上 下
60 / 173

終焉

しおりを挟む
「菊池-!」
梅村の悲痛な叫び声が廊下に響き渡った。


「いっ、いててて、離せよ!」
そんな梅村の叫びをかき消すように声をあげるのは桐渓だ。


カン、カラン


と乾いた音が響き桐渓の手からナイフが落ちる。

「大人しくしろ。このまま暴れれば腕の一本を失うことになるぞ」
俺は桐渓を押さえつけながら、腕を締め付ける。もちろん、本気でやれば折れるだろう。


「菊池、大丈夫か?」
のんびりとした声で声をかけてきたのは風紀委員の顧問の喜多河だ。
「一応は大丈夫です」
俺が返事をすれば

「ならよかったわぁ。ほんじゃ、すみませんがこいつ連行してください」
喜多河は一緒に来ていた警察に桐渓を連れていくように頼む。

「離せ、俺は何もやってない!離せ!」
俺の手から警察へと移された桐渓は自分は何もやってないと騒ぎ出す。


「往生際の悪いヤツだな。お前の行動は全部ビデオで撮られてたし、警察もそれを見てたんだよ」
俺の代わりに喜多河が説明をする。


そう、この階段付近には監視カメラが取り付けられている。もちろん、今回のためではなく、校内で行われる犯罪行為を見逃さないためである。


この階段付近でよくカツアゲとかが行われるのが原因なだが...。今回はそれのお陰で桐渓の犯行を一部始終、別の部屋で教師たちと警察が見ていたと言うわけだ。


「違う!俺じゃない!」
桐渓がまだ騒いでいる。


「...るさい...うるさい!全部お前が、俺を壊すためにやったことじゃないか!俺だけじゃなくてみんなを巻き込んで、菊池にケガさせて!小学校の時から全部お前が逆恨みでやってきたことだ!」
いつの間にか、佑依斗と季里仁の手を抜け、俺の傍にたち梅村が怒鳴る。その手は俺の服を掴み震えていた。


「大丈夫だ。もう、お前には攻撃できない」
俺は梅村の頭を自分の肩に押し付け撫でてやる。
「...ぅん...ありがと...」
涙声になりながらお礼を口にして俺の肩に完全に顔を埋めた。


「じゃぁ、桐渓は警察に引き渡したことだし、菊池お前は病院な」
桐渓が連行されたのを見送ってから喜多河が俺に向き合い言ってくる。
「あー、先生こいつも一緒でいいですかね?多分、離れないんで...」
ぎゅっと俺の制服を掴んでいる梅村を指差して一応聞いてみれば

「そいつはそいつでケガしてると困るだろ。一緒に階段から落ちてるんだからな」
喜多河の呆れた言葉に

「そういえばそうでしたね」
俺はそうだったなと思い出す。ケガをさせないように庇いながら落ちたつもりだが、ケガをしてると困るなとのんきに思った。


結局、俺と梅村は喜多河に連れられて病院へと向かった。


梅村にはケガひとつなくてよかった。俺はまぁ、背中をケガしてるし、桐渓が突進してきたときに手を少し切ったぐらいだ。


病院から帰った後が大変だったけどな。


梅村を慰めるのが一苦労だった...。


しょうがないんだけどな。


あいつらにもちゃんとお礼を言っとかないとな。


Fin

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...