上 下
161 / 200

真田の策略

しおりを挟む

 『なぜここにブラック・シャドウなどという不吉な名前が書かれているのだ……』
 『………』

  蓮司は何も答えない。だが、目の前の巨大スクリーンや、この設備、今までの話を聞いて、アベルがハッとした。

 『まさか歩美はブラック・シャドウに捕まったのか? いや、その知人はブラック・シャドウの一員ということか? 』
 『否定も肯定もしない……。唯一、確かめる方法は、まず歩美さんを探すことじゃないですか? 総裁? まあ彼は歩美さんを大切に思っている。危害は加えない。それだけは約束しよう……』

 『ブラック・シャドウが歩美の味方だと?』

 正直、一人の男を探すのは訳がないと思っていた。
 まあ財閥の総裁ではなくただの一般人であっても、この男の知り合いなら、いろいろ賢い方法も知っているだろう。
 でも、絶対的に探し出せると思っていた。

 しかし、それがブラック・シャドウ相手だと、また話が違ってくる。
 個人だと言うものもいるし、それは大組織の地下グループの名前だと言う奴もいる。
 有名な情報屋だ。

 まえにブラックシャドウによるタレコミで、欧州の大規模な犯罪グループが検挙させたことも知っている。警察は、ブラックシャドウについては明記しなかったが、情報筋に聞いたところそうだった。

 知り合いの欧州の情報屋が最も嫌がる名前だ。

 蓮司が考え込んでいるアベルをその隠し部屋から押し出した。
 その場所が完全に隠されてまた元の本棚になる。
 窓のシャッターが開けられて、全てのロックが解除された。
 
 アベルは手を頭に当てながら考えた。
 蓮司ののブラック・シャドウが歩美を気に入っただと?
 突然、自分の携帯がメールの受信を告げる。
 
 送り主の名前がもちろん、そうだろうと思う。
 タイトルにも笑ってしまった。

 【Black Mail】from【Black Shadow】

 添付されている資料を見る。暗証番号が必要だった。
 すると、携帯のテキストにメッセージが入る。
 そのコードを入れると添付のファイルが開いた。
 きっと本人しか開けられない処理なのだろう。
 しかも、相手は個人の携帯番号を知っているということか……。
 この送り主の番号はなぜか日本以外の国際電話の番号だった。
 逆探知を恐れて遠隔操作か?と考えた。

 その送られた資料には、これまでのルイス・カルダンのグループ内でのでの粉飾決算が疑われる企業、その行われた年度、詳細、手口などのが細かに書かれている。
 な、なんだと?  
 正直、寝耳に水の話だ。
 でも、これらは祖母と叔父、叔母が経営している企業だ。
 もしかしたら、と言う疑念が頭をよぎる。

 それ以降には、続々と信じられないような事実が数々と乗っている。
 しまいには叔父の不倫相手との写真や、祖母や叔母の税金逃れのための銀行口座の番号まで書かれている始末だ。
 他の役員のセクハラ行為、不正入札と、まるで総裁のアベルにとってそれは、本当にブラックメールだった。
 すぐに自分の電話が鳴る。
 祖母からだった。
 逆鱗に触れたと言う感じだ。
 彼女が電話口で叫んでいた。
 だが、それほど、彼女にとって一番触られたくないところをつかれたのだろう。
 今迄、彼女がこんなに慌てているのを聞いたことがなかった。

 彼女の要求、もちろん、このブラック・シャドウを見つけろと言う指示だが、もちろんですっと答えながら、電話を切る。すぐに叔父や他の役員が電話をよこしてきた。もう面倒なので、電話を切る。

 自分の口角が上がっているのに気がついた。
 悪くない。
 オオハラだけが、歩美の候補だけと思っていた。
 これは思わぬところから、刺客が出てきた。

 でも、これくらいに俺を出しぬかなければ、祖母や叔母、他の役員に立ち向かえない。

 「ブラックシャドウ、いいだろう。お前を地の果てでも探し出してやる……」

 隣で、蓮司は満足そうに自分のデスクに足を乗せて寛ぎながら、楽しそうにその様子を見ていた。

 『蓮司、全ての君の企業に対する敵対的買収は取りやめる。どうやら、敵が間違っていたようだ……』
 『そうか、それは良かった。安心したよ。明日は、重要な用事があるからね……。間に合わないと困るんだ……』


 
 
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

処理中です...