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溶けゆく二人
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イーサンは何をどう理解していいか、わからなかった。
目の前にいる、命を捨てても守りたいと思っていた人が、まさか自分を愛していると言ったのだ。
耳を疑う。
しかも、彼女は俺の子を妊娠していると言っているのだ……。
身体中に電気が回るような、痺れる感覚がする。
「ディ、ディアナ……」
「どうして、イーサン様は、教えてくださらなかったのですか?」
「え? なっ、何をだ?」
「……魔女との契約の事です!」
「な、なぜそれを……!」
ディアナは横に隠し持っていた、食べかけの林檎を出した。先ほど、シルクからもらったもので、自分が味見したものでもあった。
「……シルク様がくれたの……イーサン様の真実を知りたければって」
「……俺の真実……? シルク? あいつがここに居たのか?」
やっぱりあの吟遊詩人は魔法使いだったのかとイーサンは思う。
ディアナの目がイーサンの瞳を凝視した。その射るような視線にイーサンは目を背けた。
自分がディアナのために枷をつけられても、それは当たり前の行為だった。彼女を守るのは、自分としては当然の行為だった。だが、その後の自分のとった行為が、例えそれが淫魔のせいであっても、最悪だったのは、否めないでいた。
それがディアナに知られてしまい、イーサンは、耐えられない恥ずかしさと後悔の気持ちを味わっていた。
「ディアナ、そうか、知ってしまったか。俺はお前が思うより汚い大人になってしまった。正直、お前の純粋な目で見られると自分の今までの行為が恥ずかしくて、目も合わせられん……」
「どういう意味ですか? それが、私を守るためでもですか?」
「……ディアナ!」
「イーサン様は、先ほど、私を妊娠させた奴に責任を取らせるとおっしゃいましたよね……」
「……え、」
「だったら、イーサン様、責任をとって下さい。わ、私は……私は……」
ディアナは言葉が繋がらない。
あの林檎を食べたら、あの英雄戦争での出来事が映像になって頭の中に流れ出した。
魔女が淫魔について、彼に問うシーンだった。
そして、イーサンの言葉はディアナの心を射抜いた。
『私の大事なディアナに、指一本でも、触れることは許さない!』
それを聞いた時、涙が自然に流れた。
そして、まるでイーサンの自分に対する愛情が洪水のように自分に押し寄せた。
彼が身を犠牲にしてまで、自分を守っていたことについて、何も知らなかったからだ。
「過去のことはもういいです。私は、今、イーサン様が、私をどう思っていらっしゃいるか、知りたいのです……」
「ディアナ!!」
「お願いです。教えてください。私は、イーサン様が他の方が好きだと聞いて、身を引きました。でも、この林檎の味が、匂いが、それは、違うっていうんです……」
「ディアナ、やめろ、それ以上言ったら、俺は……」
「あの社交界デビューで、イーサン様は私と目があったのに、無視をして何処かに行かれてしまいました。あの時、正直、私の初恋は淡く消え失せてしまいそうでした。でも、私は諦めきれなかった。そして、あの晩、アリスの代わりで夜食係をした時に、違う女と間違られて、イブとして貴方に抱かれた……」
「……ディアナ、もうそれ以上は……」
「でも、私は、嬉しかったんです。今まで、女として見られていないかと思っていたから、あの時の体験はちょっと衝撃的だったけど、イーサン様だから、受け入れたんです……」
イーサンはディアナの告白を聞きながら、頬に冷たいものが流れていることに気がつかなかった。
それほど、彼女の告白が心に響いた。
「……貴方より、美しい人など、いない…」
なにか苦しみながら、イーサンが呟いた。
「……イーサン様」
ディアナの頬も赤くなり、切実な思いをその瞳に覗かせた。
「……ディアナ、俺は、もう、それを一度告白してしまえば、君を一生、離すことはできない。たとえ、まだ淫魔に憑かれていようが……」
「……!」
イーサンの射抜くような鋭く真剣な目がディアナを見つめた。
「愛している……ディアナ、誰よりも」
目の前にいる、命を捨てても守りたいと思っていた人が、まさか自分を愛していると言ったのだ。
耳を疑う。
しかも、彼女は俺の子を妊娠していると言っているのだ……。
身体中に電気が回るような、痺れる感覚がする。
「ディ、ディアナ……」
「どうして、イーサン様は、教えてくださらなかったのですか?」
「え? なっ、何をだ?」
「……魔女との契約の事です!」
「な、なぜそれを……!」
ディアナは横に隠し持っていた、食べかけの林檎を出した。先ほど、シルクからもらったもので、自分が味見したものでもあった。
「……シルク様がくれたの……イーサン様の真実を知りたければって」
「……俺の真実……? シルク? あいつがここに居たのか?」
やっぱりあの吟遊詩人は魔法使いだったのかとイーサンは思う。
ディアナの目がイーサンの瞳を凝視した。その射るような視線にイーサンは目を背けた。
自分がディアナのために枷をつけられても、それは当たり前の行為だった。彼女を守るのは、自分としては当然の行為だった。だが、その後の自分のとった行為が、例えそれが淫魔のせいであっても、最悪だったのは、否めないでいた。
それがディアナに知られてしまい、イーサンは、耐えられない恥ずかしさと後悔の気持ちを味わっていた。
「ディアナ、そうか、知ってしまったか。俺はお前が思うより汚い大人になってしまった。正直、お前の純粋な目で見られると自分の今までの行為が恥ずかしくて、目も合わせられん……」
「どういう意味ですか? それが、私を守るためでもですか?」
「……ディアナ!」
「イーサン様は、先ほど、私を妊娠させた奴に責任を取らせるとおっしゃいましたよね……」
「……え、」
「だったら、イーサン様、責任をとって下さい。わ、私は……私は……」
ディアナは言葉が繋がらない。
あの林檎を食べたら、あの英雄戦争での出来事が映像になって頭の中に流れ出した。
魔女が淫魔について、彼に問うシーンだった。
そして、イーサンの言葉はディアナの心を射抜いた。
『私の大事なディアナに、指一本でも、触れることは許さない!』
それを聞いた時、涙が自然に流れた。
そして、まるでイーサンの自分に対する愛情が洪水のように自分に押し寄せた。
彼が身を犠牲にしてまで、自分を守っていたことについて、何も知らなかったからだ。
「過去のことはもういいです。私は、今、イーサン様が、私をどう思っていらっしゃいるか、知りたいのです……」
「ディアナ!!」
「お願いです。教えてください。私は、イーサン様が他の方が好きだと聞いて、身を引きました。でも、この林檎の味が、匂いが、それは、違うっていうんです……」
「ディアナ、やめろ、それ以上言ったら、俺は……」
「あの社交界デビューで、イーサン様は私と目があったのに、無視をして何処かに行かれてしまいました。あの時、正直、私の初恋は淡く消え失せてしまいそうでした。でも、私は諦めきれなかった。そして、あの晩、アリスの代わりで夜食係をした時に、違う女と間違られて、イブとして貴方に抱かれた……」
「……ディアナ、もうそれ以上は……」
「でも、私は、嬉しかったんです。今まで、女として見られていないかと思っていたから、あの時の体験はちょっと衝撃的だったけど、イーサン様だから、受け入れたんです……」
イーサンはディアナの告白を聞きながら、頬に冷たいものが流れていることに気がつかなかった。
それほど、彼女の告白が心に響いた。
「……貴方より、美しい人など、いない…」
なにか苦しみながら、イーサンが呟いた。
「……イーサン様」
ディアナの頬も赤くなり、切実な思いをその瞳に覗かせた。
「……ディアナ、俺は、もう、それを一度告白してしまえば、君を一生、離すことはできない。たとえ、まだ淫魔に憑かれていようが……」
「……!」
イーサンの射抜くような鋭く真剣な目がディアナを見つめた。
「愛している……ディアナ、誰よりも」
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