会長様ははらみたい

槇瀬光琉

文字の大きさ
上 下
56 / 66

56話

しおりを挟む
「聖」
1人で考えこんでいたら急に名前を呼ばれて現実に引き戻された。
「あっ、ごめん。何?」
もし何かを話してたのなら今の俺は全く聞いてなかったことになる。
「いや、今なら恭先輩と永尾に対して聖が反撃しても大丈夫だって話だ」
なんて、言いながらニヤリと大我が悪い顔で笑う。
「ぶっ、なんだよそれ。なに、俺が2人に復讐してもOKってこと?」
大我の言葉に聞き返せば、2人は苦笑を浮かべる。
「今回の件はお前も被害者だからな。愁先輩と神谷は身重だからムリだけど、恭先輩や永尾ならやりたい放題だぞ」
なんていう大我はどこか楽しそうだった。
「んー、なら永尾は生徒会の方でしばらくの間、こき使うことにする。あの2人も永尾に迷惑かけられてるからな」
もう特に風紀の方で処分するつもりもないけど、迷惑をかけられたのは事実だから生徒会の方で2人に対して何かしらの処分を与えてもいいと大我は言ってるんだ。なら、その提案に答えるとするなら、永尾には副会長としての仕事を全うしてもらおうじゃないか。あの2人の分も込みで。
「だそうだぞ永尾」
楽しそうに大我が永尾に言ってる。これって、あれだ、大我のやつそこまで酷く怒ってはいないけど、まだ少し怒ってるって証拠だ。これはあれだ、永尾を少し困らせようとしてる奴だ。だから別に本気で何かしようって考えてるわけじゃないヤツだこれ。
「うぅ、会長がそう言いなら…」
なんて、珍しく永尾にしては素直に返事をした。これには驚きだ。
「なんだ、反発するって思ったのに素直に返事するんだな」
なんて、恭先輩が驚いた顔をする。いや、本当に意外だったんだ。
「そりゃ…僕が悪いですからね。委員長のことにしても、会長のことにしても、自分の浅はかな行いのせいなんで…反省してるんです。神谷くんにもしっかり怒られたし…」
なんてバツが悪そうに言う。神谷はうんうんと何度も頷いてた。愁先輩はそんなやり取りを見ながらニコニコと笑ったままである。
「神尾くんはいいの?」
なんて急に愁先輩が大我に聞いている。
「俺は別の機会にするんで今はいいんですよ」
なんて笑う大我の顔は悪魔だった。なんとなく大我が悪巧みしてるような感じがした。
「なんかその笑みは怖いね」
なんて愁先輩が言えば
「気のせいです」
なんて大我がすかさず返事をしてた。大我のことだから絶対になんか企んでそうだ。なんて思ったけど俺は口に出さないことにした。その理由は簡単で、多分、この悪巧みに俺自身も加担することになりそうだからだった。
「さて、恭先輩、いくら安定期に入ったとしても愁先輩には負担が多くかかりすぎます。帰って休ませてあげてください」
いつものように愁先輩の体調を考えて恭先輩に声をかける。
「そうだな、愁行こう」
大我の言葉に反応するように恭先輩は愁先輩を立たせると部屋を出て行った。
「神谷も安定期に入る前だ、あまり無理しない方がいい。今日は帰った方がいいだろう」
「いえ、今日は体調がいいですし、少し風紀の仕事を手伝ってもいいですか?」
大我の言葉に神谷が聞く。それには大我も俺も驚いた。
「わかった。なら書類整理を手伝ってもらえるか。処理しきれていないものが多いってみんなが言ってたからな」
そんな神谷を拒むわけじゃなくちゃんと仕事を与えようとする大我ってすごいな。
「はい、わかりました」
仕事をさせてもらえるって聞いた神谷もすごく嬉しそうだった。
「永尾、神谷は休憩させながら仕事を任せるから、時間より早く迎えにこいよ。ただし、聖たちの許可を得てからだからな」
「はい、神谷くんのことお願いします委員長」
大我の言葉に永尾は頭を下げる。
「聖、お前も早めに仕事を切り上げろよ。お前も病み上がりなんだからな」
「それ、大我も同じだから」
大我の言葉に反論すれば小さく笑って大我は神谷を連れて風紀委員室へと戻っていった。
「さて、永尾はこれからしばらくは雑用係だからな」
俺は一人取りに越されている永尾に告げて残りの役員たちにも声をかけた。


相変わらず大我は周りのことを人一倍観察してる。俺でも気が付かない細かな部分まで…。


本当に大我ってすごいし化け物だなって思った。


でもそんな大我に俺は助けられているんだ。


俺が気が付かないうちに…。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

処理中です...