって見せてくる当たりいい性格してやがる。

「お前らが本性出したらみんながちったぁ大人しくなるかもなぁ」
なんてわざと言ってやれば

「イヤ、梅ちゃんが戻ったら大人しくなると思うし~」
「二人が揃えば逆らえないでしょう」
なんてひきつった笑みを見せる。

「まぁ、楽しみはもうちょい先ってな」
俺はもうすぐ訪れるであろう出来事を思い浮かべ呟いた。



梅村が気にしていたのは俺が他のヤツと出来てるって噂だ。


バカが流したデタラメな噂。


バカだなぁホント。



Fin

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