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俺、来栖颯哉は今年大学生になったばかりだ。
高校2年の冬に両親が交通事故で亡くなり、高校の先生に色々とお世話になりながらも大学に進学することができた。
親の保険金や事故の慰謝料などを上手に使いながら、アルバイトをこなし暮らしている。
先生にお世話になったといっても、生活面とかではなく、進路のこととかだからな。
元々、両親は共働きだったので、家事などは一人でこなせるから苦じゃなかった。一人暮らしを満喫できたし、その方が都合がよかった。
巷で言うと俺はオメガだ。発情が来ると少し面倒だし、それを知られるのも嫌で、出来るだけ一人でいることを選んだ。
バイトもそういう理解のある場所を選んだし、シフトも考慮してもらっている。
ここ数日、お隣がなんだか騒がしい。元々空き家だったけど、誰か入居するのかバタバタしてる。
それは別に構わないんだけどさ、変な人じゃなきゃいいなって思う。
大学の授業受けて、バイトも終わらして、帰ってきたら玄関の前に誰かいた。
本当は疲れてるから誰とも会いたくないし、会話もしたくないんだけど自分の部屋の前だから仕方ないよな。
「あの…うちになんか用ですか?」
鍵を出しながら声をかければ、そこにいたのは美人なお姉さんでした。
「あ…初めまして。今日、お隣に引っ越してきた立華智景と言います。これ、ご挨拶にと思って」
にっこりと微笑んで差し出された小さな紙袋。
「えっと、俺は来栖颯哉って言います。よろしくお願いします」
紙袋を受け取って自己紹介だけはする。本当に会話もしたくないんだし…。
「3,4日ぐらいはまだ引っ越しの片付けとかでバタバタしちゃうと思うんですけどお願いしますね」
ぺこりと頭を下げる立華さん。
「えっと、あ、はい。じゃぁ、俺はこれで」
そう断って鍵を開けて部屋の中に入った。
彼女を見ないで中に入ったから気が付いてなかったんだ。彼女が細く微笑んで『やっと見つけた』って呟いていたことに…。
ちゃんと鍵をかけて部屋の奥へと入る。机の上にもらった紙袋を置き溜め息をついた。
さっき聞いた名前を思い出し視線を壁に飾ってある絵に移す。
『橘樹智景先輩』
絵に描かれている名前。同一人物なのか?それともただ名前が同じなだけ?
「はっ、俺ってバカじゃん。名前が同じだけで先輩とあのお姉さんとじゃ性別が違うし、お姉さんの方がどう見ても年上じゃんか!」
決定的な違いを思い出す。
先輩はれっきとした男の人だった。そしてさっきのお姉さんは女の人だったのだ。
2人が同一人物だなんてありえない。なんてバカなことを考えたんだ俺は…。
「疲れてんだ…うん。風呂入って寝よう」
俺は自己完結させ風呂に入って寝ることに決めた。
この出会いが俺の運命を変えることになるなんて思いもせずに一人暢気に眠りについたのだった。
高校2年の冬に両親が交通事故で亡くなり、高校の先生に色々とお世話になりながらも大学に進学することができた。
親の保険金や事故の慰謝料などを上手に使いながら、アルバイトをこなし暮らしている。
先生にお世話になったといっても、生活面とかではなく、進路のこととかだからな。
元々、両親は共働きだったので、家事などは一人でこなせるから苦じゃなかった。一人暮らしを満喫できたし、その方が都合がよかった。
巷で言うと俺はオメガだ。発情が来ると少し面倒だし、それを知られるのも嫌で、出来るだけ一人でいることを選んだ。
バイトもそういう理解のある場所を選んだし、シフトも考慮してもらっている。
ここ数日、お隣がなんだか騒がしい。元々空き家だったけど、誰か入居するのかバタバタしてる。
それは別に構わないんだけどさ、変な人じゃなきゃいいなって思う。
大学の授業受けて、バイトも終わらして、帰ってきたら玄関の前に誰かいた。
本当は疲れてるから誰とも会いたくないし、会話もしたくないんだけど自分の部屋の前だから仕方ないよな。
「あの…うちになんか用ですか?」
鍵を出しながら声をかければ、そこにいたのは美人なお姉さんでした。
「あ…初めまして。今日、お隣に引っ越してきた立華智景と言います。これ、ご挨拶にと思って」
にっこりと微笑んで差し出された小さな紙袋。
「えっと、俺は来栖颯哉って言います。よろしくお願いします」
紙袋を受け取って自己紹介だけはする。本当に会話もしたくないんだし…。
「3,4日ぐらいはまだ引っ越しの片付けとかでバタバタしちゃうと思うんですけどお願いしますね」
ぺこりと頭を下げる立華さん。
「えっと、あ、はい。じゃぁ、俺はこれで」
そう断って鍵を開けて部屋の中に入った。
彼女を見ないで中に入ったから気が付いてなかったんだ。彼女が細く微笑んで『やっと見つけた』って呟いていたことに…。
ちゃんと鍵をかけて部屋の奥へと入る。机の上にもらった紙袋を置き溜め息をついた。
さっき聞いた名前を思い出し視線を壁に飾ってある絵に移す。
『橘樹智景先輩』
絵に描かれている名前。同一人物なのか?それともただ名前が同じなだけ?
「はっ、俺ってバカじゃん。名前が同じだけで先輩とあのお姉さんとじゃ性別が違うし、お姉さんの方がどう見ても年上じゃんか!」
決定的な違いを思い出す。
先輩はれっきとした男の人だった。そしてさっきのお姉さんは女の人だったのだ。
2人が同一人物だなんてありえない。なんてバカなことを考えたんだ俺は…。
「疲れてんだ…うん。風呂入って寝よう」
俺は自己完結させ風呂に入って寝ることに決めた。
この出会いが俺の運命を変えることになるなんて思いもせずに一人暢気に眠りについたのだった。
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