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step1 手を繋ごう
1話
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壬生の手を繋いだまま生徒会室の前まで来て少し考える。
こいつとちゃんと話した方がいいんじゃないかと。
「なぁ壬生。少し話をしないか?」
俺がそう声をかけるとキョトリとした顔をして俺を見返す。なんだろうな、こいつのキョトリ顔は小動物を連想させるほどの可愛さがある。
「さっきは大樹の勢いもあったからな。だから少し本気で話さないか?」
もう一度、ちゃんと確認がしたいと思った。俺の言葉にコクリと小さく頷く。
「中で話そう」
俺は生徒会室の扉を開けて壬生に中に入るように促せば
「み…壬生会長~どこに行ってらしたんですか!本当に心配したんですからね!」
稲生が泣きそうな顔で壬生に詰め寄る。
「ごめん。ちょっとこれから佐久間と話があるから奥の部屋には近づくなよ」
壬生はそう告げると繋いだままの手を引き俺を連れて奥の部屋へと入る。扉の外で稲生が何かを叫んではいたが今は無視しておこう。部屋の中に入ってお互い向き合う形で椅子に座り繋いでいた手を離した。
「さて、まずはなんであの場所に行ったんだ?」
前々からあの危険な場所には絶対に近づくなといっておいたのだ。
「えっと…初めはあそこに行くつもりはなかったんだ。フラフラっと歩いてたら迷子になって…あの場所に行っちゃったんだ。行きついたのがあの場所だってわかって、色々と気になったんだ」
理由を聞いて驚いた。どこを歩いて行ったら迷子になるんだろうか?
「じゃぁ、今回のはわざとじゃないんだな?」
もう一度確認の意味を込めて聞けばコクコクと何度も頷く。
「わかった。それに関しては今回はお咎めなしとしよう」
俺の言葉に壬生がホッとした顔になる。
「じゃぁ、本題に入ろう。壬生は本当にいいのか?」
さっきは大樹も傍にいたし、もしかしたら本当のことを言えなかったかもしれない。
「本当にいいのかって?」
反対に聞き返された。
「だから、さっき大樹も言っただろ?ステップアップするということは、手を繋ぐだけじゃない、キスしたり、抱き合ったりすることもある。本当に壬生はそれでもいいのか?好奇心だけでするもんじゃないと俺は思うんだが?」
あの場所のノリで言ったのなら後々後悔する。そうならない為にもちゃんと考えてほしいと思った。
この学園は男ばかりだ。思春期の男が集まった閉鎖された空間だ。そんな閉鎖された空間はやりたい放題するやつらだっている。それこそ、最下層と言われる不良の集団だっている。カツアゲ、暴力そんなものは日常茶飯事だ。教師たちですら管理できない場合もある。最近はあいつらをうまく抑え込んでいられるから大人しくなった方だが…。
男しかいないこの空間で解消できな欲望を同じ男に向けて発散する奴らもいるわけで…。それこそ性的暴行に発展するものも少なくはない。
同じ男に惚れるということだってある。お互いが好きならそれはそれで問題はないが一方的な気持ちを押し付ける奴らもいる。
そういうのを色々とみてきた俺だからこそ壬生にはちゃんと考えてほしかったのだ。
勿論、お坊ちゃまということで、家に縛られ自由にしてこれなかった壬生が親の反対を押し切ってこの学園に入学してきた気持ちもわかる。知識だけは人一倍あって、自分でも経験したいと思う気持ちもわかる。だからこそ、よく考えてほしかった。
相手がろくでもない俺でもいいのかと。まぁ、自分で言うのもなんだが、俺も大樹と変わらないぐらいの悪党なのは自覚がある。前期風紀委員長と前期生徒会長に頼み込まれてこの地位にいるだけで、俺自身は大樹よりも悪だ。
「…佐久間は…俺が相手だと…ダメなのか?」
情けないほどに眉を下げた壬生が聞いてくる。
「壬生が相手じゃダメだとか、いいとかっていう意味じゃなくて、壬生は本当に知っていきたいのか?」
別に俺は壬生のことが嫌いなわけじゃない。かと言って恋愛対象で好きというわけでもない。結局はどっちつかずの感情だ。だから、本気になるかわからない状態だが、色んなことを経験したいというなら、それを手伝うことはできる。まぁ、現に今の俺は恋人がいるわけでも、好きなやつがいるわけでもない。フリーな状態だからな。
俺の言葉に押し黙り壬生は真剣に考え始める。
こいつは頭もいいから俺がどういう意味で確認してるのかがなんとなくわかったんだろうな。
「俺は確かに知識だけはある。知識だけで経験なんてない。経験できないなら知識なんて当てにならないじゃないか…」
ポツリポツリと言い始める壬生の声は少し震えていた。
「俺は…色んなことを知りたいし、経験もしたい。恋愛だってしてみたいと思う。でも…経験だって恋愛だって…相手がいなきゃできない」
話すうちに下を向いてしまう。確かに知識だけあっても役に立たないときもあるからな。
「それで…壬生にとってそういう経験をしたいと思う相手が他にもいるかもしれないんだぞ?」
そう、あの場所のノリで言った言葉を実行するだけが選択肢ではない。
「それはわかってる。…でも…今の俺は佐久間と一緒にスッテプアップしてみたいと思ってる。佐久間ならちゃんと俺に教えてくれるんじゃないかなって…俺が勝手に思ってる」
ジッと俺の目を見て言う壬生の身体は少しだけ震えていた。
「わかった。じゃぁ、こうしよう。壬生が本当に嫌だ、止めたいと思う時まで俺が付き合おう。壬生がしたいと思うことを経験する手助けをしよう。それでいいか?」
先のことなんてわかるわけがないんだ。だったら今を楽しめばいい。壬生が納得するまで付き合ってやればいい。
俺の言葉にコクリと頷く。
「じゃぁ、これは交換条件だ、俺が壬生のしたいことに付き合う代わりに、壬生は勝手に一人でどっかに行かずに行きたいと思ったときは必ず俺を呼べ。護衛も兼ねて付き合ってやるから」
必要最低限の条件は掲示しておこう。
「わかったそれでいい」
壬生は意外にすんなりと納得した。
「じゃぁ、しばらくはステップ1手を繋ぐだな。その先のスッテプに進むにはまず段階を踏んでいこう」
俺はもう一度、壬生に手を差し出せば何の抵抗もなく俺の手を握ってきた。
「よ…よろしくお願いします…」
少し上ずった声で言われた。
「こちらこそよろしく」
そんな壬生の頭を撫でて小さく笑った。
こいつとちゃんと話した方がいいんじゃないかと。
「なぁ壬生。少し話をしないか?」
俺がそう声をかけるとキョトリとした顔をして俺を見返す。なんだろうな、こいつのキョトリ顔は小動物を連想させるほどの可愛さがある。
「さっきは大樹の勢いもあったからな。だから少し本気で話さないか?」
もう一度、ちゃんと確認がしたいと思った。俺の言葉にコクリと小さく頷く。
「中で話そう」
俺は生徒会室の扉を開けて壬生に中に入るように促せば
「み…壬生会長~どこに行ってらしたんですか!本当に心配したんですからね!」
稲生が泣きそうな顔で壬生に詰め寄る。
「ごめん。ちょっとこれから佐久間と話があるから奥の部屋には近づくなよ」
壬生はそう告げると繋いだままの手を引き俺を連れて奥の部屋へと入る。扉の外で稲生が何かを叫んではいたが今は無視しておこう。部屋の中に入ってお互い向き合う形で椅子に座り繋いでいた手を離した。
「さて、まずはなんであの場所に行ったんだ?」
前々からあの危険な場所には絶対に近づくなといっておいたのだ。
「えっと…初めはあそこに行くつもりはなかったんだ。フラフラっと歩いてたら迷子になって…あの場所に行っちゃったんだ。行きついたのがあの場所だってわかって、色々と気になったんだ」
理由を聞いて驚いた。どこを歩いて行ったら迷子になるんだろうか?
「じゃぁ、今回のはわざとじゃないんだな?」
もう一度確認の意味を込めて聞けばコクコクと何度も頷く。
「わかった。それに関しては今回はお咎めなしとしよう」
俺の言葉に壬生がホッとした顔になる。
「じゃぁ、本題に入ろう。壬生は本当にいいのか?」
さっきは大樹も傍にいたし、もしかしたら本当のことを言えなかったかもしれない。
「本当にいいのかって?」
反対に聞き返された。
「だから、さっき大樹も言っただろ?ステップアップするということは、手を繋ぐだけじゃない、キスしたり、抱き合ったりすることもある。本当に壬生はそれでもいいのか?好奇心だけでするもんじゃないと俺は思うんだが?」
あの場所のノリで言ったのなら後々後悔する。そうならない為にもちゃんと考えてほしいと思った。
この学園は男ばかりだ。思春期の男が集まった閉鎖された空間だ。そんな閉鎖された空間はやりたい放題するやつらだっている。それこそ、最下層と言われる不良の集団だっている。カツアゲ、暴力そんなものは日常茶飯事だ。教師たちですら管理できない場合もある。最近はあいつらをうまく抑え込んでいられるから大人しくなった方だが…。
男しかいないこの空間で解消できな欲望を同じ男に向けて発散する奴らもいるわけで…。それこそ性的暴行に発展するものも少なくはない。
同じ男に惚れるということだってある。お互いが好きならそれはそれで問題はないが一方的な気持ちを押し付ける奴らもいる。
そういうのを色々とみてきた俺だからこそ壬生にはちゃんと考えてほしかったのだ。
勿論、お坊ちゃまということで、家に縛られ自由にしてこれなかった壬生が親の反対を押し切ってこの学園に入学してきた気持ちもわかる。知識だけは人一倍あって、自分でも経験したいと思う気持ちもわかる。だからこそ、よく考えてほしかった。
相手がろくでもない俺でもいいのかと。まぁ、自分で言うのもなんだが、俺も大樹と変わらないぐらいの悪党なのは自覚がある。前期風紀委員長と前期生徒会長に頼み込まれてこの地位にいるだけで、俺自身は大樹よりも悪だ。
「…佐久間は…俺が相手だと…ダメなのか?」
情けないほどに眉を下げた壬生が聞いてくる。
「壬生が相手じゃダメだとか、いいとかっていう意味じゃなくて、壬生は本当に知っていきたいのか?」
別に俺は壬生のことが嫌いなわけじゃない。かと言って恋愛対象で好きというわけでもない。結局はどっちつかずの感情だ。だから、本気になるかわからない状態だが、色んなことを経験したいというなら、それを手伝うことはできる。まぁ、現に今の俺は恋人がいるわけでも、好きなやつがいるわけでもない。フリーな状態だからな。
俺の言葉に押し黙り壬生は真剣に考え始める。
こいつは頭もいいから俺がどういう意味で確認してるのかがなんとなくわかったんだろうな。
「俺は確かに知識だけはある。知識だけで経験なんてない。経験できないなら知識なんて当てにならないじゃないか…」
ポツリポツリと言い始める壬生の声は少し震えていた。
「俺は…色んなことを知りたいし、経験もしたい。恋愛だってしてみたいと思う。でも…経験だって恋愛だって…相手がいなきゃできない」
話すうちに下を向いてしまう。確かに知識だけあっても役に立たないときもあるからな。
「それで…壬生にとってそういう経験をしたいと思う相手が他にもいるかもしれないんだぞ?」
そう、あの場所のノリで言った言葉を実行するだけが選択肢ではない。
「それはわかってる。…でも…今の俺は佐久間と一緒にスッテプアップしてみたいと思ってる。佐久間ならちゃんと俺に教えてくれるんじゃないかなって…俺が勝手に思ってる」
ジッと俺の目を見て言う壬生の身体は少しだけ震えていた。
「わかった。じゃぁ、こうしよう。壬生が本当に嫌だ、止めたいと思う時まで俺が付き合おう。壬生がしたいと思うことを経験する手助けをしよう。それでいいか?」
先のことなんてわかるわけがないんだ。だったら今を楽しめばいい。壬生が納得するまで付き合ってやればいい。
俺の言葉にコクリと頷く。
「じゃぁ、これは交換条件だ、俺が壬生のしたいことに付き合う代わりに、壬生は勝手に一人でどっかに行かずに行きたいと思ったときは必ず俺を呼べ。護衛も兼ねて付き合ってやるから」
必要最低限の条件は掲示しておこう。
「わかったそれでいい」
壬生は意外にすんなりと納得した。
「じゃぁ、しばらくはステップ1手を繋ぐだな。その先のスッテプに進むにはまず段階を踏んでいこう」
俺はもう一度、壬生に手を差し出せば何の抵抗もなく俺の手を握ってきた。
「よ…よろしくお願いします…」
少し上ずった声で言われた。
「こちらこそよろしく」
そんな壬生の頭を撫でて小さく笑った。
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