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あの、大我さん??6
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「あれ?おかしいなぁ?」
俺は自分の机の上に置いたはずの書類が見当たらずに1人で探していた。
「なんでないんだよぉ」
文句言いながら机の上の書類を全部、ひっくり返して探すけど見つからない。
「くそっ」
ブツブツ言いながら部屋中を探すことにした。
それは永尾たち他の役員の机の上も漁るということになる。
「だぁ!!!なんで見つからないんだよぉ!!!」
1人イライラして癇癪し始めた頃クスッて笑う声が聞こえて振り返ったら部屋の扉に凭れて見ている大我がいた。
「なんですか?今、俺は忙しんですけど?」
笑われたことにムカついてそんな言い方をしてしまった。
「悪い悪い。なんかすごいことになってるなって思っただけだ。片付け大変だな聖」
ニヤリと笑いながら言われた言葉にサーっと血の気が引いた。
そう、そこは大参事だった。俺がひっくり返した書類が机の上から床の上からとあらゆる場所に散乱していたのだ。しかも、役員たちの分の書類もだ。
「ぎゃー!!!なんですかこれは!!!」
「うわぁ!」
「これはちょっと…」
運悪く俺が片付ける前にみんなが戻ってきてしまった。
「会長!!!なんてことしてくれたんですか!!!」
「ヒドイや会長。完成間近の書類までごちゃ混ぜだ」
「これどうすんの」
部屋の中の惨事を見てみんなが怒り始める。
「ご、ごめん」
俺は謝ることしかできなかった。やったのは俺自身だから俺が悪いんだ。
「ここで怒っててもこの惨事は片付かないぞ」
なんて、のほほんと大我が言う。
「うっさい!見てるだけのくせに!!」
これはもう、見事に八つ当たりだ。
「そうだな。俺は見てるだけだ。生徒会の書類は俺の管轄じゃないからな」
ニヤリと笑ったままで言われる言葉に反論ができない。
「くそっ」
悔しいけど自分が悪いんだ。
「激おこの八つ当たり中の聖にプレゼントだ。じゃぁな」
大我は俺に手に持っていた書類を渡すだけ渡して戻っていった。
「くそっ、大我のやつなんだよ。…あっ、あぁぁぁ!!!!」
イライラしたままで受け取った書類を見て大声をあげた。
だって、だって、それは今まで俺が必死になって探していた書類だったからだ。しかもキチンと風紀で処理された状態で戻って来たのだ。
「大我!!!」
俺は急いで部屋を飛び出して風紀委員室へと飛び込んだ。
「ご機嫌麗しゅう会長様。何の御用でしょうか?」
にっこりと笑う大我の後ろにどす黒いオーラが見え隠れしてる。
ヤバい、大我が怒ってる。
「いや、えっと、あの、その…」
大我がこの顔で笑うときは本当に怒ってて怖いんだよ。どうしよう…
「バ会長って呼ばれたいんですかね会長様」
わざとバの字を強調して言うのはそれだけ怒っている証拠。あぁ、やっちゃった…。
「えっと、ごめんなさい!!!ホント、ごめん」
俺はとにかく頭を下げた。そう、まずは謝らないとダメなのだ。これは間違いなく俺自身が犯した過ちだから。
深々と頭を下げてどれだけ経ったんだろうか?それでも一向に大我からの返事はなくて…。ソロっと大我の様子を窺えば盛大に溜め息をつかれた。
コツンコツンと机を指先で叩く大我。これはまだ怒ってらっしゃりますね。
「あ、あの、委員長?」
大我ではなく委員長と呼べばギロリと睨まれた。うわぁ、やぶ蛇。
「委員長ソロソロ許してあげてください。他の子たちが死にます」
コソリと神谷が大我に耳打ちをする。
「これぐらいで死ぬならもっと鍛えた方がいいか」
ポツリ呟く大我の言葉に『ひっ』って部屋の中にいたヤツらが息を飲む。
「委員長、それぐらいにしとけ。いくら会長様でもこれ以上は流石に泣くぞ」
今度は三条が助け舟を出してくれた。確かに三条の言うとおりだ。結構、俺もきてる。
「覚えてないだろ?」
盛大な溜め息の後に言われてコクコクと何度も頷く。その途端に部屋の中に落胆の溜め息が零れた。
「や、あの、ホント、ごめん!マジで覚えてない。俺なにをやった?何を言った?」
本当に記憶が無いんだ。だからあの書類を探してたわけで…。
「本当に覚えてないんだな」
大我の呆れた声にコクコクと何度も頷いた。俺は本当に覚えてないんだ。あの書類の存在をすっかり忘れていた。だからこの部屋で俺が何をやって何を言ったのかが思い出せない。
「お前は記憶を無くすほど呑んだくれた酔っ払いの親父か!」
ギロッと睨まれてギュッと身体が縮こまった。
「えっと…呑んだくれって?」
そこにどうしてそんな言葉が?なんて思った。
「神谷」
「はい」
大我の短い言葉に神谷が返事をして持ち出してきたのはお菓子の箱。
「これがなんだかわかるか?」
ずいっと俺の前に置かれた箱をマジマジと見てサーッと血の気が引いた。
「マジで?俺…これを口にしたのか?」
目の前の箱を指さして確認の意味を込めて聞けば
「あぁ」
短い怒った返事が返ってきた。
「うわぁぁ!!ごめん!!!ごめんなさい!!!」
俺は土下座せん勢いで謝った。
大我の言葉で神谷が持って来たお菓子の箱。それはチョコレートが入っている箱。ただ、普通の人が食べる分には平気なヤツ。俺のように発情の暴走をするような特殊なオメガが食べると危険なやつ。
チョコレートの中に入ってる成分のどれかが引き金となって発情を誘発させる。
「えっと…もしかして俺ってこの部屋でこれを食べたのか?」
指を差しながら聞いてみれば大我が無言でコツリコツリと机を叩き。神谷と三条は引きつった笑みを浮かべ小さく頷き、他のヤツらはウロウロと視線を泳がせ気まずそうに頷く。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
俺は思いっきり叫んで頭を抱え座り込んだ。
ヤバい、覚えてない。本当に記憶が無い。
「そんなことより、早く生徒会室に戻れ。永尾たちにも迷惑かけてるんだ、ちゃんと部屋を片付けて来い」
溜め息交じりに言われた言葉にハタと思い出した。あの部屋の惨状を…。
「ごめん、帰ったらちゃんと話を聞くから」
俺はそれだけを言い残し風紀委員室を飛び出した。
「みんなごめん」
生徒会室に駆け込めば
「こっちのことはいいので、会長は自分の場所を片付けてください」
「じゃないと書類がまた混ざっちゃうよ」
「それ片付けないと仕事もできないしね」
溜め息をつきながら3人が言ってくれる。
「本当にごめん」
俺はもう一度謝って自分の席の惨事を片付けることにした。
部屋を片付けて、今日やらなきゃいけない分の仕事を片付けてみんなで帰った。本当はもう一度、風紀委員室に寄ろうかと思ったけど、なんだか合わせる顔がなくて寮に戻ることにした。
自分の部屋に戻って制服を着替えて考えるけど、本当に思い出せない。記憶がすっぽりと抜け落ちたみたいに思い出せないのだ。
元々、発情中に大我に甘えると記憶が無くなるってのはあるけど、最近ではその回数も減って来ていて発情中に甘えまくっても発情が終わった後でも覚えてることが増えてきたんだ。それなのに、その記憶がまったく無いということはかなり暴走したってことじゃないんだろうか?
「う~ん。思い出せない」
1人で唸って考えていたら隣の部屋が開く音が聞こえた。大我が帰って来たってことなんだと思う。俺は急いで大我の部屋に突撃した。
「大我!って…その傷何?」
勝手知ったるって感じで大我の部屋に飛び込んで大我の姿見つけて驚いた。服を着替えてる大我の身体に残るヒドイ傷痕に。噛み痕やら引っ掻き傷やら…。
「どっかの酔っぱらいにやられた」
その言葉にサーっと血の気が引いた。って、今日だけで俺どんだけ血の気が引いてんだよ!
「えっと…それって…発情の暴走ですかね?」
顔を引きつらせながら聞いてみたら
「そうですよ。どこかの誰かさんがチョコを食べてからね、暴走起こしてくれたんで大変だったんです」
ニッコリ笑顔で答えてくれた。
あぁ、終わった。俺、大我に何やらかしてんだよ!しかも記憶が無いって…。
「ごめん」
もう、本当に謝るしかなかった。
「まぁ、終わったことだし気にはしてないからいい。それにあのチョコで唯斗が暴走するって知らなかったし。事故のようなもんだと思えばいい」
ぽふりと頭を撫でられた。俺はそのまま無言で大我に抱き着いた。事故のようだと言われても俺のせいで風紀に迷惑かけたのも、大我に迷惑をかけたのも事実だ。
「…ごめん…」
ポツリ呟いたら
「謝る前にチョコの成分だけはちゃんと確認してくれ。あの2人が口を揃えて『あれはゆいちゃんにはダメだって言っただろ!!』と俺が怒られた」
溜め息交じりに言われた言葉に苦笑が浮かぶ。
「あー、コウちゃんとヒロさんも知ってるんだ。2人も何も言わないから気付かなかった。ただ、あの箱のチョコは食べちゃダメって耳にタコができるぐらいコウちゃんに言われたけど、もしかして今回のことが原因?」
もしかしてそうなのかなって聞いてみたら
「そう。風紀委員室にいるときに発情の誘発が起きて、暴走。オメガ用のベルを使わざる負えなかったからな。いくら風紀委員室にいるといっても…部屋の外に連れ出すのに困るから」
苦笑しながら言われる。その顔はいつも以上に疲れ切った顔をしていた。
「わぁ、ごめん大我。俺、本当に覚えてないもん」
本当に申し訳なくてしょうがない。
「まぁ、そういうことなんで、今度からチョコに関しては成分チェックしてくれ。チョコの成分が一種の媚薬になって発情が誘発されるってわかったんだからな」
ポンポンとあやす様に背中を叩かれながら
大我を誘惑するのに使えるかも?
なんて思ったのは内緒にしておこう。
「で?ご飯は食べたのか?」
急に話題を変えられて俺はジッと大我の顔を見た。
「なんですかね?」
そんな俺を見ながら聞いてくる大我に俺は
「大我が俺の恋人でよかったなって」
そう言って自分からキスを仕掛けた。同じ役職持ちってだけじゃなくて、恋人として、番として、俺をサポートしてくれる大我が本当に好きだ。記憶が無くなるまで甘えられる大我が好きだ。俺のことを思って怒ってくれる大我が本当に好きなんだ。
『風紀の連中の前で甘えまくって大変だったっていうのは唯斗の為に黙っておこう』
そして、今日も俺は神尾大我に甘えるんだ。
Fin
俺は自分の机の上に置いたはずの書類が見当たらずに1人で探していた。
「なんでないんだよぉ」
文句言いながら机の上の書類を全部、ひっくり返して探すけど見つからない。
「くそっ」
ブツブツ言いながら部屋中を探すことにした。
それは永尾たち他の役員の机の上も漁るということになる。
「だぁ!!!なんで見つからないんだよぉ!!!」
1人イライラして癇癪し始めた頃クスッて笑う声が聞こえて振り返ったら部屋の扉に凭れて見ている大我がいた。
「なんですか?今、俺は忙しんですけど?」
笑われたことにムカついてそんな言い方をしてしまった。
「悪い悪い。なんかすごいことになってるなって思っただけだ。片付け大変だな聖」
ニヤリと笑いながら言われた言葉にサーっと血の気が引いた。
そう、そこは大参事だった。俺がひっくり返した書類が机の上から床の上からとあらゆる場所に散乱していたのだ。しかも、役員たちの分の書類もだ。
「ぎゃー!!!なんですかこれは!!!」
「うわぁ!」
「これはちょっと…」
運悪く俺が片付ける前にみんなが戻ってきてしまった。
「会長!!!なんてことしてくれたんですか!!!」
「ヒドイや会長。完成間近の書類までごちゃ混ぜだ」
「これどうすんの」
部屋の中の惨事を見てみんなが怒り始める。
「ご、ごめん」
俺は謝ることしかできなかった。やったのは俺自身だから俺が悪いんだ。
「ここで怒っててもこの惨事は片付かないぞ」
なんて、のほほんと大我が言う。
「うっさい!見てるだけのくせに!!」
これはもう、見事に八つ当たりだ。
「そうだな。俺は見てるだけだ。生徒会の書類は俺の管轄じゃないからな」
ニヤリと笑ったままで言われる言葉に反論ができない。
「くそっ」
悔しいけど自分が悪いんだ。
「激おこの八つ当たり中の聖にプレゼントだ。じゃぁな」
大我は俺に手に持っていた書類を渡すだけ渡して戻っていった。
「くそっ、大我のやつなんだよ。…あっ、あぁぁぁ!!!!」
イライラしたままで受け取った書類を見て大声をあげた。
だって、だって、それは今まで俺が必死になって探していた書類だったからだ。しかもキチンと風紀で処理された状態で戻って来たのだ。
「大我!!!」
俺は急いで部屋を飛び出して風紀委員室へと飛び込んだ。
「ご機嫌麗しゅう会長様。何の御用でしょうか?」
にっこりと笑う大我の後ろにどす黒いオーラが見え隠れしてる。
ヤバい、大我が怒ってる。
「いや、えっと、あの、その…」
大我がこの顔で笑うときは本当に怒ってて怖いんだよ。どうしよう…
「バ会長って呼ばれたいんですかね会長様」
わざとバの字を強調して言うのはそれだけ怒っている証拠。あぁ、やっちゃった…。
「えっと、ごめんなさい!!!ホント、ごめん」
俺はとにかく頭を下げた。そう、まずは謝らないとダメなのだ。これは間違いなく俺自身が犯した過ちだから。
深々と頭を下げてどれだけ経ったんだろうか?それでも一向に大我からの返事はなくて…。ソロっと大我の様子を窺えば盛大に溜め息をつかれた。
コツンコツンと机を指先で叩く大我。これはまだ怒ってらっしゃりますね。
「あ、あの、委員長?」
大我ではなく委員長と呼べばギロリと睨まれた。うわぁ、やぶ蛇。
「委員長ソロソロ許してあげてください。他の子たちが死にます」
コソリと神谷が大我に耳打ちをする。
「これぐらいで死ぬならもっと鍛えた方がいいか」
ポツリ呟く大我の言葉に『ひっ』って部屋の中にいたヤツらが息を飲む。
「委員長、それぐらいにしとけ。いくら会長様でもこれ以上は流石に泣くぞ」
今度は三条が助け舟を出してくれた。確かに三条の言うとおりだ。結構、俺もきてる。
「覚えてないだろ?」
盛大な溜め息の後に言われてコクコクと何度も頷く。その途端に部屋の中に落胆の溜め息が零れた。
「や、あの、ホント、ごめん!マジで覚えてない。俺なにをやった?何を言った?」
本当に記憶が無いんだ。だからあの書類を探してたわけで…。
「本当に覚えてないんだな」
大我の呆れた声にコクコクと何度も頷いた。俺は本当に覚えてないんだ。あの書類の存在をすっかり忘れていた。だからこの部屋で俺が何をやって何を言ったのかが思い出せない。
「お前は記憶を無くすほど呑んだくれた酔っ払いの親父か!」
ギロッと睨まれてギュッと身体が縮こまった。
「えっと…呑んだくれって?」
そこにどうしてそんな言葉が?なんて思った。
「神谷」
「はい」
大我の短い言葉に神谷が返事をして持ち出してきたのはお菓子の箱。
「これがなんだかわかるか?」
ずいっと俺の前に置かれた箱をマジマジと見てサーッと血の気が引いた。
「マジで?俺…これを口にしたのか?」
目の前の箱を指さして確認の意味を込めて聞けば
「あぁ」
短い怒った返事が返ってきた。
「うわぁぁ!!ごめん!!!ごめんなさい!!!」
俺は土下座せん勢いで謝った。
大我の言葉で神谷が持って来たお菓子の箱。それはチョコレートが入っている箱。ただ、普通の人が食べる分には平気なヤツ。俺のように発情の暴走をするような特殊なオメガが食べると危険なやつ。
チョコレートの中に入ってる成分のどれかが引き金となって発情を誘発させる。
「えっと…もしかして俺ってこの部屋でこれを食べたのか?」
指を差しながら聞いてみれば大我が無言でコツリコツリと机を叩き。神谷と三条は引きつった笑みを浮かべ小さく頷き、他のヤツらはウロウロと視線を泳がせ気まずそうに頷く。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
俺は思いっきり叫んで頭を抱え座り込んだ。
ヤバい、覚えてない。本当に記憶が無い。
「そんなことより、早く生徒会室に戻れ。永尾たちにも迷惑かけてるんだ、ちゃんと部屋を片付けて来い」
溜め息交じりに言われた言葉にハタと思い出した。あの部屋の惨状を…。
「ごめん、帰ったらちゃんと話を聞くから」
俺はそれだけを言い残し風紀委員室を飛び出した。
「みんなごめん」
生徒会室に駆け込めば
「こっちのことはいいので、会長は自分の場所を片付けてください」
「じゃないと書類がまた混ざっちゃうよ」
「それ片付けないと仕事もできないしね」
溜め息をつきながら3人が言ってくれる。
「本当にごめん」
俺はもう一度謝って自分の席の惨事を片付けることにした。
部屋を片付けて、今日やらなきゃいけない分の仕事を片付けてみんなで帰った。本当はもう一度、風紀委員室に寄ろうかと思ったけど、なんだか合わせる顔がなくて寮に戻ることにした。
自分の部屋に戻って制服を着替えて考えるけど、本当に思い出せない。記憶がすっぽりと抜け落ちたみたいに思い出せないのだ。
元々、発情中に大我に甘えると記憶が無くなるってのはあるけど、最近ではその回数も減って来ていて発情中に甘えまくっても発情が終わった後でも覚えてることが増えてきたんだ。それなのに、その記憶がまったく無いということはかなり暴走したってことじゃないんだろうか?
「う~ん。思い出せない」
1人で唸って考えていたら隣の部屋が開く音が聞こえた。大我が帰って来たってことなんだと思う。俺は急いで大我の部屋に突撃した。
「大我!って…その傷何?」
勝手知ったるって感じで大我の部屋に飛び込んで大我の姿見つけて驚いた。服を着替えてる大我の身体に残るヒドイ傷痕に。噛み痕やら引っ掻き傷やら…。
「どっかの酔っぱらいにやられた」
その言葉にサーっと血の気が引いた。って、今日だけで俺どんだけ血の気が引いてんだよ!
「えっと…それって…発情の暴走ですかね?」
顔を引きつらせながら聞いてみたら
「そうですよ。どこかの誰かさんがチョコを食べてからね、暴走起こしてくれたんで大変だったんです」
ニッコリ笑顔で答えてくれた。
あぁ、終わった。俺、大我に何やらかしてんだよ!しかも記憶が無いって…。
「ごめん」
もう、本当に謝るしかなかった。
「まぁ、終わったことだし気にはしてないからいい。それにあのチョコで唯斗が暴走するって知らなかったし。事故のようなもんだと思えばいい」
ぽふりと頭を撫でられた。俺はそのまま無言で大我に抱き着いた。事故のようだと言われても俺のせいで風紀に迷惑かけたのも、大我に迷惑をかけたのも事実だ。
「…ごめん…」
ポツリ呟いたら
「謝る前にチョコの成分だけはちゃんと確認してくれ。あの2人が口を揃えて『あれはゆいちゃんにはダメだって言っただろ!!』と俺が怒られた」
溜め息交じりに言われた言葉に苦笑が浮かぶ。
「あー、コウちゃんとヒロさんも知ってるんだ。2人も何も言わないから気付かなかった。ただ、あの箱のチョコは食べちゃダメって耳にタコができるぐらいコウちゃんに言われたけど、もしかして今回のことが原因?」
もしかしてそうなのかなって聞いてみたら
「そう。風紀委員室にいるときに発情の誘発が起きて、暴走。オメガ用のベルを使わざる負えなかったからな。いくら風紀委員室にいるといっても…部屋の外に連れ出すのに困るから」
苦笑しながら言われる。その顔はいつも以上に疲れ切った顔をしていた。
「わぁ、ごめん大我。俺、本当に覚えてないもん」
本当に申し訳なくてしょうがない。
「まぁ、そういうことなんで、今度からチョコに関しては成分チェックしてくれ。チョコの成分が一種の媚薬になって発情が誘発されるってわかったんだからな」
ポンポンとあやす様に背中を叩かれながら
大我を誘惑するのに使えるかも?
なんて思ったのは内緒にしておこう。
「で?ご飯は食べたのか?」
急に話題を変えられて俺はジッと大我の顔を見た。
「なんですかね?」
そんな俺を見ながら聞いてくる大我に俺は
「大我が俺の恋人でよかったなって」
そう言って自分からキスを仕掛けた。同じ役職持ちってだけじゃなくて、恋人として、番として、俺をサポートしてくれる大我が本当に好きだ。記憶が無くなるまで甘えられる大我が好きだ。俺のことを思って怒ってくれる大我が本当に好きなんだ。
『風紀の連中の前で甘えまくって大変だったっていうのは唯斗の為に黙っておこう』
そして、今日も俺は神尾大我に甘えるんだ。
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