ステップアップしてみようか?

槇瀬光琉

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step1 手を繋ごう

9話

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壬生を連れて、大樹の所に行ったらなんだか修羅場に遭遇した。


おいおいおい。この二人はまだやりあってんのか?


「だから落ち着けって」
大樹が一生懸命、落ち着かせようとしてるが
「うっさい。どう言い訳するんだよ!」
椥が余計に怒り出す。


これはまたあいつが誤解するようなことをしたな。


「だからあれはただ悠久に引き渡すためだって言っただろ!」
大樹の口から俺の名前が出たのは驚いたが、言い争いの原因が壬生だなと直感的に思った。

「嘘つき!本当は違うヤツと付き合ってんだろ!だったら別れろよ!俺と!」
あーあ。椥のヤツ完全に誤解してやがる。

「なぁ、佐久間あれいのか?」
隣にいた壬生が口を開いた。その瞬間、2人が一斉にこっちを見た。

「ほら、やっぱりあいつと付き合ってんじゃん!じゃなきゃこんなところまで来ないだろ!」
壬生を見ながら椥が言いはなつ。
「だから違うって、誤解だって言ってるだろ!」
本当…毎度毎度よくこんなケンカができるな。

「なぁ…俺は長谷部とはそんな関係じゃないぞ?」
壬生が椥に対してそう説明をする。


壬生、頼むから火に油を注ぐようなことは言わないでくれ。


「うっさい、あんたには聞いてない!」
案の定、椥が壬生に向かって怒鳴る。
「あっ…ごめん」
怒鳴られた壬生は小さく謝って俺の後ろに隠れた。

「椥、お前、壬生に八つ当たりするな」
大樹がいうがそれはかえって油を注ぐようなものだ。
「なんだよ!やっぱりあいつの方が大事なんじゃないか!」
椥が壬生を、今は俺の後ろに隠れてるから俺を指差す。

「だから、お前一旦落ちつけや」
大樹が落ち着かせようとするが、椥は聞く耳を持たない。


「壬生わりぃ、ちょっとここで待っててくれ」
後ろに隠れてる壬生と向き合い告げれば戸惑いながらも小さく頷いた。
俺はそんな壬生の頭を撫でるとまだ痴話喧嘩をしてるバカ2人に向き合った。

「てめぇらいい加減にしやがれ!!!」
俺の怒号で2人がびくりと身体を振るわせ恐る恐る俺を見る。
そしてヒッと小さく悲鳴を上げた。

「大樹、俺はお前に言ったよな?俺を出動させるようなケンカはするんじゃねぇって」
「は…はい。いいました」
俺の言葉にボソボソと答える。
「椥お前もだ。相手の話をちゃんと聞けって言ったよなぁ?」
「は…はい。言いました。すみません」
こっちもボソボソと答える。

「じゃぁ、これはなんだ。あぁ?てめぇらは全然、人の話を聞いてねぇじゃねぇか!」
「ご…ごめんなさい!」
「すみません!」
2人に対して怒鳴れば、2人は小さくなりながら謝る。

「それと椥お前が見たこいつは迷子になった会長様だ。その会長様が最下層に行きそうになったのを大樹が拾って俺に連絡したんだ。わかるか?あぁ?」
「は…はい」
俺の言葉に椥は縮こまりながら返事をする。
「大体てめぇは学習しろ大樹!椥がこんだけ疑心暗鬼になってんのはてめぇのせいだろうが!」
「イヤ、それは…反省します」
反論しかけたが自分が悪いとわかってるので素直に謝る。

俺が次の言葉を発する前にオズオズと制服を掴まれた。
「どうした?」
制服を掴んでいるのが誰かわかってるので振り返って聞けば、うっすらと目に涙を溜めた壬生が口をパクパクさせていた。

「ん?どうした壬生?」
もう一度、普段、壬生に話しかける口調で聞けば
「…めん…ごめんなさい…」
と小さく謝ってきた。


あー、これはあれだ。壬生のトラウマでも刺激したかもしんねぇ。


「わりぃ、怖かったのか?」
壬生の頭を撫でながら聞けばコクリと頷く。
「そっかわりぃ。でもな壬生この場所はこんな奴らばっかりだ。だからあぶねぇから近づくなって言ったんだ。わかるだろ?」
俺は謝りながらもこの場所がどれだけ危険な場所なのかをもう一度説明する。
壬生は何かを言おうとして口を開いたが何も言わずそのまま頷いた。


「取り敢えず、あのバカ2人をなんとかするからもう少し我慢しろ」
もう一度、頭を撫でて言えば頷く。俺はそんな壬生を怖がらせないように腕の中に抱き締めて2人に向き合った。


「てめぇらが痴話喧嘩するたびに回りが迷惑してるって気づけバカどもが。あいつらから毎回俺んとこに苦情がくんだぞ!てめぇらは2人揃って学習しやがれ!」
俺がキツい言葉で怒鳴るたびに腕の中にいる壬生がビクビクと身体を振るわせる。下手をしたらこのまま泣き出すかもしれない。そう思えた。


「壬生もう終わったから大丈夫だ。悪かったな怖がらせて」
腕の中にいる壬生を覗き込めば溢れだしそうなぐらいに涙を溜めていた。


「あー、ごめんな。壬生が会長としての仕事を全うしたい気持ちはわかる。だけど、この場所だけはヤメロ。じゃないとお前がもっと怖い思いするからな」
ポケットから取り出したハンカチで目元を押さえればポロリと流れ落ちた。
「…あんな…佐久間…ヤダ…怖かった…」
ポツリと言われた言葉には苦笑するしかなかった。


「ごめん、ごめん、壬生もう大丈夫。壬生の前じゃ悠久はこんな怖いヤツにならないからなっ?何時もの悠久は壬生に優しいだろ?」
「えっと、会長ごめん。俺も酷いこと言って。もう、大丈夫だから、悠久さん怒んないからね」
壬生の様子を見た大樹と椥も慰めにはいった。


元々も原因はお前らなんだけどな。


「2人はもぉ…ケンカしない…か?」
2人のことも気にはなってたようだ。
「えっ?あっ、しないしない。大丈夫」
「うん、大丈夫」
壬生に言われて慌てて2人は返事する。まさか自分達のことも言われるとは思ってないだろうからな。


「佐久間…もう…戻る。もうここはいい」
少しだけ沈んだ顔で帰ると言い出す壬生に苦笑しか浮かばない。


まぁ、怖がらせたのは間違いなく俺だからな。


だからこそ気が付いてくれ。俺が悪魔だといわれてる理由を…。



「わかった。生徒会室まで送ろう」
俺の言葉に頷き戻るために歩き始めた。


俺は小さく溜め息をつきその後を追ったがふと思いつたことを実行するべく壬生を後ろから抱き締めた。


「えっ?ちょ、佐久間?」
ビックリして変な声をあげる壬生に
「次のステップだ壬生。ハグをしよう」
次のステップに進むと告げれば
「えっ?本当か?」
驚きながらも少し嬉しそうに聞いてくる。
「あぁ、まずは後ろからだな」
俺の言葉にコクリと頷いた。


少しだけ沈んでいた顔が嬉しそうな顔になる。


今度から怖がらせないように気を付けとかないとな…





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