ステップアップしてみようか?

槇瀬光琉

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step2 ハグをする

11話

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「んっ」
俺が言葉を発する前に腕の中の存在から声がして覗き込めば、目が覚めたのかボーっとしていた。
「わりぃ、うるさかったか?」
うるさくして起こしたなら悪かったなと思い声をかければ

「んん…佐久間ぁ…ヌクヌクで…あったかくて…気持ちぃ…ねぇ…」
なんて寝起きのままボーッとした状態で笑いながら言った。
「そうか。少しは眠れたか?」
薄っすらと目の下に出来てるクマはきっと日頃ちゃんと寝れていないからだろうと思い聞いてみた。

「うん、寝れた」
なんて少しだけはにかんだ笑みを浮かべながら答えてくる。きっと俺以外の奴がこの部屋にいるというのを忘れてるんだろう。

俺と壬生のやり取りをジッと見ながら大樹たちは空気と化していた。まぁ、大樹はニヤニヤしてたがな。


少しずつ頭が覚醒してきたのか壬生は自分で座りなおし、そろっと後ろを見て
「うわぁぁぁぁ!!!」
全部、見られていたことを知り真っ赤な顔をして俺の後ろに隠れた。
「なっ…なんで…教えてくれないんだよぉ…」

なんて、俺の後ろに隠れながら文句を言ってくる。
「イヤ、寝惚けてる顔が可愛いなぁって思ってみてた。ほら、今朝は速攻で飛び起きてたしな」
なんて冗談で言えば
「教えろよ!バカぁ!」
なんて言いながらポカポカと背中を叩く。

「いて、いてぇって。わかった、悪かった、そう怒るな壬生。だけど壬生、今まで経験したことがないことをまた一つ経験できたんだぞ。そこは喜べ」
本当はそんなに力が入ってないから痛くないんだがつい痛いと言ってしまった。
「あっ…本当だ…なんか昨日から色んなこと経験してるかも…」
なんてポカンとしながら昨日から怒涛の如く経験してることを思い出したようだ。

「隙あり!」
俺はそんな壬生を捕まえて脚の間に座らせ後ろから抱き締めて肩に顎を乗せた。
「うわぁぁ」
突然、俺が動いたからビックリして声をあげる。が、自分の前に座る面子を見て固まった。

「なぁ、壬生。昨日あのバカが言った言葉は壬生にとって深く傷付く言葉だったと思う。だけど今、目の前にいる奴らは壬生にあんな言葉を言う奴らか?」
少しだけ抱きしめる腕に力をこめて聞いてみた。
「…っ…ぁ…違う…」
俺の言葉を聞き少しだけ考え小さく答える。

「だろ?不良の中にもちゃんとお前が今までどれだけ努力して、頑張ってきたのかを知ってるヤツもいる。傷付いてるお前を心配してるヤツもいる。それって壬生が今までちゃんと会長としての職務を頑張ってきたからだ。不良だからって排除するんじゃなくて、不良のことも知っていきたいって思って行動してきた壬生の努力の証なんだ。壬生の頑張りがこいつらを動かしたんだぞ。こいつらがこうして、壬生のことを見守ってるのが証拠だ」

あんなバカの言った言葉に惑わされて欲しくない。壬生の頑張りをちゃんと知ってるヤツもいるんだと伝えてやる。

「でもさ、そんな壬生の会長としての頑張りを一番、理解してわかってるのは他の誰でもなく悠久自身なんだよねぇ。なんてったって一番、傍でその様子を見ていたのは風紀委員長である悠久なんだもん」
「確かにぃ。悠久さんだねぇ」
「そうですね、悠久さんが一番、理解してますね」
「だから俺たちもちゃんと会長のことを知ろうと思ったんだし」

俺の言葉に大樹たちがそれぞれの思いを口にする。

「…ぁ…ありがとう…」
その言葉を聞きポツリとお礼を口にする。ポタリポタリと俺の腕を濡らす雫。俺は小さく笑い壬生の頭をそっと撫でた。


「おし、飯にするか。慎と渉はどうする?ここで食ってくか?」
暫くして壬生が落ち着いてから俺が聞けば
「えっ?いいんですか?」
「いいなら食べたいです」
2人は驚いたままで答える。

「あぁ、別に大丈夫だ。よし、そうと決まれば壬生、手伝え」
この際いろんな経験をさせてやろうってことで、俺は壬生を連れてキッチンへと向かった。

「この中から適当に選んでいいぞ」
作り置きが入れてある冷凍庫を指さして言えば
「本当か!」
嬉しそうに言いながら冷凍庫を開けて中身を物色し始めた。

「さ…佐久間…ヤバい…」
なんて言うから
「ん?何がヤバいんだ?」
何がヤバいのか聞けば

「どうしよう、食べたいって思うのが沢山ありすぎる」
なんて、目をキラキラさせて言ってきた。まぁ、お坊ちゃまの家で食べるような料理じゃないからな。
「今からの分と明日の朝の分を取り敢えず決めろ。それになくなってもまた作ってやるから」
俺が頭を撫でて言ってやれば

「うん」
嬉しそうに返事をして選び始めた。こういうところが可愛いと思うんだけどな。

壬生に手伝ってもらいながら準備をして飯を食った後で慎と渉は帰って行った。


「椥ちゃん、俺まだ悠久と話があるから後で迎えに来てねぇ」
なんて大樹が言えば
「わかった。1時間したら迎えに来る」
椥はそう答えて帰って行った。

「あぁ、ほら壬生、忘れ物だ。ちゃんと洗えよ。汗かいたやつだからな。今日はゆっくり休めよ」
壬生の制服の上着とネクタイ。そして濡れたシャツを入れた紙袋を渡し頭を撫でれば
「むーっ、もしかして佐久間は俺を子ども扱いしてるのか?」
なんてちょこりと口を尖らせ不満げに言う。

どうやら頭ばっかり撫でていたのが不満だったらしい。


「そうじゃねぇけど…。じゃぁ次のスッテプだ壬生」
俺は小さく笑い
「おやすみ」
耳元で囁き頬にキスをしてやる。

「なっ…なっ…」
キスをした頬を押さえ真っ赤な顔をして口をパクパクする壬生に
「おやすみ、ゆっくり休めよ」
もう一度おやすみと告げ頭を撫でれば

「ぁ…うん…おやすみ…」
ボソボソと言って帰って行った。


耳まで真っ赤とかホント可愛いな。


まぁ、チェリーには刺激的すぎたかもな。


なんて俺は小さく笑った。


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