隣の美人なお姉さんはアルファで憧れだった高校の先輩でした。

槇瀬光琉

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6話

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あれから1週間ぐらいは発情したままで、俺は外にも出ないで過ごした。

でもその間も考えていたのは立華さんと先輩のこと。


立華さんに先輩の面影を重ねていたのは事実だし、立華さんと一緒にいたいと思ったのも事実だ。


「俺…どうしちゃったんだろ…」

立華さんに出会ってからの自分がおかしいのは事実で、それがなんでか?って言われると理由がわからない。だって、立華さんは女の人で、先輩は男の人だから…。

と考えて、ん?って思った。

だって俺、立華さんとしたんだよな?あれ?でもアルファなら女の人でもオメガを妊娠させれるはずで…ん??なんだか意味が分からなくなってきた。

自分の中で女の人でも男の俺を抱けるのか?って疑問が浮かび上がってきた。でも、現に俺は立華さんとしたし、俺の中に入ってたわけだから…。


考えれば考えるほど意味が分からなくなって考えるのを放棄した。今の自分にはそんなこと気にしなくてもいいやって思ったから。


今の俺はただ、立華さんに会いたいなってことばかり考えてた。


あの日から立華さんに会ってないから余計に会いたいのかもしれない。

でも、どうしてそんな風に思うのかがわからない。


『ごめん』

立華さんが書いたメモを見て溜め息をつく。


何を謝ってるのだろうか?


謝ってもらうことなんて何もないのに…。だってあの時の俺は自分で立華さんを誘ったんだし…。


俺はメモを机の上に置き、布団の中に潜った。そして、明日会えたらいいなと思いながら眠りについた。



発情も治まり普段通りの生活に戻り、大学にも、バイトにも行けるようにもなった。


なったんだけど、立華さんには会うことができなかった。


「避けられてるのかな?」
あれだけ毎日と言っていいほどあってた人がパタリと会わなくなるのはやっぱり避けられてるとしか思えない。


なんで?俺が原因?


そう考えこむ。原因はやっぱり俺が無理にでも一緒にいたいといったからだろうか?

本当は俺の相手なんてしたくなかったのかもしれない。それなのに無理やり俺が傍にいたいといったから…。


俺は立華さんに会いえないまま落ち込んだ日々を送っていた。


会えないままで1週間、2週間と経ち、ますます気分が落ち込んだままで、バイトを終えクタクタになりながら帰ってきたら見覚えのある後姿を見つけた。


「立華さん!」
俺が声をかければ、立華さんは振り返り、俺だと確認をすると足早に行ってしまおうとする。
「ちょ…待って、待って立華さん」
そう声をかけるけど止まってはくれない。


どうしてですか?俺なんか悪いことしましたか?


「待って、待ってください智景さん」
俺は立華さんを引き留めることに必死で普段なら呼ばない名前を呼んでしまっていた。


「っ、君って人は…」
呆れながらも立華さんは止まってくれた。

「ごめんなさい」
俺は素直に謝った。卑怯なことをしたんだって思ったから。
「で、なんですか?」
少しだけ棘のある言葉。

「俺、立華さんに謝りたかったんです」
会いたかったのは事実。謝りたかったのも本当。
「何をですか?」
溜め息交じりに聞かれて

「ごめんなさい。俺、立華さんに先輩の面影を重ねてました。でも、あの日、発情したあの日は立華さんと本気で一緒にいたいと思ってました。だから…ごめんなさい。俺はずっと立華さんに失礼なことしてました」
ずっと謝りたいと思ってたことをまくし立てるように言って頭を下げた。


「…謝ることないんじゃない。私がそれだけ先輩に似てたってことなんでしょ?それに…私は一言も女だとは言ってないし」
「えっ?えぇぇ!!!」
立華さんからとんでもない言葉を聞いて頭が真っ白になった。


えっ?女じゃない?えっ?嘘?


「じゃぁ、話がそれだけなら私行きますね」
立華さんはさっさと行ってしまう。
「えっ、ちょ、待って、立華さん」
俺は慌てて追いかけて立華さんの腕を掴んだ。

「今度は何ですか?」
少しイラ立った声。
「もしかして…本当は先輩なんですか?」
間違ってるかもしれない。でも、もしかしたらって思いもあったんだ。

「だったらどうするんですか?」
キツイ眼差しと声。本気でイラ立ってるのかもしれない。でも…
「…っ…俺…ずっと…先輩に…会いたかった…んです…」
もしかしてという思いが強くて涙が溢れてきた。違うかもしれないのに…。

「会ってどうするつもりなんですか?もう君の知ってる男じゃないのに」
棘のある言葉。


立華さんにとっては迷惑な話だ。俺ってバカだ。


「…っ…ごめん…なさい…立華さんには…迷惑な…話ですよね…本当にすみませんでした」
俺は掴んだままだった立華さんの腕を離して下を向いた。このまま行ってください。そういう意味を込めて。

無言で去っていく立華さんのヒールの音がその場に響いた。



「俺って…バカなぁ…俺が知ってても、先輩が俺のこと知ってるわけないじゃん…」
俺はその場にしゃがみ込んで膝に顔を埋めた。



立華さんに先輩の面影を重ねて、結局、立華さんの迷惑を考えずに行動した結果がこれって本当にバカげてる。


俺はしばらくその場から動けずにいた。



本当にバカだなぁ…俺…



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