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9話
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「来栖くん、覚えてないんだね」
その言葉に驚いて顔を上げれば、悲しそうな顔で立華さんが俺を見てた。
「あっ…ごめんなさい…俺…高校に上がる前の1,2年の記憶が無いんです。この場所での楽しい時間を過ごしてたっていう記憶はあるんですが、誰と会ってたとか、いつの記憶かっていうのが思い出せなくて…」
俺は反射的に答えてた。自分の記憶が無くなってるって立華さんに話したところで、立華さんが誰のことを話してたのかわからないのに…。
「えっ?記憶が無いの?」
反対に驚かれちゃったけど…。
「はい、精神的なショックで記憶無くしたらしくて…その理由を知ってる両親は事故で亡くなったので聞けなくて…だから俺その時の記憶が無いんです。この場所で楽しい時間を過ごしたってことしか本当に覚えてなくて…」
ムリに思い出す必要もないと思って、気にしてなかった。精神的なものだから、自分でも嫌なことがあったりとかしたのかもしれないし…。
「そっか…そうなんだ…」
その言葉を呟いたらまた黙ってしまった。
「来栖颯哉くん、この場所で、君は絶望の淵にいた私を救ってくれたんだよ」
そっと頭を撫でられ驚いて立華さんを見て、聞いた言葉に俺はますます驚いた。
「えっ?どういうことですか?」
意味が分からない。
「この公園のあの階段の場所…あそこで俺はずっと燻ってた。中学の時、足を故障して走ることに絶望をしてた。足が治っても部活にも行かずに、この場所でずっと座ってた。何をするわけでもなく、ただ座ってたんだ」
いつもの、男の口調で話し始めた立華さんは懐かし気に階段を見つめる。
「ある日、君が来て、燻ってる俺に話しかけてきた。ウザとか、来るなとか、結構ヒドイ言葉を投げかけてもめげずに俺に会いに来て、楽しそうに話をして行ったんだ」
俺の記憶の中にない出来事を教えてくれる。
「この場所に来て、俺に笑いながら楽しそうに話をしていく。俺はそんな君の笑顔に救われていくのを感じた。この場所で燻ってた俺が君の笑顔で救われたんだ。だけど、ある日、君は来なくなった。何日も待ったけど、来なくて俺も受験の関係で来なくなってもう会えないと思ってた」
さっき話していたのは先輩自身のことだったんだと気が付いた。
「でも本当に驚いたよ、会えなくなった君がまさか同じ高校に入学してきたんだからさ。しかも入学初日に迷子になってたし」
小さく笑いながら言われた言葉にカッと顔が赤くなる。
「えっ、そこ覚えてるんですか?恥ずかしい…」
気が付いてないって思ったんだ。俺のことなんて覚えてないって思ったし…。
「覚えてるよ。泣きそうな顔しながらウロウロしてたからな。学校でやる大会にも毎回、顔出してるのにも気が付いた。最後の大会は…来栖の為に頑張った大会だったんだ。あの時から俺は学校からいなくなるのが決まってたから…」
そこまで言ってまた、黙ってしまった。
「…あの…ムリに話さなくてもいいです。人には話したくないことだってあるのわかってるから…俺自分のことしか考えてなかったら、立華さんに迷惑かけちゃったけど…」
立華さんには立華さんの理由があってのことなんだって今更ながらに思ったんだ。
だから…人に言えないこととか、言いたくないことを無理に言ってほしくはなかった。
「帰ろか。帰って部屋で話そう」
「はい」
立華さんは大きな溜め息をつくと俺の手を引き公園を後にした。
後になってから気が付いたんだけどさ、この時の立華さんの手が少しだけ震えてた。
それだけ立華さんにとって重要なことなんだって…。
俺が聞いちゃいけなかったんだろうなって…。
後になって全部気が付いたんだ。
それでも、先輩のことをもっと知りたいと思った俺は愚かだろうか?
もっと、色んな先輩を見たいと思ったんだ。
例え、この恋が実らなくても、傍にいられるだけでいいって思ったんだ。
だって…やっぱり先輩のことが好きだって思ってしまったから…。
叶わない恋をしてるって自覚してるから。
その言葉に驚いて顔を上げれば、悲しそうな顔で立華さんが俺を見てた。
「あっ…ごめんなさい…俺…高校に上がる前の1,2年の記憶が無いんです。この場所での楽しい時間を過ごしてたっていう記憶はあるんですが、誰と会ってたとか、いつの記憶かっていうのが思い出せなくて…」
俺は反射的に答えてた。自分の記憶が無くなってるって立華さんに話したところで、立華さんが誰のことを話してたのかわからないのに…。
「えっ?記憶が無いの?」
反対に驚かれちゃったけど…。
「はい、精神的なショックで記憶無くしたらしくて…その理由を知ってる両親は事故で亡くなったので聞けなくて…だから俺その時の記憶が無いんです。この場所で楽しい時間を過ごしたってことしか本当に覚えてなくて…」
ムリに思い出す必要もないと思って、気にしてなかった。精神的なものだから、自分でも嫌なことがあったりとかしたのかもしれないし…。
「そっか…そうなんだ…」
その言葉を呟いたらまた黙ってしまった。
「来栖颯哉くん、この場所で、君は絶望の淵にいた私を救ってくれたんだよ」
そっと頭を撫でられ驚いて立華さんを見て、聞いた言葉に俺はますます驚いた。
「えっ?どういうことですか?」
意味が分からない。
「この公園のあの階段の場所…あそこで俺はずっと燻ってた。中学の時、足を故障して走ることに絶望をしてた。足が治っても部活にも行かずに、この場所でずっと座ってた。何をするわけでもなく、ただ座ってたんだ」
いつもの、男の口調で話し始めた立華さんは懐かし気に階段を見つめる。
「ある日、君が来て、燻ってる俺に話しかけてきた。ウザとか、来るなとか、結構ヒドイ言葉を投げかけてもめげずに俺に会いに来て、楽しそうに話をして行ったんだ」
俺の記憶の中にない出来事を教えてくれる。
「この場所に来て、俺に笑いながら楽しそうに話をしていく。俺はそんな君の笑顔に救われていくのを感じた。この場所で燻ってた俺が君の笑顔で救われたんだ。だけど、ある日、君は来なくなった。何日も待ったけど、来なくて俺も受験の関係で来なくなってもう会えないと思ってた」
さっき話していたのは先輩自身のことだったんだと気が付いた。
「でも本当に驚いたよ、会えなくなった君がまさか同じ高校に入学してきたんだからさ。しかも入学初日に迷子になってたし」
小さく笑いながら言われた言葉にカッと顔が赤くなる。
「えっ、そこ覚えてるんですか?恥ずかしい…」
気が付いてないって思ったんだ。俺のことなんて覚えてないって思ったし…。
「覚えてるよ。泣きそうな顔しながらウロウロしてたからな。学校でやる大会にも毎回、顔出してるのにも気が付いた。最後の大会は…来栖の為に頑張った大会だったんだ。あの時から俺は学校からいなくなるのが決まってたから…」
そこまで言ってまた、黙ってしまった。
「…あの…ムリに話さなくてもいいです。人には話したくないことだってあるのわかってるから…俺自分のことしか考えてなかったら、立華さんに迷惑かけちゃったけど…」
立華さんには立華さんの理由があってのことなんだって今更ながらに思ったんだ。
だから…人に言えないこととか、言いたくないことを無理に言ってほしくはなかった。
「帰ろか。帰って部屋で話そう」
「はい」
立華さんは大きな溜め息をつくと俺の手を引き公園を後にした。
後になってから気が付いたんだけどさ、この時の立華さんの手が少しだけ震えてた。
それだけ立華さんにとって重要なことなんだって…。
俺が聞いちゃいけなかったんだろうなって…。
後になって全部気が付いたんだ。
それでも、先輩のことをもっと知りたいと思った俺は愚かだろうか?
もっと、色んな先輩を見たいと思ったんだ。
例え、この恋が実らなくても、傍にいられるだけでいいって思ったんだ。
だって…やっぱり先輩のことが好きだって思ってしまったから…。
叶わない恋をしてるって自覚してるから。
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