会長様ははらみたい

槇瀬光琉

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30話

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「何してんですかあんたたち。揃いも揃って会長である聖をリンチですか?」
急に扉が開いたなって思ったら大我が入ってきた。

「違うよ。聖くんとお茶会してるんだよ」
「お前もまざるか?」
愁先輩と恭先輩が大我を誘うけど
「遠慮します。まだ仕事が残ってるんで」
大我はあっさりと断った。忙しいそうだな…。

「柳川、三条はどうした?」
急に柳川を呼んだ。
「三条統括は引継ぎをしながら校内を見回り中です」
そう説明をしてる。そういえば腕章をつけて出て行ったな、って思った。

「あー、じゃぁ、30分しても三条が戻ってこなかったら、悪いんだが、聖を校医の所へ送ってくれ」
大我の言葉に俺はえっ?て思った。顔に出てたのかもしれない。大我は小さく息を吐き
「1時間以内にお前、熱が出るぞ。煌太さんと拓輝には言っておくから二人の所へ行けよ」
俺に向かって説明してくれた。


なんでわかるんだよ!


って思ったけど、俺より俺のことを知ってるのがこの男だった。って俺は思いなおした。
「わかりました。指示通りに動きます」
大我の言葉に柳川も返事をしてるし。
「悪いな、頼む」
大我はそのまま出ていこうとしたんだけど

「ゆい、これやるから、これ食べてゆっくり休め」
突然、振り返って俺に何かを投げて今度こそ出て行った。

「あっ、これ…」
俺は受け取ったそれを見て呟いた。

「キレイな青だね」
俺の手の中にあるモノを見て愁先輩が呟く。
「どうした聖。固まって」
手の中のモノを見て固まってる俺に恭先輩が不思議そうに聞いてくる。

「えっ、あっ、実はこれがここにあることが信じられなくて」
俺は手にあるモノを見て本当に驚いた。
「どういうこと?」
愁先輩が聞いてくる。

「えっと、実はこれ1週間の期間限定で行われたイベントでしか手に入らないものなんです。でも、俺そのイベントに行ってなくて…」
そう、俺の手の中にあるものは大我と一緒に行こうと約束していたイベントでしか手に入れれない代物。
「てかそのイベントいつやったんだ?」
緑先輩の問いに

「えっと、実は、永尾が俺たちを暴行を働いた二日後が最終日だったんです」
そう、実は永尾が暴行を働いたあの日の二日後がイベントの最終日だった。ずっと一緒に行こうって約束してたんだ。
「それって、神尾と約束してたやつなのか?」
吉沼先輩の問いに
「はい、イベントの告知が出てたのが3ヶ月前で、一緒に行こうって約束してたんです」
俺は手の中のモノを見ながら答えた。

「でも、ほら、インターネットで買うとかしたんじゃないのかな?」
愁先輩の言葉に俺は首を振る。
「それは出来ないんです。これは本当にイベント会場でしか手に入れれないものなんです。イベントの告知にもちゃんと書かれてました」
だから、本当にイベントでしか手に入らないものなんだ。

「ってことは…あいつマジで化け物だな」
恭先輩が溜め息交じりに言う。
「そういうことになるね」
愁先輩も呆れてる。
「まぁ、あいつが化け物化するときは決まってるからな」
吉沼先輩も頷いてる。
「あの男が化け物にまでなっても守りたいのは聖唯斗だからな」
緑先輩もそんなことを言う。


「でも、やっぱり、聖すまん!静と永尾のせいでお前が楽しみにしてたイベントに行けなかったんだ。本当にすまん!」
恭先輩がもう一度頭を下げてきた。
「えっ、あっ、いや、頭を上げてくださいって。大丈夫ですから…」
うん、大丈夫。またいつか行けたらそれでいいから…。

「会長、お楽しみ中すみません。委員長直々の仕事なので、校医の2人の場所までお送りします」
俺の後ろから柳川が声をかけてきた。
「えっ?あっ、もうそんな時間か。わかった、先輩たちすみません。俺、行きますね」
柳川の言葉に反応して、先輩たちに声をかけて立ち上がったらフラって眩暈がした。倒れそうになったのを、ごく自然な流れで柳川が受け止め、

「委員長のお言葉は的確ですね。熱が上がりだしてます。身体が熱くなってますよ」
苦笑を浮かべながら言ってくる。
「本当に俺も驚かされる」
柳川の言葉に俺も賛同する。本当に俺以上に俺のことがわかってるあの男が不思議だ。

「聖くんが行くなら俺たちも行こうか。ここにいたらみんなが困るもんね」
愁先輩の言葉に賛同するのか、他の先輩も頷き立ちあがる。

「では、会長、行きましょう」
俺は柳川に支えながら風紀委員長室を後にした。



「おやぁ?おやぁおやぁ?これはまた珍しい組み合わせで来たねぇ」
柳川と一緒にコウちゃんの所へ行ったら驚いた顔で出迎えてくれた。それもそうだよね、後ろには先輩たちもいるもんね。
「ゆい、取り合えずベッドに座れ」
ヒロさんが俺に言うから言われたとおりにベッドへ座った。

「ゆい、体温計、取り合えず熱はかれ」
ベッドに座った俺に体温計を渡してくるヒロさん。俺はそれを受け取り体温を測り始めた。
「で、君たちはなんでここに?」
コウちゃんが先輩たちに聞いてる。

「聖くんとお茶してたんですよ」
「そしたら神尾が1時間以内に熱出すって言うからよぉ」
「マジで熱出すし」
「連れてくって言うからついでにな」

そんなコウちゃんに先輩たちが答えてるし、俺の測ってた体温計はヒロさんに持っていかれた。
「あいつは…本当にゆいのことをよく見てるな。38℃だ。ただ、軽い風邪だな。少し疲れがたまってただろお前」
体温計を見て、溜め息交じりに言われた言葉に小さく頷く。

大我ほどじゃないけど、永尾が謹慎してた分だけ俺に負担がかかってたのは事実。だから少し無理はしていた。
「永尾の謹慎も明日で終わりだ。だから、ゆいは数日間、療養のために休みだ。柳川、風紀委員長にそう報告してくれ」
ヒロさんは手早く書類を書き上げ、柳川に渡している。
「わかりました。後はお願いします」
柳川はそれを受け取り戻っていった。

「じゃぁ、僕たちも戻ろう。聖くん、またお茶しようね」
「ゆっくり休めよ」
「あいつみたいに無理するなよ」
「お前はあいつみたいに化け物じゃねぇんだからな」

なんて先輩たちは言って出ていった。

「本当に、あの子たちはゆいちゃんと大ちゃんのこと気に入ってるよねぇ」
なんて、コウちゃんが言う。
「そうだな。なんだかんだと言っても吉沼も大我のこと気に入ってるからな」
ヒロさんまでそんなことを言う。

「じゃぁ、ゆいちゃんはこれを飲んで部屋へ行こうか」
コウちゃんが俺の薬と水を渡してきた。俺はそれを言われたとおりに飲んで、2人に連れられていつもの部屋へと戻ったのだった。



部屋に戻って、大我にもらったモノを見て驚いた。


『次は必ず一緒に行こう』


小さくそう書かれていた。


大我は本当にこれを買いに行くためだけにイベントに行ってたんだと思って驚いた。


嬉しくて顔がにやけたのは言うまでもない。



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