隣の美人なお姉さんはアルファで憧れだった高校の先輩でした。

槇瀬光琉

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10話

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先輩に手を引かれて戻ってきたのは先輩の部屋だった。

「座って待ってて」
先輩は俺をソファに座るように言って部屋を出ていく。俺は言われた通りに座って待ってた。


「ブラックで大丈夫かな?」
そう言いながらコーヒーの入ったカップを2つ持って戻ってきた。
「あっ、はい。大丈夫です」
俺は返事をして反射的に受け取ろうとしたら

「熱いからテーブルに置くよ」
小さく笑って言われた。確かにいれたてなら熱いや。って思った。

テーブルにカップを置くと先輩は隣に座った。


しばらくの沈黙。お互いに何を話していいのかわからなくて黙り込んでしまった。


それでも先に口を開いたのは先輩だった。


「幻滅したでしょ?」
急に言われて
「えっ?」
意味がわからなくて、聞き返しちゃった。

「憧れてた先輩がこんな姿になってて幻滅したでしょ?」
少しだけ悲しげな顔で言われた。
「そんなこと、そんなことないです!」
俺は反射的に叫んでた。

「無理しなくていいよ。憧れてた先輩がこんな姿になってるのは驚くだろうし、幻滅しても当たり前だからね」
やっぱり悲しげな顔で同じことを言う。
「そんなことない。俺…実はずっと、部屋の前で初めて会った時から女性の立華さんに先輩を重ねてました。笑う顔とか、ずっと、先輩の面影を重ねてました。俺、立華さんにずっと失礼なことしてたんです」
俺はずっと女性の立華さんに先輩の面影を重ねていたことを告げた。

「そんなに好きだったんだ」
ポツリ呟かれた言葉に俺の顔は真っ赤になった。
「ごめんなさい。迷惑だってわかってます。でも…俺は…」
叶わない恋だってわかってるから言うつもりはなかったんだ。本当に…。

「ねぇ、私こんなんだよ?それでもいいの?」
急にそんなことを言われて
「えっと…どういう意味ですか?」
意味が分からなかった。

「だから、俺はこれからもお前の前ではこの姿だぞ?男の姿なんて望んでもおいそれとは見せてやれねぇぞ?」
急に男の言葉で言われてビックリした。
「大丈夫です。そりゃ男の姿の先輩も見たいけど…先輩には先輩の事情があってその姿になってるんでしょ?その姿の先輩も好きだから平気です」
って、そこまで言ってハタと気が付く。どさくさに紛れて俺は今、好きだと言ってしまった。

「どんだけ好きなんだよ」
笑いながら言われた言葉に俺はますます赤くなった。恥ずかしい。
「ほっといてください。俺が勝手に好きになっただけなんで…」
この想いは誰にも止められない。叶わないって思ってるからそれでいいんだ。

「本人を前にしても告白するつもりはないんだな」
ジッと俺を見ながら言われる言葉。
「い…言いません。だって…だって…」
俺はそこまでしか言葉に出せなかった。だって、フラれるのが怖い。断られるのが怖い。

「発情してるオメガなら誰でもいいってわけじゃないんだけどな俺」
そんなことを言われてえっ?て思った。
「どういう意味ですか?」
意味が分からない。でも、あの時は俺から誘ったようなもんだし…。先輩はずっとダメだって言ってたはずだから…。

「どういう意味だと思う?」
なんて反対に聞かれてしまった。
「わかりません」
本当に意味が分からないんだ。

「そうだなぁ、ヒントを一つ。俺がこの場所に引っ越してきたのはある目的のため。どうしてもこの場所じゃなきゃダメだった」
なんてヒントをくれるけどわからない。
「えっと、もしかして誰かに会うためですか?」
それが誰かはわからないけど…

「当たり。人に会うため。誰だと思う?」
なんでこんな質問をするんだろうか?
「わかりません。先輩が誰を想ってここに来たのか俺にはわかりませんよ」
本当にわからない。

「にっぶいなぁ。お前、今まで俺が話してきてたの聞いてたか?」
少しだけ呆れた顔で言われた。今までって…公園での話しか…あれ?…
「えっと…もしかして…俺ですか?」
話的に俺のことしか話してない気がする…

「そう。この姿になっても、俺だとわからなくてもいいから来栖颯哉に会いたかったんだ」
先輩の言葉に驚いた。だって理由がわからない。先輩が俺に会いたいだなんて…


俺は本当に意味が分からなくてボーッと先輩を見てるだけしかできなかった。


先輩の気持ちがわからなくてただ、ただ、ボーッと見るだけしかできなかったんだ。


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