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逃亡中。

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「い、い、委員長~!!」
息を切らしながら永尾が風紀委員室に飛び込んできた。
「扉壊すつもりかお前は…」
毎度のことながら扉を壊さん勢いで開けるもんだから困ったものだ。

「そっ、そんなことより大変です」
俺の言葉をキレイにスルーしやがる。
「なにが大変なんだよ」
仕方がないので話だけは聞いてやることにした。


「か、会長が消えました」
ゼーハー言いながら出た言葉にクラリと眩暈がする。


あのバカは…。また悪い癖が出たか…。


「それ何時ぐらいからだ?」
溜め息をついて聞けば
「えっと…生徒会に来てわりと直ぐですから1時間ぐらいですかね?」
ひぃふぅみぃと指折り数えながら教えてくれる。

「何でもっと早く言わねぇんだよ!このクズ副会長!」
いつもだったら早いくせに今日に限ってそんなんなんだよ。
「いや、だって、仕事の書類を持って出ていったので職員室かと思ったんですよ。顧問に聞いたらすぐ帰ったって言われて…」
顧問に確認したのだけは誉めてやろう。

「わかった。後は俺が捜す」
やれやれと溜め息をついた。あいつが逃亡したってことはあいつの中で何かがあったってことだ。
「お願いします」
永尾はそれだけ言って生徒会室に戻っていった。

「神谷、俺が戻れないかもしれないから、時間になったら他のヤツらを帰らして、戸締りとかしてお前も帰れよ。永尾をこき使えばいいからな」
自分の席を立ち神谷に言えば
「わかりました。あのバカをこき使います」
神谷はハッキリと言い切った。使えるもんは恋人でも使うのが神谷のやり方だからな。

「後は頼む」
俺はそうとだけ告げ部屋を出た。



一人、廊下を歩きながらあいつの匂いを探す。微かに香るあいつのフェロモンの残り香。


風紀委員室の近くにまで来てたけど逃げたなあいつ。



しょうがねぇな。久しぶりに鬼ごっこでもしてやるか。


時々、忘れた頃にふと聖は逃亡するのだ。誰にも何も告げずにフラッと消えていなくなるのだ。最近はそれに気が付いて泣きついてくるのが永尾なんだがな。

自棄を起こしてフラッといなくなった時と同じことをあいつはする。俺に見つけてもらうために…。

そういうことをするときはあいつの中で何かがあったとき。あいつ自身も気付かない何かが…。


あっちにフラ~こっちにフラ~って彷徨った痕跡がある。が、中庭に向かったなあいつ。


フェロモンの香りだけを追っていけばハッキリと鮮明に残る香りを見つけた。それは中庭へと向かっていた。



「ふふふ~ん♪ふふふ~ん♪」
匂いを追って歩けば微かに鼻歌が聞こえた。上機嫌に鼻歌を歌ってる。


これはあれだ、今回の逃亡はわざとだなあいつ。


「ふふふ、見つけてくれるかなぁ~♪」
なんて楽し気に言ってる後姿を見つけた。芝生の上に腰かけて楽しそうに待ってやがるな。


「こら、逃亡犯」
そっと気付かれないように近づいてポンと両肩に手を置いてやれば
「うわぁぁぁ」
見事に飛び跳ねた。
「び、ビックリしたぁ。見つけるの早くないか?」
バクバク言ってる心臓を押さえながら聞いてくるその姿に笑ってしまう。

「密告者がいたからな。楽しかったか?」
隣に腰かけ聞いてみれば
「うん。楽しかった。久し振りにワクワクしながら待ってた」
本当に楽しそうに笑う。

「そうか。ならいい。この後はどうする?」
だからこの後は何がしたいか問えば
「大我といちゃつきたい!」
なんて言葉が返ってきた。それには少し驚いたが

「なら帰るぞ。じゃないといちゃつけないからな」
帰ることを提案すれば
「うん、帰ったら大我と一杯いちゃつきたい」
なんていう。その顔は少し子供ぽっかった。

「じゃぁ、帰ろう」
立ち上がり手を差し出せば
「うん、ありがとう大我」
その手を掴み笑う。俺は聖を立たせ寮に戻るべく歩き出した。


結局、俺の部屋に戻ってきた途端に突発的に発情が始まった。


あのな、唯斗さんや発情するのはかまわないんだ。それは仕方がないことだからな…。


予定外なタイミングで発情するのだけは止めてくれ。


こっちだって色々と大変なんだから…。


後で、永尾にブチブチ言われるのは俺なんだからな…。



Fin

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