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おめでとう。(番外的な話)

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「はっ?」
自分でも驚くほどの間抜けな声が出た。

「うん、だから委員ちょーが消えたんだよね」
同じ言葉を鍋谷が口にする。
「イヤ、消えたってどういうことだ?」
俺は意味が分からなくて聞き返した。


「えっと、我々にもわからないんですが、これが置いてありました」
そう言って二村が差し出してきた紙には

『探すな 菊池』

たったそれだけしか書いてなかった。


「はぁ???どういうことぉ????」
俺はその紙を受け取り睨みつけながら叫んだ。

「うん、俺たちも同じだからね梅ちゃん」
「どういうことって叫びたいですよね」
鍋谷と二村もうんうんと頷きながら言ってる。


イヤ、でも、ホントにどういうこと?


だって昨日までは本当に普通でいつも通りに会話していつも通りに別れて…。


考えれば考えるほど意味が分からない。意味が分からな過ぎてグルグルと悩みだした。


「あー、梅ちゃんがヤバい状態になったかっも…」
「かもしれないねぇ」
なんて鍋谷と二村が言ってるけど俺の耳には届いてなかった。


「なんで?どういうこと?」
ブツブツ俺は一人で言いながら部屋の隅っこに行って膝を抱えて座ってた。



「あーあ。ヤバいの入っちゃったよ梅ちゃん」
「どうしようか」
2人がなんか相談してるのも俺の耳には届いてなかった。


自分の世界に入り込んでどれだけ経ったのか?


急にけたたましくなる携帯の音にビックリして現実に戻った。慌てて鳴ってる自分の携帯に出たら

『今すぐに寮の部屋にこい』

って一方的に言われて切れた。


「はぁ??なんだよ!!!」
俺は意味が分からなくて叫んで、半ば怒りながら風紀委員室を飛び出して寮の菊池の部屋へと向かった。



「おい、どういうことだよ」
菊池の部屋の扉を壊さん勢いで叩けけば
「うるせぇよ。扉壊す気か」
呆れながら菊池が扉を開けて出てきた。
「これ、どういうことだよ」
手に持ってた紙を見せて問いただせば
「そのまんまだ。俺が呼ぶまで探すなってことだ」
あっけらかんと菊池が言うので
「んでだよ!」
また叫んだ。

「うるせぇ叫ぶな。いいから入れ」
菊池が溜め息をつきながら部屋の中に引きずり込むから俺は渋々、中に入った。


「あっ」

中に入って見事に固まった。そこには俺の大好きなケーキと料理が置いてあったから。

「これを気付かれねぇように準備するのは苦労するんだぞ」
なんて言いながら菊池が俺をケーキの前に座らせた。
「えっと…これって…」
ケーキのプレートに書いてある文字を読んで驚いて菊池を見れば

「Happy Birthday」
その言葉と共にクラッカーが鳴らされ、いつの間にか人だかり。
「えっ?えっ?うそぉ~!」
俺はあまりにも急な展開で驚いてまた叫んじゃった。だってそこには鍋谷や二村まで居たんだ。

「ごめんねぇ~梅ちゃん」
「喜ばせるために芝居しました」
なんて二人に言われてしまえば怒れない。だって俺のためにやってくれたことだもん。

「あっ、ありがとうみんな」
俺は嬉し泣きしちゃった。こんなサプライズってありかよぉ。
「梅ちゃんへのプレゼントはこの部屋に置いてあるから後で見てねぇ」
「一番のプレゼントは委員長ですけどね」
なんて言われた。


みんなでご飯食べて、ケーキ食べてってプチパーティやって最終的に菊池と二人きっりになった。


「おめでとう。これが俺からのプレゼントだ」
菊池が俺に渡してくれたもの、それは万年筆だった。使いやすくて、疲れにくいやつ。菊池が愛用してるやつ。前にいいなぁって言ったのを覚えてる。
「ありがとう」
覚えてくれてたのが嬉しい。本当、どうしよう。嬉しすぎる。


「あっ、でも侑くん、この手紙だけはやめて。心臓に悪い」
俺はさっき持ってきた手紙をもう一度、菊池に見せて頼んだ。
「心配するな。ヒナを置いて消えねぇよ」
俺から手紙を取り上げ破いてゴミ箱に捨てた。

「絶対だからな!」
俺はそんな菊池にもう一度言った。やっぱり心配なんだ俺…。
「大丈夫だ。ちったぁ俺を信じろ」
菊池は小さく笑い俺の頭を撫でた。俺はそれ以上言えなくて頷いた。


この日、菊池は俺を安心させるために抱きしめて寝てくれた。


俺ってやっぱり菊池に依存してるんだなって改めて思った。


でも、みんなありがとう。俺の為に誕生日会開いてくれて。


嬉しかったよ。


ありがとう。



Fin



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