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何も言わずに(番外的な話)

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「…菊池…」
俺は小さな声で名前を呼んだ。あまりにも小さいから菊池の耳には届かないかもしれない。


「来いよ」
それでも俺の声を拾ってくれた菊池が傍に来いと呼ぶ。

何も言わないで傍に行けば


「好きなだけ甘えろ」
両手を広げて言ってくれる。


なんでだろうか?


俺はただ名前を呼んだだけだったのに、なんでわかったんだろうか?


俺はそのまま菊池の腕の中に飛び込まん勢いで収まった。

優しく俺を抱き締めてくれた。


お互い何も話さずにただずっと抱き合ったまま。


傍にいて、抱き締めてもらいたくて、甘えたいと思った。


こんな時間がほしいと思った。


「…ゆぅ…ありがとぉ…」
俺の望みを叶えてくれる菊池が好きだと思った。

俺は菊池の肩に顔を埋めぎゅっと服を握りしめる。



もっと、もっと、もっと…


もっと菊池の温もりに包まれたいと思ったんだ。

少しだけ力の入った腕。

そっと、優しく撫でられていく頭。


どれも俺を幸せにしてくれる。


俺の心を安らぎで満たしてくれる。


俺はそっと背に腕を回し服を掴んだ。



ただ、ただ、何も言葉を発せずに抱き締めあった。


それでよかったんだ。


こんな時間が俺には欲しかったんだ。


菊池との時間が…。


ありがとう侑司



Fin


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