ステップアップしてみようか?

槇瀬光琉

文字の大きさ
上 下
23 / 26
step3 頬にキスを

1話

しおりを挟む
「何を朝からむくれてるんだ?」
俺は目の前に座る男に声をかけてみた。
「別に」
短い返事が返ってくるが、その言葉はどう考えても怒っている。そもそも、この男が俺の前でこんなにも怒りを露わにしてるのが初めてなんだが…。

「壬生?なにを怒ってるんだ?」
もう一度、聞いてみればギロって睨まれた。


あー、これはまたかなり怒ってるな。


「壬生、言ってくれなきゃ俺はわからないんだがけどな」
ぽふりと壬生の頭を撫でたらますます、壬生の顔がむくれた。


これはもしかすると、もしかして…


「あー、もう。佐久間って俺の事、絶対に子供扱いしてるよな!世間知らずのお坊っちゃまだからって…っ…もぉ、いい」
壬生はいいかけて結局は言葉に出来ず飲み込んだ。
「そうか、お坊っちゃまはお子ちゃま仕様じゃ気に入らなかったってことなんだなぁ」
顎に手を寄せうーんとか言いながら壬生を見ればうんうんと頷いている。
「なら、じゃぁ、今度はちゃんと年相応に大人な対応をしなきゃいけねぇわけだ」
俺はそういいながら手を伸ばしさりげなく壬生の頬に触れ親指で撫でながらスルリと腰に腕を回し自分の方に引き寄せる。
「へっ?へっ?」
あまりにも突然に俺の態度が変わり目を白黒し始める壬生にニヤリと笑いながら
「お子ちゃまがイヤだってことは、こういうことなんだぜ?」
グッと腰を固定するように抱き締めそのままポカンとしてる壬生の唇に自分のそれを重ねた。意味のわかっていない壬生はポカンとしたままで固まっている。
何度か触れるだけのキスをしてから
「ちゃんと逃げねぇともっとひでぇことしちまうぞ」
頬を撫でてからもう一度、唇を重ねて、そろりと舌を忍び込ませた。
「んっ、ちょっ、ふぅ、ん」
そこまで来てやっと壬生が覚醒して声を上げ始める。ん、まぁ好き勝手、壬生の口内を堪能してから解放してやれば
「なっ、なっ、なっ」
少しだけ荒くなった息のまま何かを言おうとして言葉に出来なくてドンッと俺の胸を叩いた。

「なんだ、気に入らなかったのか?お子ちゃまじゃない対応をしてやったのに。やっぱりお坊っちゃまにはまだ早すぎたか」
殴ったままで、まだ俺の胸元にある手を取り指先に唇を寄せ小さなキスを贈れば
「っ!」
それはもう、ものすごい勢いで引っ込めた。

「委員長、ソロソロやめてあげたらどうですか?」
傍観者に徹してると思った牧野から声がかかって壬生がそれに気が付いてビクって跳び跳ねた。
「あっ、やっ、いたのか…」
俺の影からそろっと覗き込みその存在を確認する。
「えぇ、実は他の子もです」
牧野の言葉を肯定するように頭を掻きながら数名の委員のヤツが出てきた。
「うわぁぁぁ!!」
それを見て壬生は思いっきりしゃがもうとしたが腰をしっかり俺が抱き締めてるからそれは失敗に終わった。
「まったく、委員長も人が悪いですよ。ちゃんと会長にわかるように言ってあげればいいものをこんな回りくどいことして」
呆れ顔で牧野が言うが真っ赤な顔をして俺の胸に顔を隠してる壬生にはその言葉は届いていない。
「この状態で言えると思うか?」
俺は自分の胸元を指差し言えば
「ムリ…ですね」
「だろ?」
深い溜め息を付いて牧野が呟く。
「それ、どう責任とるんですか?」
冷たい目で俺を見る牧野はさすがだなと思う。
「壬生、ソロソロ生徒会室に戻らないとあいつが呼びに来るぞ」
俺がそう声を掛ければ、ばっと顔を上げ
「もしかして俺そんなに長い時間ここにいたのか?」
聞いてくる。
「まぁ、かれこれ30分以上?だな」
時計を見て正確な時間を確認して教えてやれば
「ヤバ!すぐ戻らないと!」
壬生は俺の腕の中から逃げ出して、速攻で風紀委員室を飛び出していった。
「おい、生徒会長が廊下を走るなよー!」
と、出ていった背中に一応の言葉を投げておく。

「いいんですか?あのままなにも言わないままで」
壬生が出ていった後で牧野が聞いてくる。
「ん?俺が頭を撫でてる理由か?」
多分この事だろうと思いながら聞き返せば
「そうですよ」
溜め息混じりに牧野が言う。
「あいつがどこまで俺の言葉を信じると思う?」
だから反対に質問してみた。
「委員長の言葉なら信用すると思いますけどね。あの人の中で信用度は委員長がダントツなんですから」
牧野の言葉に苦笑が浮かぶ。
「あいつにとっての信用度ダントツは風紀委員長としてだろうが」
そう、あの男にとって風紀委員長としての俺は信用度MAXだと言える。が、そうじゃない俺はと聞かれると多分違う。まぁ、本人に聞いた訳じゃないのでなんとも言えないんだがな。
「そうかなぁ?イヤ、だって信用してなきゃあそこでキスされたら殴るなりするはずじゃないのかなぁ?そりゃ、いきなりだったみたいですけど」
会長の性格からしてイヤなときはすぐに抵抗すると思うんだよなぁ。
なんて牧野が言う。確かにあいつの事だからすぐ抵抗するだろう。それがいきなりだったとしても…。

「まぁ、夜部屋に飯を食べに来るからそんときにでも話すさ」
俺はそのとき話し合えば言いかと結論付けた。牧野もそれ以上はなにも言ってこなかったしな。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!

toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」 「すいません……」 ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪ 一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。 作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)

家族になろうか

わこ
BL
金持ち若社長に可愛がられる少年の話。 かつて自サイトに載せていたお話です。 表紙画像はぱくたそ様(www.pakutaso.com)よりお借りしています。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

総長の彼氏が俺にだけ優しい

桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、 関東で最強の暴走族の総長。 みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。 そんな日常を描いた話である。

処理中です...