私、二度目は失敗しないので……！

兄弟も妹もダメだったの巻

　リュークが帰ってから、ほかのお客さんを何人か見た。
　料金とかなにも決めていないのに、みんなお礼と言って何かをくれる。
　食べ物だったり、お金だったりする。
　「お礼だ」と言って、リュークが置いていったのは、信じられない……。
　金貨一枚だった。
　貨幣価値で考えると、日本円で十万円くらいだろうか？
　もうリュークったら……気前が良過ぎと言うか……。
　そんなんじゃ、お嫁さんが怒るぞっとか思う。
　まあいい、これはいささか貰いすぎだから、この次来た時に、返そうと思った。
　だが、そうはいかなかった。
　「いい、貴殿にあげたんだ。とっておいてくれ……」
　次の日も来たリュークに返そうとすると、それを断られる。
　それが一週間も続いた。
　だいたい世間話をして帰る。
　この十組限定に選ばれるだけでもかなり前の時間から並ばないといけない。
　それなのに、リュークは必ず来てくれた。
　最近では並んでいると他の人を見ている間に視線？が合うと、こちらに手を振った。

　だがそれが止まる。
　なぜなら、自分が寝込んだのだ。
　久しぶりに風邪をひいた。
　ベットに横になる。
　この時ばかりはパンダのぬいぐるみなんて着ていられない。

　レオさんが出勤までに色々してくれたが、もう寝ているしかなかった。
　でも、熱が朦朧としている中、誰かが中に入って来た。
　エリカちゃんだった。
　まずいと思って顔を隠そうと思ったが、時すでに遅し。
　彼女の顔が青くなる。

　「ど、どういう事なの？」
　「え、うそついてごめんなさい。中身は人間なんです……」
　「………」
　「あの兄さんがこんな美人を匿っていただなんて！」

　え？
　やっぱり兄妹の価値観おかしくない？
　熱のせいで、幻覚や幻聴が起きたのかもしれない。
　そう思うことにした。
　何度もうなされてあの殺された日のことを思いだす。
　うなされていると、入れ替わり立ち替わり、レオさんや、エリカちゃん、マテオ君までおでこの冷たいタオルを交換しに来てくれた。

　とうとうバレちゃったなっと涙目になって思う。
　マテオ君が泣かないといいなと思った。
　
　ごめんね、マテオ君。
　夢、壊しちゃって……。

　微睡むなか、夢に落ちていく。
　謝りながら……。

　ようやく熱が下がり、起き上がって、横をみたら、小さな花瓶に小手鞠こでまりの花があった。
　置き手紙があって、読んでみたら、ジンとしてしまう。

　【パンティさんの常連さんからのお見舞いです】

　まさかと思う。
　でも、すぐに、それが誰だかわかる。
　手紙が付いていたからだ。
　知ってる。
　いつもなぐり書きみたいなの、リュークの字って。
　読みにくいの。
　
　【具合が悪いと聞いた。何か必要ないあるモノがあるなら言ってくれ。ゆっくりと休んでくれ、また会えることを楽しみにしてる。】
　
　もう名前ないじゃん。
　でもその不器用な優しさが胸にくる。

　ちょっと涙ぐんでいると、かちゃっという音がして、マテオくんが入ってきた。

　ああ！ 子供の夢が！！！

　「ま、マテオくん、ごめんね。今まで嘘ついていて……これには大人の事情というか、ちょっと手違いとか色々あって……」
　「いいよ。サキちゃんって言うんでしょ？　あの伝説の聖女様と一緒なんだね……」
　「！」
　「怒ってないよ。ちょっとビックリしたけど……」
　「マテオく～～んっ！！ ありがとう！ うぇ～～ん」
　「でもね、サキちゃん、エリカ姉ちゃんとレオ兄ちゃんと話し合ってみたけど、やっぱり普段は、外出るときはサキちゃんは、あの白黒のパンティさんになったほうがいいと思うよ。僕もサキちゃんみたいな綺麗なお姉さんが一緒に住んでいるなんて自慢になるけど、エリカちゃんも同意していたけど、危ないと思うよ」
　「？」

　すると、そこへエリカちゃんも入ってきた。

　「あ？　起きられました？　サキちゃんって言うんですね。もうビックリしちゃった。兄さんがどっかのお姫さまを誘拐してきたのかと思ったわ。でも、大丈夫。兄さんも自分の立場しっかりわかっているみたいだし！ サキちゃんみたいな超美人、兄さんなんか目に入らないものね！」

　え？　やっぱりこの兄妹、全滅かも！
　
　そこへ、てヘヘヘッとして顔を赤めながら、レオさんが入ってくる。

　いや、どう考えてもこの兄弟とお姉ちゃん。
　美形でしょ……。

　ごめん、もうちょっと寝ます！と言ってこの場を逃げた。
　
　やっぱりまだ熱あるみたいだな。
　多分。