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月光に煌めく金のたてがみ-10年目の再会と約束-
act 2
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-2年後-
1年前にアスラヌーク王国の王妃が体調を崩し、国王の意向で王妃は自国へと帰国することとなった。そこからミズキの運命の歯車がずれ始めたのだった。
アスラヌーク王国の第一王子、ミズキは第一王妃が国を離れている間に突然、現れた第二王妃により第一王子の地位を奪われ、国王により中庭の一角にある宮殿に一人幽閉されていた。
その場所へは誰にも近づけず本当にミズキ只一人だった。侍女や兵さえも入れぬ場所へと幽閉されたのである。
幽閉というがミズキは案外自由だった。
一人でウロウロと歩き回ることが出来るからだ。ただ、ミズキの場合は一人で出歩くタイプではないので宮殿から割と近い場所までしか行動していない。
幽閉されたからと言ってミズキは別に不自由はしてないし、困ってもいない。
かえって自由奔放に悠々自適に自分一人の時間を楽しみながら過ごしていた。
「で?何故あなたがそんな姿でこの場所にいるんですか父上」
ミズキは本を片手に目の前に立つ兵士に声を掛ける。
「何故って息子に逢いに来たからに決まってるじゃん!」
等と言うがその姿は国王ではなく本当にただの雑兵の姿である。身を隠すための変身というのはわかってはいるが、ミズキは小さく溜め息をついた。
「あなたには俺を幽閉しているという自覚があるんですか?あの人にバレたら大目玉ですよ?」
ミズキは呆れながら国王である父を見る。
「だからこの姿じゃん。それに…あの女はこの場所へは来れんよ。明後日、隣国のキルズワーヌ国王一家が来る」
ここへ来た本来の目的である本題を口にする。その内容に顔色は変えずピクリとミズキの眉が動いた。
「あいつも来るんですか?」
ミズキの問いに
「第一王子、第二王子の二人も今回は同行することになってるよ。但し、僕は彼にこの場所を告げないからな」
国王ははっきりと言い切る。
「かまいませんよ。俺は今、国王の命により幽閉されている身ですからね。隣国の国王一家とは会えません」
ミズキははっきりと言い切った。国王一家が来るとき出迎えに参加するのは叶わぬことだから。
「僕は何も告げぬが、彼自身が勝手に来たときは知らぬからな。話はそれだけだ。また来る」
国王はそれだけ言い残し本来の宮殿へと戻っていった。
再び一人になったミズキは小さな溜め息をつく。
「来るかどうかわからない相手。期待しても仕方がないだろ?…それにあいつは…きっと忘れてるさ」
隣国の国王一家が来るのは第一王子の誕生の祝いをこの国でしたいからだと聞いていた。ただ、来る日程まではまだ知らされていなかったのだ。
ミズキはもう一度、小さな溜め息をつき本を読み始めた。
-明後日-
今日は王宮の外が騒がしく、キルズワーヌ王国の国王一家が来国したことを物語っていた。
だが、ミズキはそんなことはお構いなしにゆったりと過ごす一人の時間を楽しんでいた。
王宮の外では歓迎の音楽や踊りが披露されているのだろう。ワイワイと楽しむ声がミズキの元まで聞こえてきていた。
「大歓迎だな相変わらず…まぁ俺には関係ないけど…」
出迎えに行けぬのは寂しいが、人の多いところはあまり好きじゃないので一人の時間の方が大切だった。
昼半ばを過ぎた所だろうか?
庭先で本を読んでいたところ、鳥たちが一斉に飛び立つ。そして小動物たちも慌てだす。
「どうしたんだ?」
ミズキは不思議に思い、読んでいた本を閉じテーブルの上に置き外にでた。
鳥たちが騒いでいる場所へとゆっくりと向かって歩いていく。
カサッと音がしミズキは立ち止まり前を見る。
ゆっくりと現れるその姿には見覚えがあった。ゆっくりと迷うことなくミズキの方へと歩いてくる。
日の光があたりキラキラと輝く金糸のたてがみ。その足元には銀糸の狼もいた。
それは2年ぶりの再会だった。
1年前にアスラヌーク王国の王妃が体調を崩し、国王の意向で王妃は自国へと帰国することとなった。そこからミズキの運命の歯車がずれ始めたのだった。
アスラヌーク王国の第一王子、ミズキは第一王妃が国を離れている間に突然、現れた第二王妃により第一王子の地位を奪われ、国王により中庭の一角にある宮殿に一人幽閉されていた。
その場所へは誰にも近づけず本当にミズキ只一人だった。侍女や兵さえも入れぬ場所へと幽閉されたのである。
幽閉というがミズキは案外自由だった。
一人でウロウロと歩き回ることが出来るからだ。ただ、ミズキの場合は一人で出歩くタイプではないので宮殿から割と近い場所までしか行動していない。
幽閉されたからと言ってミズキは別に不自由はしてないし、困ってもいない。
かえって自由奔放に悠々自適に自分一人の時間を楽しみながら過ごしていた。
「で?何故あなたがそんな姿でこの場所にいるんですか父上」
ミズキは本を片手に目の前に立つ兵士に声を掛ける。
「何故って息子に逢いに来たからに決まってるじゃん!」
等と言うがその姿は国王ではなく本当にただの雑兵の姿である。身を隠すための変身というのはわかってはいるが、ミズキは小さく溜め息をついた。
「あなたには俺を幽閉しているという自覚があるんですか?あの人にバレたら大目玉ですよ?」
ミズキは呆れながら国王である父を見る。
「だからこの姿じゃん。それに…あの女はこの場所へは来れんよ。明後日、隣国のキルズワーヌ国王一家が来る」
ここへ来た本来の目的である本題を口にする。その内容に顔色は変えずピクリとミズキの眉が動いた。
「あいつも来るんですか?」
ミズキの問いに
「第一王子、第二王子の二人も今回は同行することになってるよ。但し、僕は彼にこの場所を告げないからな」
国王ははっきりと言い切る。
「かまいませんよ。俺は今、国王の命により幽閉されている身ですからね。隣国の国王一家とは会えません」
ミズキははっきりと言い切った。国王一家が来るとき出迎えに参加するのは叶わぬことだから。
「僕は何も告げぬが、彼自身が勝手に来たときは知らぬからな。話はそれだけだ。また来る」
国王はそれだけ言い残し本来の宮殿へと戻っていった。
再び一人になったミズキは小さな溜め息をつく。
「来るかどうかわからない相手。期待しても仕方がないだろ?…それにあいつは…きっと忘れてるさ」
隣国の国王一家が来るのは第一王子の誕生の祝いをこの国でしたいからだと聞いていた。ただ、来る日程まではまだ知らされていなかったのだ。
ミズキはもう一度、小さな溜め息をつき本を読み始めた。
-明後日-
今日は王宮の外が騒がしく、キルズワーヌ王国の国王一家が来国したことを物語っていた。
だが、ミズキはそんなことはお構いなしにゆったりと過ごす一人の時間を楽しんでいた。
王宮の外では歓迎の音楽や踊りが披露されているのだろう。ワイワイと楽しむ声がミズキの元まで聞こえてきていた。
「大歓迎だな相変わらず…まぁ俺には関係ないけど…」
出迎えに行けぬのは寂しいが、人の多いところはあまり好きじゃないので一人の時間の方が大切だった。
昼半ばを過ぎた所だろうか?
庭先で本を読んでいたところ、鳥たちが一斉に飛び立つ。そして小動物たちも慌てだす。
「どうしたんだ?」
ミズキは不思議に思い、読んでいた本を閉じテーブルの上に置き外にでた。
鳥たちが騒いでいる場所へとゆっくりと向かって歩いていく。
カサッと音がしミズキは立ち止まり前を見る。
ゆっくりと現れるその姿には見覚えがあった。ゆっくりと迷うことなくミズキの方へと歩いてくる。
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それは2年ぶりの再会だった。
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