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月光に煌めく金のたてがみ-10年目の再会と約束-

act 6

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国王が帰って行ってから
「グルゥ」
金糸の王は一人唸る。


『君が本気であの子を嫁に欲しいと思うなら覚悟を決めるといい。覚悟ない君にミズキはやらないよ。そこまで僕は優しくないからね』



「どうした?一人で何を怒ってるんだ?」
一人で唸っている金糸の王の頭を撫でる。
「グルゥ」
金糸の王はミズキの身体に頭を摺り寄せる。力強く擦り寄ったため勢いに負けてミズキは尻もちをついた。金糸の王の頭を抱きしめ
「どうしたんだホントに…」
頭を撫でながら聞く。王は答える代わりに頭を何度も摺り寄せた。



ミズキを誰かに渡す気などもうとうない。自分の傍から放すつもりなどない。


『俺はミズキが好きだ。10年後、必ずお前を迎えに来る。だから待っててほしい』
10年前の約束を子供の約束だと片付けるつもりはない。
タマキは本気でミズキを自分の嫁にするつもりだった。勿論、10年前の約束を果たすために今まで頑張って来たのだ。

ミズキを迎えに来るためにはタマキ自身が成長する必要があった。肉体的にも精神的にも。
それだけじゃない、王子としての役割を果たすために日々勉強や、武術などの練習にも明け暮れていた。


自由にならない自分の時間、覚えることの多さ、色んなことが上手くいかなくてイライラする日々。
そんな矢先に突然、増えた新しい家族。

苛立ちを抑えることが出来ずタマキは2年前、国を飛び出しコッソリこの国へ来てミズキに逢った。獣姿だったためミズキにはタマキだとわからなかったが、それでよかった。


『ただ、ただ、俺はこいつに逢いたかったんだ。一目その姿を見たかったんだ』


発情期の姿に変化するミズキを見て息を飲んだ。月の光に照らされるミズキはキレイでそのまま、泡となって消えてしまいそうだった。

人の姿に戻って掻き抱いて腕の中に閉じ込めてしまいそうになった。

でも、それができないのは分かってたし、理解してた。

だからタマキは敢えてそんなミズキを見ないようにして、余計な係わりを持たないようにして、気まぐれでやってきたただのライオンだと言わんばかりに、来たときと同じように自由に帰った。


逢えば今まで逢えなかった分だけ愛おしさが強くなり2年と言う月日を過ごすのが辛く感じた。


約束の10年目を迎えたとき

「国王、20歳の誕生日はアスラヌーク王国で祝いたい」

タマキは自ら国王に懇願した。

「よかろう。それまでに己の気持ちを整理し覚悟を決めるといい」
国王はタマキの言葉の意味を目的を理解してアスラヌーク王国行きを了承したのだ。


タマキはこの国に来るまでの日々がものすごく長く感じた。そして、ミズキの状況を国王に聞いてはいたが、実際にこの国に来て、第二王妃とその息子に会って苛立ちを覚えた。
自分勝手で強欲な王妃。そしてその血を強く継いだ息子。
話をしているだけでイライラして仕方がなかった。


この国の国王からミズキの居場所は教えてもらえなかったが、タマキは見つけられる自信も、逢える自信もあった。

ただ、イラついたままで出てきてしまったので他の小動物たちには悪いことをしたと反省もした。

この場所に来るたびに獣の姿だったのは自分の中に決心がなかったから。
自分はミズキを迎えに来るつもりでこの国に来たがミズキは自分のことをどう思っているのかがわからなかった。
だから獣の姿でこの場所へ通った。

本当は本来の姿でこの場所に来るべきだとわかっていたし、理解してた。でもそれをしなかったのはタマキの中にまだ覚悟が決まってなかったから…。

ミズキの気持ちがわからなかったから…。


だが、国王とミズキの会話を聞き覚悟も決まった、決心もついた。


『俺は必ずお前を俺のものにする。俺の嫁はお前だけだミズキ』


金糸の王はギリリと奥歯を噛み締めもう一度、ミズキに頭を摺り寄せる。
「本当にどうしたんだ?」

金糸の王の行動に疑問が浮かぶがミズキは王の好きなようにさせていた。


その日の夜、金糸の王は何かを言いたそうな顔をしたままでミズキの傍から離れ暗闇の中へ帰っていった。


「また…またな…」

ミズキはそんな王の姿が見えなくなるまで見送った。



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