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58話
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無事に卒業式を終えて、卒業生たちも退場し、シンとなった講堂を急いで片付け始めた。
「なんか今年は急いでるんだね」
「なんでだろ?」
なんて、片付けに参加してる生徒たちからはそんな声が上がる。詳しい理由を告げづ、次の日には使用するので、式終了後にすぐに片付けるというおふれを出したのだ。もちろん、これは生徒会顧問からのおふれで、誰も疑うことはなかった。
「よし、卒業式の片づけは終わったぞ」
顧問の呉崎先生が俺に声をかけてきた。
「ありがとうございます。講堂の後ろに机を並べて、準備したものを置けばここは完成です。後は…」
俺は大我にもらった書類を見ながら返事をして、壁にかかってる時計を見た。
時刻は12時30分。後、30分したら大我が動き始めるはずだ。大我が動き始めるまで、俺たちはこの場所で待機だ。
「しかしまぁ、よく聖も協力する気になったな」
なんて、呉崎先生が感心したように聞いてきた。
「意外ですか?」
だから反対に聞き返した。
「そりゃそうだろ。お前にはそこまでの思い出もないだろ?」
そういわれてしまうと言葉がない。
確かに、俺にとって卒業生である3年生にはなんの思い入れもないし、思いですらない。恭先輩や緑先輩は生徒会の仕事の関係で少しお世話になった程度だ。だけど、俺は大我が大切にしてきたモノを一緒に大切にしたいと思うようになった。先輩たちのことだって、大我は大切だからあんな無茶をしたのだ。なら俺もそんな大我の手助けをしたいと思った。
「でもまぁ、一応はお世話になった人たちなんで」
なんて答えたら
「いや、無理やり会長の椅子に座らせた奴らだぞあいつら」
なんて呆れられた。
「そうですね。でも、ほら、そこはあの男が仕組んだことなんで…」
頭の片隅に浮かんだ男のことを考えながら答えれば
「あいつな…。ホントに1年の時からやらかしてくれたからな…。知ってるかお前、あんときの内部崩壊、俺や後藤も巻き添え食ってるからな?」
そんな爆弾発言をしてくれた。
「えっ?なんですかそれ?俺聞いてないそれ」
本当に聞いてないのだ。生徒会と風紀委員を内部崩壊させたっていうのは大我の口からもちゃんときいたけど、顧問も一緒にだなんて知らない。
「あいつ…言わなかったのか。顧問がしっかり管理しないからこうなるんだ!って俺も後藤も怒鳴られたんだよ」
溜め息交じりに言う呉崎先生の顔は少しだけ疲れた表情をした。
多分、先生たちも自分が悪かったんだと納得はしてるんだろう。じゃなければ、ここまで疲れた顔はしないだろうから。だって、この先生も後藤先生も普段はふざけてる2人だ。生徒に何を言われようとも気にしない人たちなのだ。それこそ、タバコの吸いすぎだとか、酒の飲みすぎだとか、生徒に指摘されようが付き合いがあるんだとか何とか言って誤魔化すぐらいの人たちなんだ。その2人をここまで疲れさせれるというか反省させれるのはきっと、神尾大我だけなんだろう。
うん、やっぱり大我って化け物だ。
「それは…多分、先生たちが悪かったんでしょうね」
「お前も言うなぁ」
俺の言葉に呉崎先生が嫌そうな顔をする。
「だって、俺には憶測でしか言えないですもん。あの当時は俺は自棄を起こしてたんで…」
そう、俺は人から聞いた話でしか状況がわからないから憶測でしかものを言えない。
「その聖がなぁ…会長として立派に1年過ごしたんだもんなぁ。すごいもんだ」
なんていきなり懐かしむように言われてびっくりだ。
「そんなに変ですか?」
だからつい聞いちゃったよ。
「イヤ、ただすごいなって話だ。自棄になってた男を会長の椅子に座らせたあいつもだが、それをちゃんとこなしたお前も立派だ奴だ」
なんて急に真面目なこと言われて返事に困った。
「でも、あれだ。あいつの目は節穴じゃなかったってことだな。聖がしっかりしてるやつだってわかってたから会長の椅子に座らせたんだからな」
「それって、褒めてるんですか?」
一応気になったから聞いてみた。
「当たり前だろ。さてと、そろそろあの男が動き出す時間だな。こっちはこっちの役目をしようか聖」
盛大な溜め息をつき呉崎先生が時計を見て言うから
「そうですね、顧問すら使いっ走りにする男の復讐劇ですからね」
俺はそんな先生の姿に小さく笑い答えた。
そう、あの化け物と言われ続けた男の復讐劇。
復讐劇と書いて盛大なサプライズ。
きっと一生の思い出に残るサプライズ。
ほんと、よくこんなことを考え付いたよ大我さん。
俺ですらビックリだもん。
「なんか今年は急いでるんだね」
「なんでだろ?」
なんて、片付けに参加してる生徒たちからはそんな声が上がる。詳しい理由を告げづ、次の日には使用するので、式終了後にすぐに片付けるというおふれを出したのだ。もちろん、これは生徒会顧問からのおふれで、誰も疑うことはなかった。
「よし、卒業式の片づけは終わったぞ」
顧問の呉崎先生が俺に声をかけてきた。
「ありがとうございます。講堂の後ろに机を並べて、準備したものを置けばここは完成です。後は…」
俺は大我にもらった書類を見ながら返事をして、壁にかかってる時計を見た。
時刻は12時30分。後、30分したら大我が動き始めるはずだ。大我が動き始めるまで、俺たちはこの場所で待機だ。
「しかしまぁ、よく聖も協力する気になったな」
なんて、呉崎先生が感心したように聞いてきた。
「意外ですか?」
だから反対に聞き返した。
「そりゃそうだろ。お前にはそこまでの思い出もないだろ?」
そういわれてしまうと言葉がない。
確かに、俺にとって卒業生である3年生にはなんの思い入れもないし、思いですらない。恭先輩や緑先輩は生徒会の仕事の関係で少しお世話になった程度だ。だけど、俺は大我が大切にしてきたモノを一緒に大切にしたいと思うようになった。先輩たちのことだって、大我は大切だからあんな無茶をしたのだ。なら俺もそんな大我の手助けをしたいと思った。
「でもまぁ、一応はお世話になった人たちなんで」
なんて答えたら
「いや、無理やり会長の椅子に座らせた奴らだぞあいつら」
なんて呆れられた。
「そうですね。でも、ほら、そこはあの男が仕組んだことなんで…」
頭の片隅に浮かんだ男のことを考えながら答えれば
「あいつな…。ホントに1年の時からやらかしてくれたからな…。知ってるかお前、あんときの内部崩壊、俺や後藤も巻き添え食ってるからな?」
そんな爆弾発言をしてくれた。
「えっ?なんですかそれ?俺聞いてないそれ」
本当に聞いてないのだ。生徒会と風紀委員を内部崩壊させたっていうのは大我の口からもちゃんときいたけど、顧問も一緒にだなんて知らない。
「あいつ…言わなかったのか。顧問がしっかり管理しないからこうなるんだ!って俺も後藤も怒鳴られたんだよ」
溜め息交じりに言う呉崎先生の顔は少しだけ疲れた表情をした。
多分、先生たちも自分が悪かったんだと納得はしてるんだろう。じゃなければ、ここまで疲れた顔はしないだろうから。だって、この先生も後藤先生も普段はふざけてる2人だ。生徒に何を言われようとも気にしない人たちなのだ。それこそ、タバコの吸いすぎだとか、酒の飲みすぎだとか、生徒に指摘されようが付き合いがあるんだとか何とか言って誤魔化すぐらいの人たちなんだ。その2人をここまで疲れさせれるというか反省させれるのはきっと、神尾大我だけなんだろう。
うん、やっぱり大我って化け物だ。
「それは…多分、先生たちが悪かったんでしょうね」
「お前も言うなぁ」
俺の言葉に呉崎先生が嫌そうな顔をする。
「だって、俺には憶測でしか言えないですもん。あの当時は俺は自棄を起こしてたんで…」
そう、俺は人から聞いた話でしか状況がわからないから憶測でしかものを言えない。
「その聖がなぁ…会長として立派に1年過ごしたんだもんなぁ。すごいもんだ」
なんていきなり懐かしむように言われてびっくりだ。
「そんなに変ですか?」
だからつい聞いちゃったよ。
「イヤ、ただすごいなって話だ。自棄になってた男を会長の椅子に座らせたあいつもだが、それをちゃんとこなしたお前も立派だ奴だ」
なんて急に真面目なこと言われて返事に困った。
「でも、あれだ。あいつの目は節穴じゃなかったってことだな。聖がしっかりしてるやつだってわかってたから会長の椅子に座らせたんだからな」
「それって、褒めてるんですか?」
一応気になったから聞いてみた。
「当たり前だろ。さてと、そろそろあの男が動き出す時間だな。こっちはこっちの役目をしようか聖」
盛大な溜め息をつき呉崎先生が時計を見て言うから
「そうですね、顧問すら使いっ走りにする男の復讐劇ですからね」
俺はそんな先生の姿に小さく笑い答えた。
そう、あの化け物と言われ続けた男の復讐劇。
復讐劇と書いて盛大なサプライズ。
きっと一生の思い出に残るサプライズ。
ほんと、よくこんなことを考え付いたよ大我さん。
俺ですらビックリだもん。
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