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家出令嬢は冷徹北部公爵に殺されます。

6話

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「あー、もう。どうして、あなたがお忍びで出歩くときはこうもトラブルに出くわすんですか陛下」
「俺に言われてれもなぁ。好きでトラブルに巻き込まれてるわけじゃないし」
ルチタは目の前に降る雪の結晶を手で受け止めながら声のした方を見れば数人の男の人が立っていた。
「キシー、小言は後にして仕事が先だ」
ジッとルチタたちの方を見てる男の手からは小さな雪の結晶が煌めいていた。
「はいはい。こういう時、公爵様が一番人使いが荒いんですよね」
溜め息をつきながらキシーと呼ばれた男性が肩を竦めながら出てくる。そして、
「街中での魔力は使用禁止と法で定めているはずですが、あなたは何を考えておいでですか」
サチェルに向かい厳しい口調で問う。
「えっ、あっ、ごめんなさい。お姉様がどうしても話を聞いてくださらなかったので、カッとなってつい力を使ってしまいました」
サチェルはわざとらしく言い訳を口にする。
「本当ですか?」
キシーはルチタに本当かどうか確認するために声をかければ
「話をすることがないので…」
「そんな、お姉様ヒドイですわ。私の話も聞かずに家を出るだなんて…だから話をしましょうって言ったじゃないですか」
ルチタの言葉を遮るようにサチェルが話し出す。ルチタの顔に一瞬だけ苛立ちが乗った。


『あぁ、まただわ。この子はこうやって私のせいにする気なのね』


「そうですか、ですが現にあなたはこうして街中で街中で攻撃魔法を使用し、このご令嬢に攻撃をした。そして、周りの者にも被害を受けるかもしれない状況を作り、それを楽しんでいた。これはれっきとした犯罪行為ですよご令嬢。あなたにはそれなりの罰を受けてもらわなければなりません」
キシーの言葉にルチタは驚いた。まさかサチェルの言葉をうのみにせずにハッキリと言いきった彼に驚いたのだ。
「そっ、そんな。私だけが悪いだなんて、これはお姉様も同罪ですわよね」
サチェルがキシーに向かって言うが
「同罪?こちらのご令嬢は魔力を持っていいないのに?攻撃をしていたのはあなた自身だ。そして、こちらのご令嬢はあなたの攻撃から逃げながらも周りに被害が行かないように逃げていた。それを見ているのにあなたが悪くないとどうしているんですか!」
キシーはハッキリと言い切った。ルチタはホッと胸を撫で下ろした。ちゃんと自分を見ていてくれた人がいて嬉しかったのだ。
「レディア侯爵に伝達をしろ。当面の間、貴殿の家は魔物討伐に参加することを禁じると。それが法を破ったご令嬢の罪だとな」
キシーの言葉に追い打ちをかけるようにまた違う声がする。
「陛下、なぜこのご令嬢たちがレディア侯爵のご令嬢だとわかるんですか?」
キシーが少し驚きながら振り返る。
「その答えを知ってるのはお前の目の前にいる男じゃないか」
陛下と呼ばれた男性はにっこりと笑う。キシーは溜め息をつき
「どういうことですか公爵様」
ジッと目の前に立つ男性に声をかける。
「ジルが教えてくれただけだ。あと、攻撃魔法に特化した家系で姉妹がいるのはレディア侯爵の所だろ。それをお前は忘れたのかキシー?」
目の前に立つ男はただのお飾りの兵士とは違い、攻撃魔法最強の国王陛下を守る剣士なのだ。この国の魔法を扱える家系をすべて把握しておる。勿論、それは国王陛下へ謀反を起こす者が出てこない為である。
「ジル様がということは、陛下はマーシェ様からってことですね。はぁ、ディアナ、陛下の言葉をすぐにご令嬢を連れてレディア侯爵へ伝令に迎え」
キシーは盛大に溜め息をつき傍にいた自分の部下へ告げた。
「はっ、直ちに」
ディアナは言われたとおりに抵抗をするサチェルを連れて行った。
「アローゼ、被害状況の確認と報告」
キシーはもう一人の部下に命令を告げ
「で?陛下この状況をあなたはどうするつもりですか?」
ギロリと自分の後ろに立つ男性に向き合う。
「あー、ロディ助けてぇ」
苦笑を浮かべながら男性、いや、カイルは助けを求める。
「キシー、これは多分、不可抗力だ。だから今日はカイルを助けてやってくれ、帰ったらしごいていいから」
ポンとキシーの肩を叩きいう。
「ロディア公爵様、常々、思っていたのですが、カイル陛下に甘すぎです!少しは俺の気持ちも考えてください!」
キシーはがうぅとポンと肩を叩いた男性、ロディアに噛みつかん勢いで言う。
「キシーがいるからこうやって陛下がお忍びで街中を視察で来てるんじゃないか。それだけキシーが陛下に信頼されてるってことだ」
ロディアの顔にも苦笑が浮かぶ。キシーはカイルの護衛兼参謀長でもある。常にカイルを守るための盾、ロディアとはまた違う意味での剣士なのである。
「キシー様、こちらのご令嬢以外はケガ人もおらず、民家なども被害は出ておりません」
被害状況を確認したアローゼが傍に来てキシーに報告をする。
「わかった、ありがとう」
キシーが返事をしてルチタに向き合った。
「ご令嬢、少しだけお時間をいただけますか?もう少し詳しくお話をお伺いしてもいいですか?」
「はい」
キシーの問いにルチタは素直に返事をした。


『家出しようとしただけでなんだか大事になったわ…』


「ここではなんですからあちらの馬車の中で話しましょう」
キシーはルチタを連れて自分たちが乗ってきた馬車まで戻ることにした。ルチタは小さく頷きキシーたちの後をついて行った。


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