団長、それはやり過ぎです。

たまる

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愛の証明

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 殿下が下を向く。
 その横顔には影があるように見えた。

 「だから、こうやって我々はイーサンを守ってきた。あいつのおかげでこの国は護られたんだ。多少、女を抱かせることくらい、いいとは思わないか?」

 「……そんな、聞いてない。イーサンはその想いひとを守るために?」

 ちょっと一呼吸して、カイル王子が答えた。

 「……それは君の、妹さんなんだよ。ガイザー……」

 ガイザーが今度は頭を殴られたようなショックを受けた。
 あの女垂らしで、いい加減だと思っていた旧友が、まさか自分の妹のために、そこまでしてしてくれていたのかと俄かに信じがたい。

 なにが、どうして、と、疑問しか浮かんでこない。

 「そ、そんな、イーサンが、そんなことになっているだなんて……」

 俺は、何も知らなかったとはいえ、酷い事はイーサンにしてしまったと思う。

 「わたしもできれば身代わりになりたかった。だから、魔女に懇願した。でも、あの魔女は、イーサンに固執したんだ。でも、ひとつ条件を私はつけた。せめて、イーサンがこの契約を忘れて、ただ彼女を想う幸せだけは残して欲しいと……私の頼みなら、聞いてくれると思ったが……まあ酷い代償をもらったがな……」
 でも、それは自分の成長を代わりにしたと殿下は言わなかった。その時、自分の生気を吸い取られ、病弱な体になってしまったのだ。しかも、それ以上のこともあったが、でも、自分がイーサンにした事を考えると、それは当然の報いだった。

 「魔女はそれには合意した。それで、奴は自分は、生まれつき絶倫だと勘違いしている」

 地面の土のイーサンが残していった闘いの足跡を王子は見つめた。

 「でも、最近のイーサンは淫魔の力が弱まっていると感じた。何か彼の精力がバランスがとれたような、晴れ晴れとした顔を見かけた。まあ、本人はそれどころではなかったようだが……。これは、魔女の枷など、何かのきっかけで弱まっているかもしれないと……。もしかして、ディアナ嬢と上手くいくかもしれんと、私と王はそう決めたのだ」

 「そ、それで勅令を?!」

 「そうだ。そうしなければ、もうイーサンはディアナを諦めていただろう」
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