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美代の困惑と蓮司の想い

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 「……ど、どうしよう!」

 朝から普段はありえないほどの報道人が大原邸の周りを囲んでいる。
 カーテンの隙間からちょっとノゾくと、山川さん達が、報道人に安全性の問題から、これ以上入らないでくれと話しあっているようだった。

 ああ、どうしてこんなになってしまったかと考える。

 「……どうした。美代」

 耳元で、蓮司が囁く。

 「……蓮司さ~ん! どうしましょう!」
 「何をだ?」
 「だって、こんな人、わざわざこんなとこまで来て……」
 「……何もする必要はない……」
 「……え?」
 「美代、お前はをしたのか?」
 「……いいえ」
 「人に謝るようなことをしたか?」
 「……一応、この件に関してはないと思いますけど、なんていうか、あんなにすごい事だと思わなかったし、ただ私はみんなのためのなればいいと思っただけなのに……」
 「……そうだな。そういうことだ」
 「……え?」
 「それをあいつらの前で話すか?」
 「ぎょええええ、マジですか?」
 「どっちでもいい。でも、あいつらもネタが欲しいんだ。年末だから、お正月がくれば、また忘れ去られる。いま取材に答えるのがベストだが、無理とは言わない」
 「……蓮司」
 「……大丈夫。俺が付いている」

 そして、なぜかメディファクトのプレスルームで緊急会見となった。

 バシバシと目の前にストロボライトがたてられた。
 「あの土屋美代さん、どうしてあれを無償で譲られたのですか?」
 「あ、え、あのまあ皆さんのお役に立てればいいと思いましたので……」
 「あれが世界のエナジーシステムを変えるくらいの影響力があるとご存知でしたか? 発展途上国の今まで電力が行かない地域にも活躍することが期待されています。それについてはどう思われますか?」
 「嬉しいです」

 「あの美代さんはすでに、もう御結婚されていると言う噂があるのですが、本当でしょうか?」

 美代は思わず、会場の端で見守る蓮司が目に入る。

 「え、あ、そのはいそうですが、それはプライベートなことなので、質問は受けません」
 「え、でも、そのお相手があの大原財閥の会長らしいとあるのですが…」
 「あ、ごめんなさい。それらは、あの……」

 その時蓮司が微笑んでいるのが見えた。
 それがなぜか美代に安らぎと自信を与えた。
 
 「ああ、もういいです。いっちゃいます。そうです。旦那様は大原蓮司さんです!!」

 一気にフラッシュが大きくなる。

 思わず、蓮司がその集団をかき分けて、美代を抱きしめた。

 「れ、蓮司、会長!!」
 「ばか、美代。先走るなって言ったじゃないか!」

 ストロボの前に立った蓮司は報道陣に一喝する。

 「これまでだ。では、を返してもらう」

 手を引いて蓮司はそのプレスルームから美代を引きずり出した。

 車で大原邸に向かう。
 その間、ずっと蓮司は美代にキスをし続けた。

 そして、絶えず、この言葉を言いながら……。
 
 「美代、ありがとう」

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