上 下
50 / 176

不安といら立ち

しおりを挟む
色々と、思い出して、不安とか、苛立ちとかが溢れていって、誰彼かまわずに当たり散らしそうになって、今まで以上に人を拒絶した。


「梅ちゃん、大丈夫?」
風紀委員の部屋の隅っこで膝を抱えて座っていたら、急に声をかけられて顔を上げて相手を見れば鍋谷だった。

「委員長ちょっと外出しちゃったからね。俺でごめんね?」
少しだけ困った顔で謝る鍋谷。俺は慌てて首を振った。

「みんなを困らせてるのは俺だから...ごめん」
自分が悪いっていうのは自覚してるんだ。ただ、それがどうにも出来ないだけで...

「うん、大丈夫。梅ちゃんのことは守るって約束だから俺は全然気にしてないよ」
鍋谷が笑うが、口にしたその言葉の意味がわからない。

「守るって約束?誰と?」
誰がそんな約束をしたのか?

「フフフ、それは梅ちゃんの胸の中にいる人物。梅ちゃんがずっと傍にいる人」
ふふふと笑いながら言われ、自分の中にいる人物なんて一人しかいなくて、でも、その大切な人物を俺はこの間まで忘れていたのだ。

「もしかして...侑くんがずっと俺を?」
答えてくれないかもしれないけど聞いてしまった。

「それは教えな~い。でもわかってるでしょ梅ちゃん」
ニヤリと笑う鍋谷にコクリと頷けば

「やっぱ、梅ちゃんを落ち着かせるのは委員長の話が一番だね」
なんて鍋谷はいって、どこから取り出したのか温かい缶コーヒーをくれた。

俺はそれを受け取り飲みながら思う。

鍋谷の言うとおり、菊池のことを考えている間に俺の苛立ちは不思議とおさまっていた。


でも、あいつがいないからきっとまたイライラし始めるだろうけどな。


Fin

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

淫らな粒は次々と押し込まれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...