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35話
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Side 永尾
思い出の場所と言われ僕はここへ来た。初めて神谷くんと結ばれた思い出の場所。
もし間違ってたら?
そんな不安もある。でも会長の言葉や委員長の思いを信じて僕は持っていたカキを鍵穴に差してゆっくりと回した。
ガチャッ!
鍵が開く音がした。僕は鍵を抜き緊張で震える手でドアノブを掴み、回した。
扉を開けて部屋の中に入れば
「よう。待ってたぜ」
そこには暴君と呼ばれた男がいた。
「なっ…なんであなたがここに?」
これは僕への試練なんでしょうか?
会長を襲った僕への神尾くんからの仕返しなんでしょうか?
「ちょっと家族会議がしたくてよぉ、そこで待ってろ」
家族会議?
彼は意味の分からない言葉を残して部屋の奥へと入っていった。
数分して戻ってきた彼の後ろには少し青い顔をした神谷くんがいた。
「神谷くん大丈夫なんですか?」
彼が心配で近付こうとしたら
「お前はまだそこから動くな」
暴君に止められた。反論しそうになったけど、ぐっと堪えた。後々面倒なことになっても困ると思ったんだ。
「兄さん大丈夫だから」
神谷くんが苦笑を浮かべる。
ん?今なんと?
「えっ?兄さん?誰が誰の?」
意味が分からな過ぎて頭の中が変だ。
「俺が静の兄だが?だから家族会議をするって言っただろ?」
そう平然と言ってのけるのは暴君である前期生徒会長の神谷先輩。驚いたままで神谷くんを見れば小さく頷き
「正真正銘、僕の兄さんだよ。黙っててごめんね」
間違いじゃないと告げる。
「えっと…それで、家族会議というのは具体的に何を?」
兄弟そろって一体何の話があるのだろうか?
それに神尾くんはなぜこの鍵を僕に?
「何をって、なぜ神尾が1ヶ月も接近禁止令を出したかについてだよ」
神谷先輩の言葉にあぁ、やっぱりそのことかって思った。神谷くんは僕と向き合うためにこの場所を選んだんだと…。
「その前に僕の話を聞いてもらえますか?」
僕はそうお願いしてみた。2人は顔を見合わせ頷き
「言えよ」
話せと言ってくれた。
「僕は神尾くんに言われた時、なんでだって思いました。自棄になって一人でむしゃくしゃして、会長を襲って、先輩に殴られて、1週間謹慎することになってどうしてだって思ってました。謹慎中に神尾くんと話をして、僕の愚かな行動で3人を不幸にする所だったって言われて、3人って誰だよって思いました。一人で考えて、今、こぅして神谷くんを前にしてハッキリとしました。神谷くんのお腹の中には僕との子がいるんですね?だから僕ではなく神尾くんに相談したんですね?3人のうち一人は会長、そして残り2人は神谷くんとお腹の子なんでしょう?」
禁止令を受けてから一人でモヤモヤしていた。会長たちにも酷いことをして、謹慎をして1人で考えた。最初っから何が起きたのか、何をやらかしたのかをずっと考えていた。謹慎中、神尾くんは僕を見捨てるわけでもなく、突き放すわけでもなく、ちょくちょく話をしていた。反省して、何がいけなかったのか、なぜ、冷静になれとずっと言っていたのかを…。
「で、お前はそれを知ってどうするつもりだ?」
先輩の冷たい言葉。
「神谷くん、いいえ静、順番が逆になったし、不安にさせてごめん。僕はまだ学生だから苦労をかけるけど僕と結婚して欲しい。その子を産んで僕と一緒に育てていこう。静がもっと勉強ができるように僕もちゃんと手伝うから」
神谷くんに会ったら絶対に伝えようと思っていた言葉を口にした。僕の言葉を聞き神谷くんの瞳からポロリと涙が零れ落ちた。その涙はポロポロと落ちる。
「えっ?あっ、神谷くん?」
傍に行って抱き締めたいけどそれが出来なくて、1人でオロオロしていたら神谷くんの方から抱きついてきた。僕は驚きながらもその身体を抱きしめた。
「…っ…ごめんね…健汰…僕…怖くて…健汰には…ちゃんと許嫁がいるって…聞いてたから…」
腕の中で言われた言葉にクラリと眩暈がした。母にも神尾くんにもさんざん怒られた、あれは僕の思い違いだと…。
「うん、ごめん。それに関しては謝るよ。僕には婚約者も許嫁もいない。それに…僕が好きなのは静哉だけだから…だから僕は静と一緒になりたい」
神谷くんの頭を撫でながら謝る。ずっと…僕と付き合ってからずっと心配で不安だったんだって今更ながらに思う。
「話はまとまったか?静はどうしたいのかちゃんと話せよ」
先輩の言葉に神谷くんは小さく頷き息を吐く。そして
「僕はまだいろんなことを学びたい。でも、この子もちゃんと産んで育てたい。健汰はこんな僕を受け入れてくれますか?」
あまり僕に対して我が儘を言わない神谷くんの言葉。
「勿論だよ。僕もちゃんと手伝うから一緒になろう」
そんなの拒むはずがない。僕は神谷くんもお腹の子も手に入れたいんだ。
「話はちゃんとまとまったみたいだから邪魔者は消えるか」
先輩は扉の方へ歩いていくがふと立ち止まり
「永尾。お前、神尾に殴られなかっただけありがたいと思えよ。あいつ、あの時、人を殺めそうなぐらい怒ってたからな」
その言葉を言い残し本当に出ていった。
イヤ、確かにそう思う。先輩が先に殴ってくれたからまだ助かったけど…。あの時ずっと睨まれてて、それだけでもメチャクチャ怖かったんだよね。本当は…。怒らせちゃいけない相手を怒らせた自覚はあったんだ…。
普段あまり怒らないあの神尾大我を怒らせたら命が幾つあっても足りない。しかも彼の思い人を襲ったんだもん。殺されなかっただけましだよ…。謹慎だけでよかった本当に…。
「静、座ってちゃんと話そう。これからのこともちゃんと2人で相談して決めていこう」
僕が神谷くんに話しかければ
「先に1つだけいい?」
神谷くんに聞かれて
「ん?何?」
そう聞き返したら
「このバカ健汰!なに委員長に迷惑かけてんの?しかも会長に手を出すかとか!本当に何してくれちゃってんの!後日ちゃんと2人に謝るからね!」
強烈なパンチを1発、鳩尾に喰らって怒られた。
「ハイ」
うん、ごめんなさい。ちゃんと2人には謝ります。
こうして僕は長かった1ヶ月の接近禁止令を経て大切な恋人を手に入れた。
驚くことばかりあったけど、僕はこれからも神谷くんと一緒に歩んでいきたい。
僕の大切な人だから…
思い出の場所と言われ僕はここへ来た。初めて神谷くんと結ばれた思い出の場所。
もし間違ってたら?
そんな不安もある。でも会長の言葉や委員長の思いを信じて僕は持っていたカキを鍵穴に差してゆっくりと回した。
ガチャッ!
鍵が開く音がした。僕は鍵を抜き緊張で震える手でドアノブを掴み、回した。
扉を開けて部屋の中に入れば
「よう。待ってたぜ」
そこには暴君と呼ばれた男がいた。
「なっ…なんであなたがここに?」
これは僕への試練なんでしょうか?
会長を襲った僕への神尾くんからの仕返しなんでしょうか?
「ちょっと家族会議がしたくてよぉ、そこで待ってろ」
家族会議?
彼は意味の分からない言葉を残して部屋の奥へと入っていった。
数分して戻ってきた彼の後ろには少し青い顔をした神谷くんがいた。
「神谷くん大丈夫なんですか?」
彼が心配で近付こうとしたら
「お前はまだそこから動くな」
暴君に止められた。反論しそうになったけど、ぐっと堪えた。後々面倒なことになっても困ると思ったんだ。
「兄さん大丈夫だから」
神谷くんが苦笑を浮かべる。
ん?今なんと?
「えっ?兄さん?誰が誰の?」
意味が分からな過ぎて頭の中が変だ。
「俺が静の兄だが?だから家族会議をするって言っただろ?」
そう平然と言ってのけるのは暴君である前期生徒会長の神谷先輩。驚いたままで神谷くんを見れば小さく頷き
「正真正銘、僕の兄さんだよ。黙っててごめんね」
間違いじゃないと告げる。
「えっと…それで、家族会議というのは具体的に何を?」
兄弟そろって一体何の話があるのだろうか?
それに神尾くんはなぜこの鍵を僕に?
「何をって、なぜ神尾が1ヶ月も接近禁止令を出したかについてだよ」
神谷先輩の言葉にあぁ、やっぱりそのことかって思った。神谷くんは僕と向き合うためにこの場所を選んだんだと…。
「その前に僕の話を聞いてもらえますか?」
僕はそうお願いしてみた。2人は顔を見合わせ頷き
「言えよ」
話せと言ってくれた。
「僕は神尾くんに言われた時、なんでだって思いました。自棄になって一人でむしゃくしゃして、会長を襲って、先輩に殴られて、1週間謹慎することになってどうしてだって思ってました。謹慎中に神尾くんと話をして、僕の愚かな行動で3人を不幸にする所だったって言われて、3人って誰だよって思いました。一人で考えて、今、こぅして神谷くんを前にしてハッキリとしました。神谷くんのお腹の中には僕との子がいるんですね?だから僕ではなく神尾くんに相談したんですね?3人のうち一人は会長、そして残り2人は神谷くんとお腹の子なんでしょう?」
禁止令を受けてから一人でモヤモヤしていた。会長たちにも酷いことをして、謹慎をして1人で考えた。最初っから何が起きたのか、何をやらかしたのかをずっと考えていた。謹慎中、神尾くんは僕を見捨てるわけでもなく、突き放すわけでもなく、ちょくちょく話をしていた。反省して、何がいけなかったのか、なぜ、冷静になれとずっと言っていたのかを…。
「で、お前はそれを知ってどうするつもりだ?」
先輩の冷たい言葉。
「神谷くん、いいえ静、順番が逆になったし、不安にさせてごめん。僕はまだ学生だから苦労をかけるけど僕と結婚して欲しい。その子を産んで僕と一緒に育てていこう。静がもっと勉強ができるように僕もちゃんと手伝うから」
神谷くんに会ったら絶対に伝えようと思っていた言葉を口にした。僕の言葉を聞き神谷くんの瞳からポロリと涙が零れ落ちた。その涙はポロポロと落ちる。
「えっ?あっ、神谷くん?」
傍に行って抱き締めたいけどそれが出来なくて、1人でオロオロしていたら神谷くんの方から抱きついてきた。僕は驚きながらもその身体を抱きしめた。
「…っ…ごめんね…健汰…僕…怖くて…健汰には…ちゃんと許嫁がいるって…聞いてたから…」
腕の中で言われた言葉にクラリと眩暈がした。母にも神尾くんにもさんざん怒られた、あれは僕の思い違いだと…。
「うん、ごめん。それに関しては謝るよ。僕には婚約者も許嫁もいない。それに…僕が好きなのは静哉だけだから…だから僕は静と一緒になりたい」
神谷くんの頭を撫でながら謝る。ずっと…僕と付き合ってからずっと心配で不安だったんだって今更ながらに思う。
「話はまとまったか?静はどうしたいのかちゃんと話せよ」
先輩の言葉に神谷くんは小さく頷き息を吐く。そして
「僕はまだいろんなことを学びたい。でも、この子もちゃんと産んで育てたい。健汰はこんな僕を受け入れてくれますか?」
あまり僕に対して我が儘を言わない神谷くんの言葉。
「勿論だよ。僕もちゃんと手伝うから一緒になろう」
そんなの拒むはずがない。僕は神谷くんもお腹の子も手に入れたいんだ。
「話はちゃんとまとまったみたいだから邪魔者は消えるか」
先輩は扉の方へ歩いていくがふと立ち止まり
「永尾。お前、神尾に殴られなかっただけありがたいと思えよ。あいつ、あの時、人を殺めそうなぐらい怒ってたからな」
その言葉を言い残し本当に出ていった。
イヤ、確かにそう思う。先輩が先に殴ってくれたからまだ助かったけど…。あの時ずっと睨まれてて、それだけでもメチャクチャ怖かったんだよね。本当は…。怒らせちゃいけない相手を怒らせた自覚はあったんだ…。
普段あまり怒らないあの神尾大我を怒らせたら命が幾つあっても足りない。しかも彼の思い人を襲ったんだもん。殺されなかっただけましだよ…。謹慎だけでよかった本当に…。
「静、座ってちゃんと話そう。これからのこともちゃんと2人で相談して決めていこう」
僕が神谷くんに話しかければ
「先に1つだけいい?」
神谷くんに聞かれて
「ん?何?」
そう聞き返したら
「このバカ健汰!なに委員長に迷惑かけてんの?しかも会長に手を出すかとか!本当に何してくれちゃってんの!後日ちゃんと2人に謝るからね!」
強烈なパンチを1発、鳩尾に喰らって怒られた。
「ハイ」
うん、ごめんなさい。ちゃんと2人には謝ります。
こうして僕は長かった1ヶ月の接近禁止令を経て大切な恋人を手に入れた。
驚くことばかりあったけど、僕はこれからも神谷くんと一緒に歩んでいきたい。
僕の大切な人だから…
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