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Act 2

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30分だけ埜上の相手をするだけだったはずが結局はいつものように5分オーバーだ。

「全くあのバカは…」
そうぼやきたくなるのは仕方がないだろう。


あの男とは所謂、幼馴染で幼稚園に入る前から兄弟のように育ってきた。その為あいつの姉にも弟のように育てられた。
小学、中学と上がるにつれてあいつは少女漫画に夢を見るようになった。


まぁ、少女漫画ばっかり読み漁ってたからなあいつ。女の姉弟がいるとそれもしょうがないのかと思う。
幼馴染だからこそ、あいつに少女漫画ばっかり付き合わされた。

漫画自体読むのは特に偏見とかはなかった。普通に話が面白かったからな。


だが、何時しかあいつは本気で少女漫画のような恋がしたいと言い出すようになった。夢見てるだけじゃなくて、本気でしてみたいと。

中学の時、あいつは女子に人気だった。それこそ、よく告白をされていた。が、結果としてそれが実ったことは一度もない。
漫画のような恋がしたいというくせに、告白されてもすべて断っているのだ。あの男自身が気が付いていない心の問題。


あいつは確かに女の子が好きだ。だから可愛い彼女を作って漫画みたいなことをしてみたいと思っている。

だが、それが叶わない理由をあいつ自身気が付いていない。


「あいつは、いつになったら気付くんだろうな」
クスリと笑みがでる。


あいつは漫画の少女目線ではなく少女が夢見てる男の役をやりたいと言ってはいるが、それは違う。

あいつは全部、少女目線で体験したいのだ。
壁ドンだって、強引に引き寄せられるのだって、後ろから覆いかぶさられるのだって全部、女の子が体験していた話だ。
それをやってみたいのではなく、やってもらいたいのだ。

それをわかっていて毎回あいつにやってる俺も意地が悪い。あいつの反応が毎度毎度、初心で可愛いのだ。それを見てるのが楽しくて意地悪をしてるんだが、柚木辺りにはソロソロ気付かれるかな?


実は俺があいつのことが好きでやってると…。


自分の気持ちに気が付いたのは中学の2年ぐらいだ。自分なりに悩んだ。悩んでるときに不良どもにケンカを吹っ掛けられて、倍返しで沈めたらなんでか仲良くなって今に至る。


悩むのやめて不良どもとつるんで、不良と同じ格好して、ピアス開けて、喋り方も悪いものに変え、あいつと一線を引くために、あまり関わらないようにと思ったんだが、あいつにはそれが利かなかったようだ。

根本的な内面が変わったわけじゃないからな。表面上が変わった、それだけだ。

まさか、同じ高校に進学してくるとは思ってみなかったし、役職に就くとも思ってもみなかった。

正直なところめんどくせぇ。

あいつの相手しながらの役職は面倒だ。


「あいつが漫画のような恋に憧れてなきゃ楽なんだよ」
あいつの話を聞いてやるのも俺の仕事になってるからな。相手しなかったらしなかったで暴走しそうだから仕方がない。


ただ、一番気を病むのはあの男の『少女漫画のような恋がしたい』という言葉を利用して、あいつを陥れる奴が出てくる可能性があることだ。

だから俺のいない所でその話はするなと忠告はしてあるが、あいつのことだからポロっと言いそうで怖いんだよ。

「ホント、勘弁してくれ。火消しに走り回るのはこっちだってこと知っといて欲しんだがな」
そうぼやいてもあいつのことだから聞き入れないだろう。

なら、あいつに気付かれる前に不安要素は片っ端から片付けていくまでだ。


「あー、めんどくせぇ。変な夢みんなよなぁ」
俺は頭をバリバリと掻きながら自分の城である風紀委員室へと向かった。


頼むからこれ以上の面倒ごとは増やさないでくれよ。


毎度毎度、相手するのも大変なんだから。


なんて思うがあいつのことだから自分が本気で恋した相手に出会うまではずっと言いそうなんだよな。


俺は盛大に溜め息をついて足早に風紀委員室へと向かった。



Fin

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