人はそれを愛と呼び、彼は迷惑だと叫ぶ。

槇瀬光琉

文字の大きさ
上 下
70 / 179

思い出の場所

しおりを挟む
「なぁ菊池。一つ聞いてもいいか?」
風紀委員室で作業をしている菊池に声をかければ
「なにをだ?」
作業したままで返事が返ってきた。

それでも話をすることを拒否られてる訳じゃなくて、作業はしてるけど話は聞くから話せと言ってるようだった。

「子供の頃にもう一度、一緒に行こうって言った場所のことを覚えてるか?」
もしかしたら覚えてないかもしれない。それでも聞きたかったんだ。


「行かねぇぞ」
菊池から出た言葉は俺を突き放す言葉だった。
「なんでだよ!」
だからつい叫んじゃったよ。

「うるせぇ、叫ぶな」
そういいながら顔を上げた菊池は少しだけ困った顔になっていた。
「なんでだよ」
だから今度は普通のトーンで聞いた。

「行かねぇんじゃなくて、行ってもあそこにはもう何も残ってねぇからだ。お前が記憶をなくした同じ時期にあそこは壊されて無くなった」

菊池の説明に目の前が真っ暗になった。


約束してたのに、もう行けなくなっていた。


俺が記憶を無くしてる間に壊されていた。


「だから、あの場所には行けねぇ。でも、違う場所なら行けるだろ」
菊池の言葉に驚いてジッと顔を見た。

「昔の記憶や思い出じゃなくて、今の梅村陽葵の思い出を作っていけばいいだろ?これからだって時間はあるんだしな」
こういうときの菊池はちゃんとそれを実行してくれるのはわかってるけど
「い、いいのか?」
つい聞いてしまった。

「ダメなら言わねぇよ。お前が俺を本気にさせれたらもっといい思い出も増えるかもな」
「その言葉、後悔するなよ!」
菊池の言葉に俺が言えば
「まぁ、がんばれ」
なんてニヤリと笑って言われた。


でも俺は気が付いてる。


菊池侑司は好きでもない相手にこんなことしないのを...。

俺を守るために恋愛ゲームをしてることを...。

今まで俺を追い回してきてた奴らから俺を守るためにゲームをしてることに...。


でもゲームの勝敗は決まってる。


結局は俺の負け。


菊池侑司から離れられないのは俺だから。



Fin

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

雄牛は淫らなミルクの放出をおねだりする

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...