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第20話
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「リュオン、ねぇさっきから気になってるんだけど…」
ミシェルがずっと気になっていたことを口にしようとしたら
「悪いミシェル。俺でも止められない」
リュオンが苦笑を浮かべて謝った。
それもそのはずである。リュオンはミシェルと一緒に露店を見て回っているはずだったのだが、何時しかその露店はまるで二人を何処かへ誘導するように移動していくのだ。
そして、2人が誘導されるがまま目的の場所に辿り着いたその途端に
「リュオン様おかりなさーい!」
「リュオン様おめでとー!」
そんな言葉と共に紙吹雪や花などが舞う。一気にお祭りが始まったのだ。
リュオンの帰還と成長。そして、ミシェルを嫁と思い込んでる住人たちによる歓迎の祭りだった。
「はいよ、美味しいものたくさん作ったからたんとお食べ!」
大量の料理が乗った大皿をリュオンとミシェルの前にあるテーブルにどんと置きながら女主人が声をかける。
「うわぁ、美味しそう」
それを見てミシェルが嬉しそうな顔を見せる。
「ほら、お食べお嬢さん」
ミシェルに小皿とフォークを渡せば、それを受け取りミシェルが大皿の料理を取り分けて一口食べる。
「んっ、熱いけど、美味しぃわ」
頬を赤くしてミシェルが美味しい美味しいと連呼する。その姿を見て、街中のみんなが嬉しそうに笑う。
「お嬢さん名前は?私はねマムっていうのさ」
料理を褒められて上機嫌な女主人がミシェルに聞く。
「私はミシェル。マムさん、これ美味しくてほっぺが落ちそうよ」
ミシェルは少し興奮気味に答えると
「ははは。いい子じゃないかリュオン様。こんなに美味しそうに食べてくれると私も作り甲斐があるよ」
マムはがははと軽快に笑い本当に嬉しそうだ。
「ミシェルは街での料理をあまり知らないからな。マムが教えてやって欲しい」
リュオンも嬉しそうに食べているミシェルを見ながらマムにお願いをする。
「なんだい、そうなのかい?なら、それこそ私の腕の見せどころじゃないか。ミシェル、滞在中はいつでもおいで、このマム様が教えてあげるよ」
マムはパンと自分の腕を叩きいう。ミシェルは一瞬、驚いた顔をしたが
「はい!ぜひ教えて欲しいわ」
大きく頷いた。
「ふぉっふぉっふぉ。ほんにいい子じゃのうリュオン様」
2人のやり取りを見ていたリュオンに声をかけたのは街の長であるトムリだった。
「えぇ、すごくいい子ですよ彼女」
リュオンは素直に答える。
「ふぉっふぉっふぉ。リュオン様も彼女にぞっこんですな」
「ぶっ」
トムリの言葉にリュオンは飲みかけのジュースを吹きだした。
「汚いねぇリュオン様。図星だからって吹くんじゃないよ」
それを見ていたマムが怒る。
「リュオン大丈夫?」
ミシェルは慌てて咽ているリュオンの背をさすりだした。
「っ、げほっ、ミシェルありがとう、もう大丈夫だ。トムリ変なことを言うな」
リュオンはミシェルにお礼を言ってからトムリに向かって文句を言うが
「おや?違うのかい?傍から見ててもまるわかりだけどなぁ」
マムがトムリの代わりに返事をする。
「ふぉっふぉっふぉ。リュオン様から彼女への優しさオーラがダダ洩れですじゃ」
止めを刺すようにトムリが言うもんだからリュオンは頭を抱え込んだ。
「それにお気付きですかなリュオン様」
トムリは小さな笑みを浮かべてリュオンを見る。
「なにがだ?」
リュオンは意味が分からなくて聞き返せば
「ふぉっふぉっふぉ。空を見てごらんなさい」
トムリの言葉にリュオンとミシェルが空を見上げる。
「うわぁ、すごい。あれは何?」
空を見上げたミシェルがリュオンに聞けば
「いつの間に…」
リュオンが驚き呟いた。
2人が見上げた空には街の入口で出会ったポポと同じような大きさの丸い球体が2人の周りに浮いていた。勿論、ポポたちも周りにいたのだ。
「だが、俺が呼んでも来ないんだよあいつらは。俺が来いって言ってるのに」
少しだけ不貞腐った顔でリュオンが言う。それを見てミシェルが小さく笑った。まるでリュオンが子供のようだったから。
「ふぉっふぉっふぉ。それは仕方ありませんな、リュオン様は竜王のお子。王子ですからのう。あの子らにしてみれば近寄りがたい存在ですじゃ」
そんなリュオンにトムリが傍に寄れぬ理由を口にする。リュオンもそれはわかっていたのだ。
リュオンは小さく息を吐いた。
空に浮かぶ半透明の丸い球体それは水竜の仲間である。ポポとはまた違った小竜だった。
ミシェルがずっと気になっていたことを口にしようとしたら
「悪いミシェル。俺でも止められない」
リュオンが苦笑を浮かべて謝った。
それもそのはずである。リュオンはミシェルと一緒に露店を見て回っているはずだったのだが、何時しかその露店はまるで二人を何処かへ誘導するように移動していくのだ。
そして、2人が誘導されるがまま目的の場所に辿り着いたその途端に
「リュオン様おかりなさーい!」
「リュオン様おめでとー!」
そんな言葉と共に紙吹雪や花などが舞う。一気にお祭りが始まったのだ。
リュオンの帰還と成長。そして、ミシェルを嫁と思い込んでる住人たちによる歓迎の祭りだった。
「はいよ、美味しいものたくさん作ったからたんとお食べ!」
大量の料理が乗った大皿をリュオンとミシェルの前にあるテーブルにどんと置きながら女主人が声をかける。
「うわぁ、美味しそう」
それを見てミシェルが嬉しそうな顔を見せる。
「ほら、お食べお嬢さん」
ミシェルに小皿とフォークを渡せば、それを受け取りミシェルが大皿の料理を取り分けて一口食べる。
「んっ、熱いけど、美味しぃわ」
頬を赤くしてミシェルが美味しい美味しいと連呼する。その姿を見て、街中のみんなが嬉しそうに笑う。
「お嬢さん名前は?私はねマムっていうのさ」
料理を褒められて上機嫌な女主人がミシェルに聞く。
「私はミシェル。マムさん、これ美味しくてほっぺが落ちそうよ」
ミシェルは少し興奮気味に答えると
「ははは。いい子じゃないかリュオン様。こんなに美味しそうに食べてくれると私も作り甲斐があるよ」
マムはがははと軽快に笑い本当に嬉しそうだ。
「ミシェルは街での料理をあまり知らないからな。マムが教えてやって欲しい」
リュオンも嬉しそうに食べているミシェルを見ながらマムにお願いをする。
「なんだい、そうなのかい?なら、それこそ私の腕の見せどころじゃないか。ミシェル、滞在中はいつでもおいで、このマム様が教えてあげるよ」
マムはパンと自分の腕を叩きいう。ミシェルは一瞬、驚いた顔をしたが
「はい!ぜひ教えて欲しいわ」
大きく頷いた。
「ふぉっふぉっふぉ。ほんにいい子じゃのうリュオン様」
2人のやり取りを見ていたリュオンに声をかけたのは街の長であるトムリだった。
「えぇ、すごくいい子ですよ彼女」
リュオンは素直に答える。
「ふぉっふぉっふぉ。リュオン様も彼女にぞっこんですな」
「ぶっ」
トムリの言葉にリュオンは飲みかけのジュースを吹きだした。
「汚いねぇリュオン様。図星だからって吹くんじゃないよ」
それを見ていたマムが怒る。
「リュオン大丈夫?」
ミシェルは慌てて咽ているリュオンの背をさすりだした。
「っ、げほっ、ミシェルありがとう、もう大丈夫だ。トムリ変なことを言うな」
リュオンはミシェルにお礼を言ってからトムリに向かって文句を言うが
「おや?違うのかい?傍から見ててもまるわかりだけどなぁ」
マムがトムリの代わりに返事をする。
「ふぉっふぉっふぉ。リュオン様から彼女への優しさオーラがダダ洩れですじゃ」
止めを刺すようにトムリが言うもんだからリュオンは頭を抱え込んだ。
「それにお気付きですかなリュオン様」
トムリは小さな笑みを浮かべてリュオンを見る。
「なにがだ?」
リュオンは意味が分からなくて聞き返せば
「ふぉっふぉっふぉ。空を見てごらんなさい」
トムリの言葉にリュオンとミシェルが空を見上げる。
「うわぁ、すごい。あれは何?」
空を見上げたミシェルがリュオンに聞けば
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リュオンが驚き呟いた。
2人が見上げた空には街の入口で出会ったポポと同じような大きさの丸い球体が2人の周りに浮いていた。勿論、ポポたちも周りにいたのだ。
「だが、俺が呼んでも来ないんだよあいつらは。俺が来いって言ってるのに」
少しだけ不貞腐った顔でリュオンが言う。それを見てミシェルが小さく笑った。まるでリュオンが子供のようだったから。
「ふぉっふぉっふぉ。それは仕方ありませんな、リュオン様は竜王のお子。王子ですからのう。あの子らにしてみれば近寄りがたい存在ですじゃ」
そんなリュオンにトムリが傍に寄れぬ理由を口にする。リュオンもそれはわかっていたのだ。
リュオンは小さく息を吐いた。
空に浮かぶ半透明の丸い球体それは水竜の仲間である。ポポとはまた違った小竜だった。
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