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step2 ハグをする
5話
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「わっ!悠久が壬生を襲ってる!!悠久と壬生の濡れ場、見たくないけどみたいぃ!」
泣き疲れて眠った壬生をクッションに凭れ掛けさせる格好で寝せようとしたタイミングで大樹が入ってきた。角度的に俺が壬生を押し倒してるように見えるんだろう。
「黙れバカ。壬生が起きるから静かにしろ」
クッションから落ちないように位置を直しながら冷たく言えば
「だってぇ~、悠久が珍しく他人を部屋に連れ込んでるからぁ~驚いちゃったぁ~」
なんて、いつものおちゃらけた言い方で言ってくる。
「さすがに放置はできないだろ?」
わかってて言うなと思うんだがな。
「椥に聞いたけどやっぱショックだったんだな」
俺たちの傍まで来て壬生の寝顔を見ながら座った。その言葉は不良の頂点に立つ男の言葉。こいつはこいつで、壬生のことはそれなりに認めてるからな。自分たちのことを知りたがる奴なんて滅多にいないからだが…。
「全否定されてればな。ショックだろ」
流れ落ちた雫をそっとタオルで拭いてやる。
「1つ報告があって来たんだけど聞くか?」
いつものおちゃらけた話し方ではなく真面目な話し方。それは不良のトップとして風紀委員長である俺に報告があるという。
「内乱でも起きたか?」
ちろりと大樹の方を見て言えば苦笑が浮かぶ。
「気付いてたのか。最下層で内部紛争が起きた。原因は壬生だ」
最下層で起きた内部紛争を報告してくる。それは俺にどうするかという相談。風紀委員長としてこれをどうするかということ。
「一般生徒に被害がいかないうちは俺は何も言わないが、もし、一般生徒に被害がいった場合は…わかってるよな」
不良同士のケンカなら文句は言わない。そこまで俺は行動を制限してるわけじゃない。だが、一般生徒にまで被害が行くようなら俺が処分するとは前々から告げてあることだ。それが不良と風紀とで交わした約束。悪魔との契約ともいうんだがな。
「了解。ってか悠久は理由を聞いても驚かないんだ」
大樹はそれが不思議だったみたいだ。
「こいつが、最下層の一部の連中に気に入られてるのは知ってるからな」
「えっ?どういうこと?」
俺の言葉に大樹がビックリする。こいつ知らなかったのか。
「俺がただ、壬生と一緒に手を繋いで歩いてるだけだと思ったか?こいつのしたいこと、やりたいことを叶えるのは別に恋愛事だけじゃないぞ?」
そう、俺は壬生がしたいこと、やりたいことを許可、不許可で判断し返事をしていた。その中にはやはり不良たちが関係することも多くあった。勿論、全てが許可できるわけじゃないので、ダメのことはダメだと言い切り、出来ることだけならと言って、許可を出して一緒に行動していたのだ。
たまたま一緒に行動してるときに、生徒たちのケンカに出くわした。それが最下層の連中だった。俺は呆れながらそいつらを見てたんだが、壬生はケンカしてる連中を必死に止めに入った。自分が怖いのを隠しながら。
他の生徒に迷惑になるから、この場所じゃなくて違う場所で、暴力じゃなくて話し合えと恐怖と戦いながら説教したのだ。
その瞳には恐怖で涙が溜まっているのを最下層の連中も気が付き、俺に訴えてきた。どうしようと…。
その後、俺と壬生を交えて変な会議が行われて、ケンカしてたやつらを壬生は両成敗したのだ。どっちも悪い!と。そこから何故か、最下層の数人イヤ、半数は壬生を揶揄いながらも会長として頑張てる姿を認めていたのだ。
その半数は俺の恋人という認識は確実に持ったようだがな…。そこは勘違いなんだがな…。恋人じゃねぇよ。
「マジでかぁ。このお坊ちゃん、そんなことしてたのぉ?悠久も何も言わないから俺は知らなかったよぉ」
俺のざっとの説明で大樹が驚く。
「因みに、こいつ意外にみんなに認められてるぞ。渉や慎もこいつの努力は認めてるしな」
ついでにとばかりに言えば
「あぁ、だからあんとき2人とも微妙な顔してたんだなぁ」
納得とばかりにいう。
「幹部連中は壬生が俺にくっ付いてる理由を説明してるからいいんだが、他のヤツらはマジで俺の恋人って思ってるみたいだからな。だから見定めてるって感じか」
前に一度、個人的に聞かれたことがあった。上層、中層の連中から。訳があって傍にいると伝えたら悪魔に相応しいか見定めると言っていた。イヤ、だから恋人じゃないからな壬生は…。
「ところで悠久、このお坊ちゃんどうすんの?起きそうにないけど」
ムフフと変態笑いをしながら聞いてくる。
「このままにしとけないからな…。一緒に寝るしかないだろ」
溜め息交じりに答えれば
「きゃっ悠久ったら大胆。step2を通り越していきなりベッドインだなんて」
なんてふざけたことを言いやがる。
「お前が変わるか?」
変わりに寝るかと聞けば
「いや、いいです。椥に殺されるんで…」
なんて断りやがった。まぁ、俺が2人にブチ切れて怒鳴ったあの日、2人で話し合ったみたいだからな。
「最下層の件はお前に一任するから、変化があるようなら報告してくれ」
「しばらくは大人しんじゃない?悪魔に歯向かったからねぇ」
俺の言葉に返事をしてさっさと帰っていった。本当に報告しに来ただけかよ。
「さてと、本当にこれをどうするか…」
いつの間にか俺の服をしっかりと掴んでいる手。しょうがないか、と諦め俺は寝ている壬生を起こさないように気を付けながら抱き上げて寝室のベッドへ運び、今夜は一緒に寝ることに決めた。
朝、起きたら楽しみだな。
なんて思いながら…。
泣き疲れて眠った壬生をクッションに凭れ掛けさせる格好で寝せようとしたタイミングで大樹が入ってきた。角度的に俺が壬生を押し倒してるように見えるんだろう。
「黙れバカ。壬生が起きるから静かにしろ」
クッションから落ちないように位置を直しながら冷たく言えば
「だってぇ~、悠久が珍しく他人を部屋に連れ込んでるからぁ~驚いちゃったぁ~」
なんて、いつものおちゃらけた言い方で言ってくる。
「さすがに放置はできないだろ?」
わかってて言うなと思うんだがな。
「椥に聞いたけどやっぱショックだったんだな」
俺たちの傍まで来て壬生の寝顔を見ながら座った。その言葉は不良の頂点に立つ男の言葉。こいつはこいつで、壬生のことはそれなりに認めてるからな。自分たちのことを知りたがる奴なんて滅多にいないからだが…。
「全否定されてればな。ショックだろ」
流れ落ちた雫をそっとタオルで拭いてやる。
「1つ報告があって来たんだけど聞くか?」
いつものおちゃらけた話し方ではなく真面目な話し方。それは不良のトップとして風紀委員長である俺に報告があるという。
「内乱でも起きたか?」
ちろりと大樹の方を見て言えば苦笑が浮かぶ。
「気付いてたのか。最下層で内部紛争が起きた。原因は壬生だ」
最下層で起きた内部紛争を報告してくる。それは俺にどうするかという相談。風紀委員長としてこれをどうするかということ。
「一般生徒に被害がいかないうちは俺は何も言わないが、もし、一般生徒に被害がいった場合は…わかってるよな」
不良同士のケンカなら文句は言わない。そこまで俺は行動を制限してるわけじゃない。だが、一般生徒にまで被害が行くようなら俺が処分するとは前々から告げてあることだ。それが不良と風紀とで交わした約束。悪魔との契約ともいうんだがな。
「了解。ってか悠久は理由を聞いても驚かないんだ」
大樹はそれが不思議だったみたいだ。
「こいつが、最下層の一部の連中に気に入られてるのは知ってるからな」
「えっ?どういうこと?」
俺の言葉に大樹がビックリする。こいつ知らなかったのか。
「俺がただ、壬生と一緒に手を繋いで歩いてるだけだと思ったか?こいつのしたいこと、やりたいことを叶えるのは別に恋愛事だけじゃないぞ?」
そう、俺は壬生がしたいこと、やりたいことを許可、不許可で判断し返事をしていた。その中にはやはり不良たちが関係することも多くあった。勿論、全てが許可できるわけじゃないので、ダメのことはダメだと言い切り、出来ることだけならと言って、許可を出して一緒に行動していたのだ。
たまたま一緒に行動してるときに、生徒たちのケンカに出くわした。それが最下層の連中だった。俺は呆れながらそいつらを見てたんだが、壬生はケンカしてる連中を必死に止めに入った。自分が怖いのを隠しながら。
他の生徒に迷惑になるから、この場所じゃなくて違う場所で、暴力じゃなくて話し合えと恐怖と戦いながら説教したのだ。
その瞳には恐怖で涙が溜まっているのを最下層の連中も気が付き、俺に訴えてきた。どうしようと…。
その後、俺と壬生を交えて変な会議が行われて、ケンカしてたやつらを壬生は両成敗したのだ。どっちも悪い!と。そこから何故か、最下層の数人イヤ、半数は壬生を揶揄いながらも会長として頑張てる姿を認めていたのだ。
その半数は俺の恋人という認識は確実に持ったようだがな…。そこは勘違いなんだがな…。恋人じゃねぇよ。
「マジでかぁ。このお坊ちゃん、そんなことしてたのぉ?悠久も何も言わないから俺は知らなかったよぉ」
俺のざっとの説明で大樹が驚く。
「因みに、こいつ意外にみんなに認められてるぞ。渉や慎もこいつの努力は認めてるしな」
ついでにとばかりに言えば
「あぁ、だからあんとき2人とも微妙な顔してたんだなぁ」
納得とばかりにいう。
「幹部連中は壬生が俺にくっ付いてる理由を説明してるからいいんだが、他のヤツらはマジで俺の恋人って思ってるみたいだからな。だから見定めてるって感じか」
前に一度、個人的に聞かれたことがあった。上層、中層の連中から。訳があって傍にいると伝えたら悪魔に相応しいか見定めると言っていた。イヤ、だから恋人じゃないからな壬生は…。
「ところで悠久、このお坊ちゃんどうすんの?起きそうにないけど」
ムフフと変態笑いをしながら聞いてくる。
「このままにしとけないからな…。一緒に寝るしかないだろ」
溜め息交じりに答えれば
「きゃっ悠久ったら大胆。step2を通り越していきなりベッドインだなんて」
なんてふざけたことを言いやがる。
「お前が変わるか?」
変わりに寝るかと聞けば
「いや、いいです。椥に殺されるんで…」
なんて断りやがった。まぁ、俺が2人にブチ切れて怒鳴ったあの日、2人で話し合ったみたいだからな。
「最下層の件はお前に一任するから、変化があるようなら報告してくれ」
「しばらくは大人しんじゃない?悪魔に歯向かったからねぇ」
俺の言葉に返事をしてさっさと帰っていった。本当に報告しに来ただけかよ。
「さてと、本当にこれをどうするか…」
いつの間にか俺の服をしっかりと掴んでいる手。しょうがないか、と諦め俺は寝ている壬生を起こさないように気を付けながら抱き上げて寝室のベッドへ運び、今夜は一緒に寝ることに決めた。
朝、起きたら楽しみだな。
なんて思いながら…。
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