会長様はいちゃつきたい!

槇瀬光琉

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寂しい

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ふと目が覚めて



ここどこだっけ?



って思った。ボーっとする頭で考えて、考えて、やっと思い出した。


自分が発情して、いつものように自棄になって徘徊してる最中にあの男に捕まってこの部屋に連れ込まれたんだと…。

ボーっとしたままで隣を見れば、その姿はなくシーツも冷たくなっていた。


あぁ、いつもの如く俺はまた一人か…


なんて思ったのと同時にふと沸いた感情に自分でも驚いた。



寂しい。



あの男とは同じクラスなだけであって、そこまで親しいわけじゃないから親友と呼べるわけでもないし、ましてや恋人や番という関係でもない。

それなのにあの男は発情して徘徊してる俺を捕まえてはこの場所に連れてくる。



あの男に何の意味があるのか?



気が付いたら当たり前のように発情中に現れては俺を捕まえてこの場所に連れて来ては俺を甘やかす。でも目が覚めればその姿はない。いや、ある時もあるが、大半はいない。本当に事務的にこの場所に連れて来てるだけなんだろう。


寂しい…


そんな感情がグルグルと渦を巻く。


「最悪だな」
呟いた言葉は静かな部屋に大きく響き渡った。それが余計に寂しさを感じさせる。俺は小さく溜息をつきもう一度、明日の朝まで寝てしまおうと目を閉じた。


目を閉じただけでどれだけの時間がたったのか?


寝ようと思ってもなかなか寝付けれず結局は目を閉じたままで時間だけが過ぎていた。


カチャリ


小さな音がして、扉が開けられた音がした。



まだこの場所にいるんだろうか?


俺はそのままの体勢で寝たふりをして男の様子を窺っていた。

「もう少し、自分を大事にしてくれるとなぁ…」
そんな言葉と共にそっと優しく撫でられていく頭。その手は本当に優しくて、何度も何度も撫でていく。
「…んっ…」
わざと声を出して寝返りをうってみれば

「狸か」
なんて言われた。
「…なんでわかるんだよ…」
恨めし気に見ながら聞けば

「なんとなくな。少し眉間に皺が寄ってる。何かあったのか?」
なんて聞かれてどうしようか悩んだ末

「…寂しい…」
ポツリと呟いてみた。どう反応するか気になったんだ。ただそれだけ。
「そうか」
って短い返事が一つ。


あぁ、やっぱり俺ってそれだけの存在だよな。


なんてボンヤリと考えていたら
「そっちに詰めろ。俺が寝れない」
なんて頭を撫でたまま言われて俺は慌てて場所を移動したら本当に隣に横になって、自然な流れで俺を抱きしめてきた。
「えっ?」

意味がわかなくて声を上げたら
「ん?寂しいって言うから、こうやって抱きしめててやるから朝まで寝ろ」
そう言いながら俺の頭を撫でていく。だから俺はそっと男の服を掴んだ。拒まれてもいいって思ったんだ。
「ほら、寝ろ」
なんて言いながら俺の背をポンポンと叩きながら言ってくる。

「ん、おやすみ」
だから俺は男の胸に額を寄せてそっと目を閉じた。
「あぁ、おやすみ」
少しだけ笑みを含んだ声を同じよ言葉を紡いだ男の声とトクリトクリと規則正しい心音を子守歌にして俺は深い眠りに落ちていった。


Fin

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