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魔女との契約

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 「カイル殿下……」
 「イーサンの秘密を教えよう……」

 カイル殿下が話す内容は衝撃だった。

 「魔女と契約ですか?」
 「なぜ、あいつが大陸一の魔法師になれたのか、わかるか?」
 「生まれつきなのかと……」
 「はたして、そうか? ガイザー。君は幼い日の思い出があるはずだ。あいつにそんな、ものすごい魔力があったか?」

 今度はガイザーが愕然とする番だ。
 確かに、昔のイーサンは、剣術、魔術の素養はあった。だが、今ほどになるとは、友人としては全く予想外だったのだ。

 そして、真面目だったと思ったいたイーサンの変貌……。
 ディアナの社交界デビューの時、幼馴染のディアナを無視して、どこかに行ってしまう態度……。

 また彼の女性関係の悪さを数年前から入隊した騎士団で知ったのだ。

 イーサンは前とは違った?

 剣も互角だったし……。
 優しくて生真面目だった。

 魔法は? 
 あれ、おれは、奴が魔法を使ったこと、見たことがあるか?

 いや、多少はあったはずだ。
 でも、あれっとか、おーーっとか感動した覚えがまったくないのだ。

 みんなで森の中で戯れた日々。
 普通の子供として、ただ落ち葉などで遊んでいた。
 やはり、そこには、魔法を使えるイーサンの思い出はなかった。

 カイル殿下はこの世界には魔女と言われる魔法使いと、魔法師と呼ばれる二種類の者がいることをまず、ガイザーに説明した。
 魔力を持ち合わせないものには、寝耳に水の話だった。
 そして、違いをも話す。
 魔法師は人間だが、魔法使いは、人間らしき者だと……。
 ただ魔法使いの全容はこの国ではよくわかっていなかった。

 さらに、カイルは説明する。
 あの英雄戦争と呼ばれるものは、本当は戦争ではない。
 英雄とは、ほど遠いものだったと……。

 ただ、恐怖に怯える国の民を鎮めさせるために、古代の英雄がイーサンに力を与えて、我が国が悪しきものから我が国を救ったということになっていた。

 始まりは未だ不明だが、何かのきっかけで、我々の領土と隣国の間で、冥界のドアが開いてしまったのだ。
 両国間に緊張が走った。
 これはすぐに国の存亡に関わると……。
 無数のわけわからない死霊やら化け物が漂い、それぞれの国境付近を襲った。
 最初それがお互いの国が攻めてきたと勘違いしたのだ。
 ただ世界が闇の力に乗っ取られそうだった。
 とてもじゃないが、騎士団を総結しても無理だった。
 だが、隣国も諦めかけ、我が国の滅亡をも予見するほど、戦況は危ぶまれた。
 が、その時に、気まぐれな魔法使いが現れたと……。

 「これは千載一遇のチャンスと思い、魔女に助けを求めたんだ……」
 
 カイルは目を伏せがちに説明する。
 
 「見た目も戦闘にも優れたイーサンに目をつけたんだ」

 アレは私にこう言ったんだっとカイルは思い出す。

 「わかった……。あの冥界からの野郎ども、やっつけて助けてやるよ。代償として……もし私の挑戦をのむのなら……」
 
 あの男を一人で来させろと、騎士団の先頭で闘っていたイーサンを指名したのだ。
 そうしたら、この悪の使いも全て滅ぼしてやろうと。
 
 カイル自身も抵抗し、なぜ自分ではダメなのかと魔女に問う。
 本来なら、全て自分が負う責任だった。

 魔女はなぜかイーサンに固執したと、カイルはなぜか悲しそうに話した。
 自分の国と一人の兵士の運命を天秤にかけたのは自分だった。

 イーサンに私は言ったのだ。

 「あの渦の中心に魔法使いの女がいる。どうやら力を貸してくれるみたいだが、交渉人として、お前を指名してきた」
 「え? 私をですか?」

 無言でカイルは頷いた。

 まんまと魔法使いの女とわたしに騙されて一人でイーサンが魔女と対峙した。

 よく来たねっと言いながら、魔女はこうイーサンに訪ねた。

 「ああ、わたしは愛など信じられない! 人間は欲の塊だ。私は愛と欲がどちらが勝つか知りたい。お前に選択をやる。お前が淫魔に取りつかれるか、それかこの世界で一番大切とお前が想う人が淫魔に取り憑かれるかどちらがいい?」

 純粋なディアナを一途に想うイーサンは速攻で答えた。

 「わたしだ、彼女に指一本でも触れさせん……!」

 魔女がニヤリと微笑んだ。そして、その指先から光と文字が現れて、契約の呪文が鳴り響く中、ただ一言の魔女の言葉が、彼を引き裂く。
 
 「楔はいまここに打たれた! ああ、淫魔に取り憑かれたような男は、まあ絶対に好きな女とは一緒にはなれないぞ……。それだけでは、覚えておけ。その欲望で、その女を殺すまで抱き続けるぞ」

 その言葉を聞いたイーサンは、煮えたぎるディアナの想いで爆発してしまう。

 「ああ、嘘だ! そんなのは!!」

 その時、地平線に閃光が走った。
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