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26話
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Said 拓輝
「泣き疲れて寝ちゃったよ」
少しだけ疲れた顔で煌太が戻ってきた。
「今夜は俺がみてるから煌太は帰って劉と休め。身体に負担がかかるからな」
煌太の背を撫でながら告げれば
「ゆいちゃん大丈夫かな?」
不安げな顔で聞いてくる。
「あの時、大我はゆいを本気で拒絶したわけじゃないんだが、ゆいは自分が拒絶されて嫌われたと思っただろうな」
煌太の背を撫でたまま答える。
あの時の大我は自分の怒りの感情を抑え込むためにゆいを遠ざけた。結果的にそれは初めての拒絶に見えてしまった。ゆいにすればショックだろう。そして、何よりも、誰よりも、ゆいの傍に一番いたいのはあの男なのだ。だが、それが出来ないからこうして俺たちに任せてるんだがな…。
「劉が待ってるから僕は帰るよ。ゆいちゃんをお願いね」
小さな溜め息をつき帰るための準備を始める。
「こう、お前1人の身体じゃないんだムリするなよ?お前を助けるために俺も両親もいるんだからな」
「大丈夫。僕はみんなにちゃんと頼ってるから。じゃぁ、ひろくん2人をお願いね」
俺の言葉を聞き小さく笑って帰っていった。
あいつも随分と大我とゆいを気に入ったもんだな。
煌太が帰って2時間ぐらいしてからあいつが現れた。
「終わったのか?」
疲れきった顔をした弟に声をかければ
「まだだよ」
そんな返事が返ってくる。
「ホラ、取り敢えずこれでも飲め」
少し濃いめのコーヒーを淹れて出せば、溜め息をつきそれを飲んだ。
「あれ?煌太さんは?」
コーヒーを飲んで少しだけ落ち着いたのか俺だけしかいないことに気がつき聞いてくる。
「今日は帰らした。あいつも身重だからな。まだ安定期には少しあるからな」
今日は帰らせたと告げれば少しだけ安心した 顔になる。
煌太にも少しムリをさせているってこいつもわかってるからな。
「ゆいは?」
本当は一番気になっているであろう人物の名をやっと口にする。
「泣き疲れて眠ったままだ。誤解は解かなくてもいいのか?」
このままでいいのかと聞けば小さく笑い
「今はその方がいいのかなって思う。ゆい自身を守るためにはその方がいいのかなって…」
そんなことを言うが心配なのは事実。
出なければクソ忙しくしてる男がムリをしてまでもここへは来ない。
「顔ぐらい見ていってやれ」
俺はイロイロと忙しい弟の背を叩きいってやる。
「いてぇよ、バカ力」
なんて文句を言いながら寂しがりやの恋人のところへと行った。
「…っ…たい、がぁ…」
大我が部屋に入ってから割りとすぐにゆいの泣き声が聞こえてきた。
朝、起きたときにちゃんと大我に慰めてもらったんだと覚えててくれればいいんだけどなと俺は思った。
弟の腕の中で大泣きをする弟の恋人の声を聞きながら俺はそっと部屋を出た。
あいつが帰るときに連絡が来るのをわかっているから...。
少しの間だけでも2人だけの時間を過ごしても罰はあたらないと思う。
頑張りすぎる弟と、我慢しすぎる弟の恋人のこれからを考えながら俺は煌太へ電話をかけたのだった。
「泣き疲れて寝ちゃったよ」
少しだけ疲れた顔で煌太が戻ってきた。
「今夜は俺がみてるから煌太は帰って劉と休め。身体に負担がかかるからな」
煌太の背を撫でながら告げれば
「ゆいちゃん大丈夫かな?」
不安げな顔で聞いてくる。
「あの時、大我はゆいを本気で拒絶したわけじゃないんだが、ゆいは自分が拒絶されて嫌われたと思っただろうな」
煌太の背を撫でたまま答える。
あの時の大我は自分の怒りの感情を抑え込むためにゆいを遠ざけた。結果的にそれは初めての拒絶に見えてしまった。ゆいにすればショックだろう。そして、何よりも、誰よりも、ゆいの傍に一番いたいのはあの男なのだ。だが、それが出来ないからこうして俺たちに任せてるんだがな…。
「劉が待ってるから僕は帰るよ。ゆいちゃんをお願いね」
小さな溜め息をつき帰るための準備を始める。
「こう、お前1人の身体じゃないんだムリするなよ?お前を助けるために俺も両親もいるんだからな」
「大丈夫。僕はみんなにちゃんと頼ってるから。じゃぁ、ひろくん2人をお願いね」
俺の言葉を聞き小さく笑って帰っていった。
あいつも随分と大我とゆいを気に入ったもんだな。
煌太が帰って2時間ぐらいしてからあいつが現れた。
「終わったのか?」
疲れきった顔をした弟に声をかければ
「まだだよ」
そんな返事が返ってくる。
「ホラ、取り敢えずこれでも飲め」
少し濃いめのコーヒーを淹れて出せば、溜め息をつきそれを飲んだ。
「あれ?煌太さんは?」
コーヒーを飲んで少しだけ落ち着いたのか俺だけしかいないことに気がつき聞いてくる。
「今日は帰らした。あいつも身重だからな。まだ安定期には少しあるからな」
今日は帰らせたと告げれば少しだけ安心した 顔になる。
煌太にも少しムリをさせているってこいつもわかってるからな。
「ゆいは?」
本当は一番気になっているであろう人物の名をやっと口にする。
「泣き疲れて眠ったままだ。誤解は解かなくてもいいのか?」
このままでいいのかと聞けば小さく笑い
「今はその方がいいのかなって思う。ゆい自身を守るためにはその方がいいのかなって…」
そんなことを言うが心配なのは事実。
出なければクソ忙しくしてる男がムリをしてまでもここへは来ない。
「顔ぐらい見ていってやれ」
俺はイロイロと忙しい弟の背を叩きいってやる。
「いてぇよ、バカ力」
なんて文句を言いながら寂しがりやの恋人のところへと行った。
「…っ…たい、がぁ…」
大我が部屋に入ってから割りとすぐにゆいの泣き声が聞こえてきた。
朝、起きたときにちゃんと大我に慰めてもらったんだと覚えててくれればいいんだけどなと俺は思った。
弟の腕の中で大泣きをする弟の恋人の声を聞きながら俺はそっと部屋を出た。
あいつが帰るときに連絡が来るのをわかっているから...。
少しの間だけでも2人だけの時間を過ごしても罰はあたらないと思う。
頑張りすぎる弟と、我慢しすぎる弟の恋人のこれからを考えながら俺は煌太へ電話をかけたのだった。
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