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step1 手を繋ごう
4話
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壬生が行方不明になった関係でやりかけだった書類を完成させるべく作業を開始してどれだけの時間がたったのか?
「委員長、少しいいですか?」
牧野が遠慮がちに声をかけてきて俺は顔を上げた。
「どうした?急用か?」
牧野に聞けば苦笑を浮かべ
「先ほどから会長が待ってます」
部屋の隅の方で座る壬生を指さした。
「はっ?なんで?」
いや、来てることに気が付かいほど俺は集中してたのか?
「どうも生徒会の方が終わってしまったらしくて…」
牧野が説明をしてくれる。その説明を聞き時計を見れば4時をとっくに回っていた。
今週は5時までに帰るという学校側からの御触れが出てるのを思い出した。
「すまん、みんな。今週は早く帰らないといけない週だった。作業を終えて俺たちも帰るぞ」
俺は慌ててみんなが帰れるように作業を終えるように告げる。勿論、外回りをしてる連中にもその旨を伝えるメールを一斉送信した。
結局みんなを慌てさせる形になったが、何とか無事に全員早めに帰らせることができた。
委員会のやつら全員を帰らせてから壬生と向き合った。
「すまんな壬生。どうしたんだ?声をかけてくれればよかったんだが…」
いまだに部屋の隅で座っている壬生に声をかければ何か言いたげな顔で見るだけで、言葉に詰まっているようだった。だが、いつまでもこの場所に留まるわけにはいかないので
「取り合えず出よう」
壬生を立たせ部屋から出るように促せば小さく頷き従った。
二人で部屋を出てふとしたことを思いつき壬生に手を差し出し
「手を繋いで帰るか?」
聞いてみた。そしたら嬉しそうな顔をして頷く。
手を繋ぐから始めようといったんだ、きっと手を繋いで学校から帰るというのを体験してみたかったのか?という答えに行きついた。
恋人同士なら普通にそういう流れになってもおかしくはない。が、俺と壬生はそういうわけじゃない。
俺から行動にしてやらないと壬生は思ってるだけで実行できないんだろう。いくら、してみたいと思っても…。
「なら、繋いで寮まで帰ろう」
壬生に差し出した手を違う形に変えてもう一度、言えばそっと遠慮がちに手を重ねてきた。俺はその手を少しだけ強く握ってやる。少し躊躇いながらもおずおずと同じように握り返してきた。
「壬生、カバン」
壬生に言えば
「カバン?」
意味が分からなくて聞き返してきた。
「そうカバン貸してくれ」
もう一度言えば不思議そうな顔をしながらカバンを差し出してくるから俺はそれを受け取り、自分の分と一緒に持つ。
「さ…佐久間??」
意味が分からないという顔で俺を呼ぶ。
「こういうのも経験してみたいんじゃないか?」
恋人ごっこじゃないけれど、きっと壬生はこういうのも経験してみたかったんじゃないかなと思った。
「んっ、思った…」
壬生は少し俯きながらも素直に返事をする。
ん、どうやらこのお坊ちゃまは本当にいろんなことを経験してみたいようだ。
それこそ俺が思ってる以上のことを…。
「じゃぁ、壬生がしたいと思うことを俺に一つずつ教えてくれ。それに応えてやれるように努力は俺もしていくから」
壬生の手を引き歩き出しながら提案してやれば
「い、いいのか?」
壬生が聞き返してきた。
「やれること、やれないこと、はあると思うが、こうやってスッテプアップしていく手伝いをしてやるんだ、それに追加していくのも楽しみが増えるだろ?」
「うん、ありがとう」
壬生は本当に嬉しそうに返事をする。
こう考えると、この男はよっぽど自分がしたいと思うことを、ことごとくダメだと抑えつけられていたんだろう。家出をせん勢いでこの学園に入学してくるぐらいには…。
「取り敢えずは、今日は寮までこうやって帰ろう」
壬生の方を見て小さく笑って言ってやれば
「うん、佐久間ありがとう」
本当に嬉しそうに笑った。
少しだけ薄暗くなった道を二人で手を繋ぎ他愛もない会話をしながら寮まで帰ったのだった。
「委員長、少しいいですか?」
牧野が遠慮がちに声をかけてきて俺は顔を上げた。
「どうした?急用か?」
牧野に聞けば苦笑を浮かべ
「先ほどから会長が待ってます」
部屋の隅の方で座る壬生を指さした。
「はっ?なんで?」
いや、来てることに気が付かいほど俺は集中してたのか?
「どうも生徒会の方が終わってしまったらしくて…」
牧野が説明をしてくれる。その説明を聞き時計を見れば4時をとっくに回っていた。
今週は5時までに帰るという学校側からの御触れが出てるのを思い出した。
「すまん、みんな。今週は早く帰らないといけない週だった。作業を終えて俺たちも帰るぞ」
俺は慌ててみんなが帰れるように作業を終えるように告げる。勿論、外回りをしてる連中にもその旨を伝えるメールを一斉送信した。
結局みんなを慌てさせる形になったが、何とか無事に全員早めに帰らせることができた。
委員会のやつら全員を帰らせてから壬生と向き合った。
「すまんな壬生。どうしたんだ?声をかけてくれればよかったんだが…」
いまだに部屋の隅で座っている壬生に声をかければ何か言いたげな顔で見るだけで、言葉に詰まっているようだった。だが、いつまでもこの場所に留まるわけにはいかないので
「取り合えず出よう」
壬生を立たせ部屋から出るように促せば小さく頷き従った。
二人で部屋を出てふとしたことを思いつき壬生に手を差し出し
「手を繋いで帰るか?」
聞いてみた。そしたら嬉しそうな顔をして頷く。
手を繋ぐから始めようといったんだ、きっと手を繋いで学校から帰るというのを体験してみたかったのか?という答えに行きついた。
恋人同士なら普通にそういう流れになってもおかしくはない。が、俺と壬生はそういうわけじゃない。
俺から行動にしてやらないと壬生は思ってるだけで実行できないんだろう。いくら、してみたいと思っても…。
「なら、繋いで寮まで帰ろう」
壬生に差し出した手を違う形に変えてもう一度、言えばそっと遠慮がちに手を重ねてきた。俺はその手を少しだけ強く握ってやる。少し躊躇いながらもおずおずと同じように握り返してきた。
「壬生、カバン」
壬生に言えば
「カバン?」
意味が分からなくて聞き返してきた。
「そうカバン貸してくれ」
もう一度言えば不思議そうな顔をしながらカバンを差し出してくるから俺はそれを受け取り、自分の分と一緒に持つ。
「さ…佐久間??」
意味が分からないという顔で俺を呼ぶ。
「こういうのも経験してみたいんじゃないか?」
恋人ごっこじゃないけれど、きっと壬生はこういうのも経験してみたかったんじゃないかなと思った。
「んっ、思った…」
壬生は少し俯きながらも素直に返事をする。
ん、どうやらこのお坊ちゃまは本当にいろんなことを経験してみたいようだ。
それこそ俺が思ってる以上のことを…。
「じゃぁ、壬生がしたいと思うことを俺に一つずつ教えてくれ。それに応えてやれるように努力は俺もしていくから」
壬生の手を引き歩き出しながら提案してやれば
「い、いいのか?」
壬生が聞き返してきた。
「やれること、やれないこと、はあると思うが、こうやってスッテプアップしていく手伝いをしてやるんだ、それに追加していくのも楽しみが増えるだろ?」
「うん、ありがとう」
壬生は本当に嬉しそうに返事をする。
こう考えると、この男はよっぽど自分がしたいと思うことを、ことごとくダメだと抑えつけられていたんだろう。家出をせん勢いでこの学園に入学してくるぐらいには…。
「取り敢えずは、今日は寮までこうやって帰ろう」
壬生の方を見て小さく笑って言ってやれば
「うん、佐久間ありがとう」
本当に嬉しそうに笑った。
少しだけ薄暗くなった道を二人で手を繋ぎ他愛もない会話をしながら寮まで帰ったのだった。
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