会長様ははらみたい

槇瀬光琉

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47話

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side 唯斗


「んっ」
ふわふわと闇に墜ちていた意識が浮上してきて、目を開ければ裸のまま抱きしめられていることに気が付いた。


あちゃぁ~!やっちまった。


自分が危惧してたように発情して、大我を求めた結果、寝落ちしたのを朧気ながらに思い出した。そろっと大我を見上げれば、まだ眠ってるみたいで少しだけ安心した。疲れをとるために休ませたかったのに、結局は疲れさせた気がする。しかも、まだ俺の発情が終わったわけじゃない。今はまだ落ち着いてるだけで…。

「やっぱり…大我の腕の中が落ち着くんだよな…」
俺はポツリそんなことを口にした。


中学の時、初めて発情してからずっと、この男が俺の傍にいてくれて、それから俺が発情すれば大我が傍にいてくれた。初めはなんでだよって反発してたけど、ずっと傍にいて、俺が甘えれば甘えさせてくれて、キスすれば拒まずにキスしてくれて、けれど絶対に一線は超えずにいた。そんな男がずっと気に入らないと思っていた。

気に入らないって言うのは語弊があるけど、俺がして欲しいというのをダメだというこの男が気に入らなかったんだ。俺が望んでることをしてくれればいいと訴えているのに、それを叶えてくれなかったこの男が気に入らなかったんだ。だけど、大我の傍はいつも落ち着けて、安心できていた。

だから発情の時はいつもフラッと何処かへ行っていたし、探してもらいたかったんだ。自棄になってる俺を見つけて欲しかったんだ。

でも、そんな感情を生まれさせたのはまぎれもなくこの男自身だ。俺を甘やかすから、俺が甘えた分だけ甘やかすから俺はそれがないとダメになってたんだ。親に捨てられた俺が唯一甘えられたのが神尾大我だったから…。

好きだと気が付いて、大我と付き合うようになって、俺はまた神尾大我に惚れた。それと同時に失うことを恐怖するようになった。大我の愛情がなくなれば俺は確実に死ぬ。大我を失ったら俺はもう誰も信じられない。それほどまでに俺にとって神尾大我は必要な存在だった。

「ホント、俺の知らない所で根回ししすぎだろ?」

自分の知らない所でこの男は色々と根回ししてきたのを初めて知った。それこそ中学の時からずっと俺に気が付かない所でコソコソとやってきたのだ。それを今になって教えられてビックリしたし、呆れもした。いや、俺の為だから嬉しんだけど、でもやっぱりちょっとなんだか複雑だ。だって、大我の相手が俺じゃなかったら今の俺たちの関係はなかったってことだし、こんな手の込んだことをしてこなかったってことになる。それこそ、もしかしたら今の第2の性のシステムすら作られていなかったのかもしれない。

そう考えれば考えるほど、俺はこの男に知らない所で大事にされていたんだなと思う。


「あっ、顔色がよくなってる」
マジマジと大我の寝顔を見てこの場所に来た時よりも顔色がよくなってるのに気が付いた。っていっても、俺がこの部屋に来て2日目?3日目?ぐらいなんだけどさ。


大我の寝顔を見てたら悪戯したくなって俺は寝てる大我の首筋に唇を寄せ吸い付き痕を残した。


「んっ、ゆぃ?」
結構きつく吸いついたからその痛みで目を覚ましたのか大我が起きちゃったや。
「おはよう」
俺はそう言いながら大我の胸に顔を寄せ抱き着いた。

「んっ、おはよう。ふあぁ。退屈だったのか?」
欠伸をしながらも俺を抱きしめてくれる大我。
「ううん。大我の寝顔を見てたから退屈じゃない。それに考え事してたし」
うん、これは嘘じゃない。本当のことだ。

「昨日のままだから風呂入らねぇと…」
なんて言いながら大我のやつまた寝ちゃったよ。これって…どう考えても疲れてるんだろうな。


いや、だから大我が化け物なんだって…。ぶっ倒れたって聞いた次の日に普通に起きてご飯作ってるし、発情してる俺の相手してるし…。絶対に可笑しい。この男、本当に化け物だ。


疲れてるんだろうなって言葉が浮かんだけど、化け物って言葉の方が塗り替えていった。


「俺ももう一回寝よ~っと」
俺も大我と一緒に寝ようと決めて、大我に抱き着いたまま目を閉じた。


次に起きた時もまだ発情が落ち着いてますように…と思いながら…。


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