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プロローグ
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静寂な室内にけたたましく鳴り響く電話。
「俺だ、どうした?」
書類整理をしていた手を止め電話に出れば
『佐久間委員長すみません。か…会長が…壬生会長が行方不明になってしまいました』
切羽詰まった声で言われる言葉にクラリと眩暈がする。
「稲生副会長…毎度、毎度、同じ言葉を何度言わせれば気が済むんだ?あいつに鎖をつけておけと…」
次に言われるであろう言葉がわかる分だけ憂鬱になる。
『すみません、これでもちゃんと監視してたんです。それがちょっと目を離したすきに…。ほんの1,2分程度ですよ』
半泣き状態で説明してくるのも毎度のことなのでイヤになる。
「わかった。あのバカを探す。普通に戻ってきたら連絡してくれ」
一方的に返事をして通話を終えて席を立ちあがれば、待ってましたと言わんばかりに違う着信が来る。
「なんだ?今お前にかまってる暇じゃねぇんだよ」
受話器の向こう側の人物に少しだけイラつきながら言えば
『そう怒んなって。お前んところの姫を預かってんだ。お前がいらねぇなら捨てるぞ』
笑みを含んだ声で言われ
「はっ?」
変な声が出た。
『お前んとこの坊ちゃま会長をこっちで保護してるっての。いらねぇならこのまま捨てるぞ』
「保護ってどういうことだ?」
部屋の出口に向かいながら事情を聴けば
『一番危険な最下層に行きそうだった所を偶然見かけて捕まえた』
その言葉にクラリと眩暈がする。
「あのクソば会長が!あれほど行くなと言ったのに!今からそっちに行くから捕まえてろ」
半ば怒ったままでいえば
『逃げ出す前に早くなぁ~』
なんて暢気な言葉が飛んできて危うく携帯を握り潰すところだった。
「よぉ、早かったな」
目的の場所へ着いた俺に暢気な声で言ってくるこの男は幼馴染でこの学園に君臨する不良のトップである長谷部大樹だ。
「なんでお前ん所にいるんだよこいつは…」
キョトリとした顔で俺を見つめる男を指さして言えば
「だからさっきも言っただろ?最下層に行きそうだったから捕まえたって」
平然と言いのけてくれる。そもそも最下層というのは不良の中でも一番の下っ端で、尚且つ何をやらかすかわからない荒くれ者たちのいる場所だ。下っ端だからこそ血の気も多く、好奇心だらけの会長が行けばいい獲物で、それこそ殴る蹴るの暴力だけじゃなく、性的暴行にまで発展しかねない。
この会長はお坊ちゃまで知識こそは莫大に入ってるが、実務経験が全くなく、興味を持ったものはなんでもやってみたがるというとんでもない男だ。
恋愛事はもとより性的なことまでやってことがないチェリーなのだ。そんな男が初っ端から暴行で失うというのは流石に可哀そうである。
「で?バ会長さんはなんでこんな場所に来た」
いまだにキョトリ顔の会長に向き合ってみれば
「ん?気になったから。ここの奴らがどんな奴らなのか?みんなが避けてる理由とか?」
などと言ってのける。気になったというのは事実なんだろう。
「避けてる理由は不良だからだ。喧嘩を吹っ掛けられたり、カツアゲされたり、性的暴行も行われたりするからな」
俺の代わりに大樹が説明をする。
「暴行って…犯罪じゃないか…」
大樹の言葉を聞き眉間に皺を寄せる。お坊ちゃまだが頭がいいし、知識も豊富だからこの場所がどれだけ危険かは安易に想像はできたんだろう。
「チェリーな会長様の貞操が暴行で奪われるところを助けられたってわけだ」
俺が溜め息交じりに言えば
「チェ…チェリーって…貞操って…」
悔し気に俺を睨みつけてくる。
「へぇ~チェリーねぇ。じゃぁ、悠久が教えてやればいいじゃん」
などと大樹がとんでもないことを言い放つ。
「本当か!」
その言葉にバ会長がくらいついた。
おい、まさか、やめろよ…
「いいんじゃね?悠久はそれなりに経験豊富だしリードも上手いし会長がスッテプアップするのに役立つんじゃねぇ」
大樹のヤツ余計なことを言いやがって。
「本当か佐久間!!」
キラキラとした期待に満ちた瞳で俺を見るな壬生。
「ステップアップするって…お前ら根本的なことを一つ忘れてるぞ。俺たちは男だ、それで壬生は平気なのか?」
大樹のいうスッテプアップと壬生が思ってるステップアップと同じとは限らない。
「それが何か問題でも?」
カクンと小首を傾げ壬生が不思議そうな顔をする。
「問題あるだろ!お前は男と恋愛しても平気なのか?それともセフレでもいいのか?」
とりあえず考え直すこともできるように聞いてみるが
「悠久こそ会長相手で恋愛できるのか?それとも本当にセフレとか?」
大樹が同じことを俺に聞いてくる。
「あのなぁ、大樹。これは壬生にとって大事なことだろが。遊びだったら段階なんて踏まずにやることやって怖い思いさせればいい。だが、本気で覚えていきたい、やってみたいと思うならこっちだって真面目に付き合う。そういうことだろ?」
壬生の好奇心や興味に巻き添え食らうならとことん付き合ってやる覚悟はする。
「さすが風紀委員長様だねぇ。ってか、本来はお前もこっち側だし、何なら俺より上の人間が好奇心旺盛のバ会長に付き合うとかいいのか?」
「お前が言い出したんだろうが!だが、それは壬生しだいだろ」
大樹の言葉に反論するが結局、決めるのは壬生だ。
「やる!俺はやってみたいし、体験したい!」
やっぱりな返事が返ってきた。
「わかった。だが、壬生。これだけは約束しろ。お前の好奇心を止めろとは言わないが、勝手に一人でうろつくな。行くときは役員の誰かに声をかけるか、俺に声をかけろ。じゃないと二度と自由に行動できないように拘束するからな」
「わ…わかった。行きたくなったら佐久間に声をかける」
拘束するという言葉が嫌だったのか素直に返事をした。
「これからチェリーなバ会長様はどうなるのか楽しみだねぇ」
大樹が楽しそうに笑う。他人事だと思いやがって。
「お前、覚えてろよ。さて壬生、生徒会室に戻るぞ稲生が心配してるからな」
生徒会室に戻るように促せば
「わかった」
素直に言うことを聞いて立ち上がり歩き始める。俺は内心小さく溜息をつき
「壬生、手。ステップ1まずは手を握ることから始めよう」
壬生に手を差し出せば一瞬、驚いた顔をしたが
「うん」
嬉しそうに返事をして差し出した手をギュッと握り返してきた。
「じゃぁ、邪魔したな。とりあえずお礼は言っておく、捕獲してくれた助かった。ありがとな」
大樹に向かってお礼を口にすれば
「いや、たいしたことしてねぇし、会長が楽しそうならいいんじゃね」
壬生の嬉しそうな顔を見て小さく笑った。
「だな」
俺も小さく笑い手を引き壬生と一緒に生徒会室へと戻るべく少しだけ歩くスピードを遅くした。
「俺だ、どうした?」
書類整理をしていた手を止め電話に出れば
『佐久間委員長すみません。か…会長が…壬生会長が行方不明になってしまいました』
切羽詰まった声で言われる言葉にクラリと眩暈がする。
「稲生副会長…毎度、毎度、同じ言葉を何度言わせれば気が済むんだ?あいつに鎖をつけておけと…」
次に言われるであろう言葉がわかる分だけ憂鬱になる。
『すみません、これでもちゃんと監視してたんです。それがちょっと目を離したすきに…。ほんの1,2分程度ですよ』
半泣き状態で説明してくるのも毎度のことなのでイヤになる。
「わかった。あのバカを探す。普通に戻ってきたら連絡してくれ」
一方的に返事をして通話を終えて席を立ちあがれば、待ってましたと言わんばかりに違う着信が来る。
「なんだ?今お前にかまってる暇じゃねぇんだよ」
受話器の向こう側の人物に少しだけイラつきながら言えば
『そう怒んなって。お前んところの姫を預かってんだ。お前がいらねぇなら捨てるぞ』
笑みを含んだ声で言われ
「はっ?」
変な声が出た。
『お前んとこの坊ちゃま会長をこっちで保護してるっての。いらねぇならこのまま捨てるぞ』
「保護ってどういうことだ?」
部屋の出口に向かいながら事情を聴けば
『一番危険な最下層に行きそうだった所を偶然見かけて捕まえた』
その言葉にクラリと眩暈がする。
「あのクソば会長が!あれほど行くなと言ったのに!今からそっちに行くから捕まえてろ」
半ば怒ったままでいえば
『逃げ出す前に早くなぁ~』
なんて暢気な言葉が飛んできて危うく携帯を握り潰すところだった。
「よぉ、早かったな」
目的の場所へ着いた俺に暢気な声で言ってくるこの男は幼馴染でこの学園に君臨する不良のトップである長谷部大樹だ。
「なんでお前ん所にいるんだよこいつは…」
キョトリとした顔で俺を見つめる男を指さして言えば
「だからさっきも言っただろ?最下層に行きそうだったから捕まえたって」
平然と言いのけてくれる。そもそも最下層というのは不良の中でも一番の下っ端で、尚且つ何をやらかすかわからない荒くれ者たちのいる場所だ。下っ端だからこそ血の気も多く、好奇心だらけの会長が行けばいい獲物で、それこそ殴る蹴るの暴力だけじゃなく、性的暴行にまで発展しかねない。
この会長はお坊ちゃまで知識こそは莫大に入ってるが、実務経験が全くなく、興味を持ったものはなんでもやってみたがるというとんでもない男だ。
恋愛事はもとより性的なことまでやってことがないチェリーなのだ。そんな男が初っ端から暴行で失うというのは流石に可哀そうである。
「で?バ会長さんはなんでこんな場所に来た」
いまだにキョトリ顔の会長に向き合ってみれば
「ん?気になったから。ここの奴らがどんな奴らなのか?みんなが避けてる理由とか?」
などと言ってのける。気になったというのは事実なんだろう。
「避けてる理由は不良だからだ。喧嘩を吹っ掛けられたり、カツアゲされたり、性的暴行も行われたりするからな」
俺の代わりに大樹が説明をする。
「暴行って…犯罪じゃないか…」
大樹の言葉を聞き眉間に皺を寄せる。お坊ちゃまだが頭がいいし、知識も豊富だからこの場所がどれだけ危険かは安易に想像はできたんだろう。
「チェリーな会長様の貞操が暴行で奪われるところを助けられたってわけだ」
俺が溜め息交じりに言えば
「チェ…チェリーって…貞操って…」
悔し気に俺を睨みつけてくる。
「へぇ~チェリーねぇ。じゃぁ、悠久が教えてやればいいじゃん」
などと大樹がとんでもないことを言い放つ。
「本当か!」
その言葉にバ会長がくらいついた。
おい、まさか、やめろよ…
「いいんじゃね?悠久はそれなりに経験豊富だしリードも上手いし会長がスッテプアップするのに役立つんじゃねぇ」
大樹のヤツ余計なことを言いやがって。
「本当か佐久間!!」
キラキラとした期待に満ちた瞳で俺を見るな壬生。
「ステップアップするって…お前ら根本的なことを一つ忘れてるぞ。俺たちは男だ、それで壬生は平気なのか?」
大樹のいうスッテプアップと壬生が思ってるステップアップと同じとは限らない。
「それが何か問題でも?」
カクンと小首を傾げ壬生が不思議そうな顔をする。
「問題あるだろ!お前は男と恋愛しても平気なのか?それともセフレでもいいのか?」
とりあえず考え直すこともできるように聞いてみるが
「悠久こそ会長相手で恋愛できるのか?それとも本当にセフレとか?」
大樹が同じことを俺に聞いてくる。
「あのなぁ、大樹。これは壬生にとって大事なことだろが。遊びだったら段階なんて踏まずにやることやって怖い思いさせればいい。だが、本気で覚えていきたい、やってみたいと思うならこっちだって真面目に付き合う。そういうことだろ?」
壬生の好奇心や興味に巻き添え食らうならとことん付き合ってやる覚悟はする。
「さすが風紀委員長様だねぇ。ってか、本来はお前もこっち側だし、何なら俺より上の人間が好奇心旺盛のバ会長に付き合うとかいいのか?」
「お前が言い出したんだろうが!だが、それは壬生しだいだろ」
大樹の言葉に反論するが結局、決めるのは壬生だ。
「やる!俺はやってみたいし、体験したい!」
やっぱりな返事が返ってきた。
「わかった。だが、壬生。これだけは約束しろ。お前の好奇心を止めろとは言わないが、勝手に一人でうろつくな。行くときは役員の誰かに声をかけるか、俺に声をかけろ。じゃないと二度と自由に行動できないように拘束するからな」
「わ…わかった。行きたくなったら佐久間に声をかける」
拘束するという言葉が嫌だったのか素直に返事をした。
「これからチェリーなバ会長様はどうなるのか楽しみだねぇ」
大樹が楽しそうに笑う。他人事だと思いやがって。
「お前、覚えてろよ。さて壬生、生徒会室に戻るぞ稲生が心配してるからな」
生徒会室に戻るように促せば
「わかった」
素直に言うことを聞いて立ち上がり歩き始める。俺は内心小さく溜息をつき
「壬生、手。ステップ1まずは手を握ることから始めよう」
壬生に手を差し出せば一瞬、驚いた顔をしたが
「うん」
嬉しそうに返事をして差し出した手をギュッと握り返してきた。
「じゃぁ、邪魔したな。とりあえずお礼は言っておく、捕獲してくれた助かった。ありがとな」
大樹に向かってお礼を口にすれば
「いや、たいしたことしてねぇし、会長が楽しそうならいいんじゃね」
壬生の嬉しそうな顔を見て小さく笑った。
「だな」
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