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憂鬱なディアナ

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 団長のあの晩の『イブ』という女への執着にただならぬことを感じた乳母のアリスは、その後も何回もシントロスキーの館を訪れ、ディアナを見舞っていた。
 あの後、ディアナは寝込んだ。
 本当は、すぐにでも修道院に行きたかったが、やはりあの出来事の後、ショックで寝込んでしまう。
 ガイザーもとても心配して、なんども騎士団を抜けてはディアナを見舞いに来た。

 もちろん、ディアナはあの晩のことについては、『何もなかったわ。ちょっと団長様に会いそうだったけど、逃げてばれなかったし、問題もなかった』と言うだけで、それだけしか説明する気力もないみたいだ。

 また、アリスが何度か様子を見に来た時に、ディアナが言った。

 「アリス、ごめんなさい。リチャードから借りた貴方の灰色のストール、ちょっと実は無くしちゃったの。だから、今度、新しい素敵なのが見つかったら、返すから……本当にごめんなさい」

 「まあお嬢様、そんなことは一切かまいませんよ。あんなの物は、もう捨てようと思っていたんですから。でも、本当にあの晩、なにもなかったのですか? あのイーサン団長の執着はすごいですよ? ディアナ様は、あの晩の『イブ』だったんじゃないんですか?」

 ベットの上で横になっていたディアナは窓から秋の優しい日差しを受けている庭を眺める。
 どうやらアリスの質問を全く聞いてないような素ぶりだった。
 果樹園ではないが、ディアナの住んでいる館の庭にも幾つかの林檎の木が植えられていた。
 ちょうど実りの季節がやってきていた。少し赤みがかった林檎が木になっているのが見えた。

 「ねえ、アリス。禁断の果実って知ってる?」
 「え? なんですか? それ、食べたら、死んじゃうんですか?」
 「うふふふっ。そうかもね。本当はそうなのかも」
 「なんですか、縁起が悪いですよ」
 「いいの、でも、その禁断の果実を食べちゃうっと、今まで知らなかったことを知っちゃって、神様から怒られちゃうんですって」
 「なんですか? それ? じゃー、私なんかは絶対に食べたくないですね。そんな恐ろしいもの」
 「でも、おかしいわね。神様って慈悲深いんじゃないの? だったら、その食べていろんなことを知ってしまった女の子をなぜ助けてあげないのかしら?」
 「ディアナ様。私にはそういう難しいお話はわかりませんよ。とにかく、お体をお休めになって、早く元気になってくださいましよ……」

 「いろんなことを知ってしまったイブってかわいそう。だって、その知識を誰とも共有できなかったのよ……」
 
 ひとりぼっちと感じるディアナは、せめてそのイブに誰か一緒に悩んでくれる友人がいたらよかったのに……と自分の境遇を重ね、一人、またベットに潜り込んだ。
 
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