会長様ははらみたい

槇瀬光琉

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34話

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Side 唯斗


「はっ?」
あまりにも突然の言葉で変な声が出た。

「えっと、ですから本日付で風紀委員長には俺、間宮が副委員長には町元が着任させていただきました」
目の前の後輩はもう一度、同じ言葉を口にする。
「イヤ、それはわかった。大我や神谷はどうした?満期までやりとげるんじゃないのか?」
後輩を育ててるのはわかってる。それは会長である自分も今その最中なんだから。

「お2人でしたら昨日付で退任しました。元々、風紀の方で決まっておりました」
その言葉にクラリと眩暈がする。今回の騒動の中であの男はこんな大事なことまで同時にやっていたのかと思うと本当に化け物だ。
「で、2人はどうしてるんだ?挨拶もなしなのか?」
退任するのなら挨拶をしに来てもいいと思ったんだ。

「神尾先輩は現在、校医2人により1週間の面会謝絶です。神谷先輩も同様に1週間は面会禁止となっております」
間宮の言葉に
「はっ?面会謝絶?」
俺はビックリして大声を出してしまった。そんな話全然聞いてないし。

「えっと、聖会長と永尾副会長には神尾先輩より伝言を預かっております」
間宮の言葉に
「何をだ?」
溜め息をつきながら聞いた。

「はい、聖会長には、本日、生徒会終了後、校医2人の所へ行ってくれと、永尾副会長にはこれを…」
そう言いながら永尾に白い封筒を渡した。
「それでは我々はこれで失礼します」
「あっ、ちょっと待て」
用件だけ残し行ってしまおうとする2人を慌てて俺は呼び止めた。

「はい?なんでしょうか?」
間宮が不思議そうな顔をする。
「現在の役員は残り数か月しか顔を合わせることはないが、よろしく頼む。来期より新生徒会役員と一緒にこの学園を守ってくれ」
現生徒会役員として挨拶をすれば
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
2人は頭を下げて自分たちの城へと戻っていった。

俺は大きく溜息をついて深々と椅子の背もたれに凭れた。その隣で
「これは…」
封筒の中身を見て呟く。
「どうしたんだ?」
気になって永尾を見れば1枚の手紙と鍵を持っていた。その手紙には


『本当に手に入れたいんだったら捜し出してみろ。それが出来なきゃお前には手に入れることはできない。 神尾大我』

それは大我からの挑戦的な手紙で、鍵はどこかの部屋。
「さっき間宮が1週間は面会禁止と言ってたから捜し出せば会えるんじゃないのか?」
俺は大我からの手紙を見ながら永尾に言うが
「でも一体どこを…」

永尾はどこを捜せばいいのかわからないという。
「神谷が使ってる部屋とか?えっと普段発情の時とか…」
俺なら多分そっちだと思う。
「いえ、彼、普段は使わないんです」
永尾の言葉に神谷って使わないんだって思った。ってかヒントないじゃん。って考えてたら

「あっ…もしかしたら…」
永尾が何かを思い出したのか声をあげる。
「何かわかったのか?」
わかったならそこに行けば会えるかもって思った。

「えっと、1年の頃に神尾くんが助けて保護していた部屋があるんです。もしかしたらその部屋かも…」
永尾の言葉を聞き
「神谷と思い出の場所なのか?」
ついそう聞いてしまった。

「はい、神谷くんと初めて結ばれた場所です」
少し照れながら言われた。が、俺の中でそれは確信に変わった。
「永尾、神谷は絶対にそこにいる。間違いない」
神尾大我は思い出を大切にする男だ。それが他人のモノであっても…。そして今回、神谷は永尾とちゃんと向き合うために為にその場所を選んだとすれば大我はそれをヒントにするだろう。

「えっ?どうしてですか?」
永尾は不思議そうに聞いてくる。まぁ、そうだろうなと思う。
「神谷を隠したのが大我なら、大我は相手の思い出を大切にするからだよ」
きっと、神谷は初めての場所で、初心に戻って永尾と向き合いたいんだ。
「わかりました。行ってみます」
「あぁ、それがいい」
神谷と永尾は本当に分かり合えたらそれでいい。

「会長も、副会長も何をぼさっとしてるんですか。さっさと行ってください」
そう声をかけられて驚いて声がした方を見れば小泉が扉を開けて立っていた。
「いや、そういうわけには…」
まだ生徒会の仕事は終わってないんだ。
「少しぐらいは俺たちに甘えてくれてもいいんじゃない2人とも」
今度は絹笠がいう。

「そうですよ先輩、行ってください」
「先輩たちが後悔する前に…」
後輩たちも言ってくれる。俺と永尾は顔を見合わせ頷いた。

「ありがとうみんな、行ってくる」
「ありがとう。後は頼みました」
みんなにお礼を告げて俺と永尾は生徒会室を飛び出した。


永尾は神谷がいる部屋へと


俺はコウちゃんとヒロさんの元へと…



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