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クリスマスまでのカウントダウン
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あの下着パンツ大騒動からどうなるかと思っていたが、風邪も治ってすっきりした。でも未だにあのブラとドアの交換について詳しい情報を得ていない。次から次へと何かが起きて、いつも質問をし忘れるか、またははぐらかされている。
いや、いつか絶対に突き止める!と心に誓う。
でも、いまもう21日であと3日でクリスマスイブ!!!
学校でもこのイベントを目前にカップルが目立ってきた。テレビでもクリスマス番組の予告が多い。やっぱりこのクリスマスのウキウキ感には私はちょっと閉口気味だ。
『クリスマス、大切な人過ごす日』ってフレーズでCMが流れている。恋人同士の二人が熱く見つめ合い、大切な人と過ごすにはこの場所が最適っと宣伝していた。六本木にある複合型施設のコマーシャルだった。
あー、クリスマス。仕事があれば、あのメガネインテリさんプラスちょっと変態? の真田さんと俺様美形御曹司と過ごしてしまいそうだ。悲しい~。
まあでも御曹司様とはそんなに会う事はなさそうだと思っていた。年末になるとこういうトップの人たちは忙しそうだと読んでいたが、自分もなぜかちょっとだけ忙しくなり、今日すでに2回も!!よばれていた。
パソコンと携帯。
定番だよ、定番。お忘れ物の!
おい! 蓮司会長。これから忘れ物老人と命名したくらいだ。
一回、脳細胞を徹底的に検査するべき。
でも早く帰ってまったりしたい私は、もう超特急でお運びしている。
1度目は朝の10時頃、本社の会長オフェスへのお届けを実施。
トントンっ。
「失礼いたします」
「……入れ」
一礼してから部屋に入る。蓮司の顔も見ずに、さっとカバンから忘れ物を出し机に置く。
「はい、忘れ物のパソコン、お届けものです!」
「あ、ありがとう。そこへ……」
「では失礼いたします!!」
蓮司が何かを言おうとした瞬間、もう美代は彼のオフィスのドアの外へと消えていた。
2回目のは会社関連のパーティーでのお届け。はー、なぜ朝の時点で気がつかない。彼は携帯を2種類持っている。もう1機の方を忘れたらしい。
もう美女の山など怖くない。ついた豪華絢爛なパーティー会場内を不気味な配達用のつなぎで闊歩する美代がいた。
この会場に着く前に真田が、
「美代様、まあ一応あのドレスコードがありまして、このパーティーは……一応、こちらでも用意してありますが……」
「え? ドレス。そんなのいらないですよ。ぱっと渡して、ぱっと帰ります。変にドレスなんてきていたら、オネー様方から殺しビームが発射され、心身ともにストレスが重症化しますので、この方がいいです」
ちなみにこの配達用のつなぎ。上から下まで激しいオレンジ色だ。パーティーには完全にそぐわない。
真田が止めるのも聞かないで、現地に乗り込んだ。
案の定また美女の人だかりだ。いや本当にこのつなぎでよかった。このオレンジの発色がオネー様方を『ひぃっ?』とちょっと引かせる効果があるようだ。シメタ……。
ずんずんと中に入り込み、ビシッとスーツに身を固めた蓮司会長の後ろから近づき、空いているその手に携帯を握らせる。
彼がはっとした顔をして振り向き、美代の姿を見つめると非常に驚いた顔して、
「……なぜだ……」
と一言いう。
ーーあれ? なぜだって言われても、あなたがよこしたんじゃないですか?と呆れた顔をする私。
果たしてそれが御曹司様に伝わっているのかよくわからない。この場からすぐにでも去りたい私は、まさか蓮司が自分を引き止めようと手を伸ばして捕まえようとしているのが全くわからなかった。
彼の手が美代の腕にかかる寸前、違う美女の一人がぐいっとふたりの間に入り込む。
「あら蓮司会長。そんな……気がはやいですのね」
間違えて違う女の腕を握ってしまい、蓮司はむっとした表情をするが、美女はイケメンに睨まれて恍惚とした表情を浮かべていた。
美代はそんな様子は横目でみながら、その会場から走り去っていた。
はああっと深いため息がその御曹司から漏れた事にはだれも気がつかなかった。
***
あのパーティーのお届けの後、また館に戻ってまったりとしていた。実は年末までの冬休みの間、自宅を9時過ぎに出てパソコンとか勉強道具を持参して、大原邸で待機することにしている。出たり入ったりだと大変だからだ。大晦日とお正月2日までは休みをもらうことにした。別にこれといってすることはないのだが、まあ、まったりと紅白を見て、そばを食べてゆっくりしたいと思っていた。それに最近やっと女友達ができて! その子と初詣など行けたら嬉しいと思っている。
実は大原邸、でっかすぎて落ち着けるところがない。
だから、いつも厨房の片隅でシェフ松田さんがいろいろ仕込みをしているのを覗いたり、ちょっとした掃除ならメイドの丸山女史(なぜかみんなそう呼ぶ)を手伝ったりした。
大原邸の車が寄せ付けられる玄関ホールには吹き抜けのロビーがあり螺旋状の階段があるのだが、その豪華絢爛な場所のセンターには、クリスマスらしい大きなモミの木が飾られ、外国の映画に出てくるような洋物の飾りがあちらこちらに飾られおり、とても見事だ。
「す、すごいですね。豪華絢爛というか」
「でも、当主自体はこれをまったく楽しむ時間がないんだよな」
仕事の途中で入ってきた松田さんが悲しむ。
「そうですね。蓮司様は年末は、パーティーが15分刻みにはいってますから、都内を回るだけでも、大変な時間です」
真田さんも同意した。
「なんだか、もったいないですね。こんなにすごいクリスマスツリーなのに……見てくれる人がいないなんて……」
「あ、美代ちゃんはなんか予定があるの? クリスマス」
そこにやってきた冬季は意外に暇な庭師の福嶋親子の子の方が、さっと現れた。彼はまだ20代後半っぽいが、いつも福嶋の子の方っと呼ばれている。名前は拓(たく)だ。頭はさっぱりとした短髪で、きさくな兄貴といった風貌だ。
「あ、拓さん、お久しぶりです。いまはお休みのシーズンではないんですか?」
と聞いてみると、意外に忙しいらしい。福嶋のおやじさんは、剪定などが専門で、この拓のほうは家の周りの修繕などを一切に任されている。だから、もう何でも屋さんに近い。
なんだか私の仕事に似ていて、親近感を持ってしまう。
「ああ、なんか水周りがちょっと心配って、メイド長の丸山女史に言われてよ。外回りの配管が冬凍らないか、いま点検中なんだよ。でも、そう、ところでクリスマスイブの24日は?」
「え? クリスマスだなんて……なんか遠いイベントです。仕事で呼ばれなければ家で虚しくご飯を食べるだけですよ」
「……そうなの? だったら……おれと……」
と拓が言い出した途端、知らない間に現れた真田が口を挟む。
「あ、今年のクリスマスは、大原家で本家に勤めているものだけのささやかなクリスマスディナーパーティーをするつもりです」
「「「「????」」」」
初めて聞いた話なので、みんな顔がビックリマークだ。
だってあと3日後の話だ。
一番唖然としているのはシェフの松田だ。彼は妻子持ちなので、いつも24日と25日は休みをもらって家に帰っている。この館でクリスマスのパーティーなどした事がない。
「大丈夫です。松田さん。あなたは不参加でも参加されても、またはご家族でこちらにこられても大丈夫です」
「ええ?? 妻と子供を連れてきていいんですか?」
「はい、構いません。内輪のパーティーです」
「俺もいいんですか?」
拓がびっくりして、おずおずと尋ねる。
「大丈夫です。よかったらお父様の福嶋師匠にも参加されるかお尋ねください」
「おお!!ひゃほーー。でも、じいさん意外に出不精だからな。まあ聞いてみる」
「あの~~、忘れ物お届け係もいいんですか?」
真田がにっこりと美代に微笑む。
「もちろんですよ」
うわーー、うれしい。
クリパだ、クリパ!!
「あの、真田さん!!」
「はい、何でしょうか?」
「クリスマスといえば、プレゼントですよね!!」
「ああ、美代様はまだサンタクロースを待っているのですか?」
「あ、いえ、そういう年齢では残念ながらそうではありません。あのみんなで、クリスマスのプレゼント交換しませんか?でも、できる人だけでいいですが。あと三日ですし!!」
「プレゼント交換ですか?」
「そうです。値段を決めてしませんか?」
「面白いな。それはいいかもな」
「じゃー、無理のない2000円ぐらいはどうでしょう?」
「さすが倹約家の美代だな。値段がいいな。それぐらいならいいぞ」
拓が笑う。
「あと、SPの人たちも暇な独身者が多いかもしれませんから、声をかけましょう。丸山女史には私から話します」
美代が手を上げて言う。
「わかりました。だいたいの人数はこちらで把握していますが多分30人程度になるかと思っています。当日どれだけのSPが蓮司様につかれるかまだ未定です。なにかみなさん食べたいものありますか? 松田シェフはお仕事しなくてもいいですよ。一緒にパーティーを楽しみましょう。こちらで食べ物などは用意します」
「ええ、いいのか? なんだかこえーな。でも、真田さんがそう言うならな……まあ帰って。かあちゃんに相談してから、決めるけど……おれは実はこってりしたピザとか食べてえなーいつも高級料理しか作らないからな……おれ」
「ふふふっ。松田さん、面白い!!」
「あ! おれ、絶対に寿司食いてえ!!真田さんよ。寿司よろしくな。あの銀座の一流の寿司とか食ってみてえ」
「わかりました。寿司にピザとなんだか、すごい合わせになってきましたね」
「美代様はなにかありますか?」
「んんんーーーっ。憧れはチキンの丸焼きだけど、意外に、ケンツッキーのフライドチキンも捨て難いなーー」
「あの、まあ拓さんを除いて、皆さまこの大原家の財力というか力をバカにしておりますか? それが本当に食べたいものなんですか?」
「「ほんとうです!!」」
庶民的な味を求めたシェフの松田、美代は口をそろえる。
「まあ、わかりました。あと他の方にもなにがたべたいものを聞いてみますね。
まあではそれまで、みなさん、お仕事に頑張りましょう!」
「「「うおーーー」」」
と三人は声を上げた。
***
るんるんるん。
クリスマスが近づく中、仕事に追われる上司を負い目に、完全に人生初めてのクリパに心も体も舞い上がっていた。今までクリスマスに浮かれていた人々を卑下していた自分にあやまる。ごめんなさい、裏切るのは超はやい私です。
交換するクリスマスプレゼントは、結構悩んだ。女性になるのか男性になるのかもわからないから、どうしてもユニセックス対応のギフトを考えなくてはならない。うーーん。難しい。でも、意外とここで働いてくれる人は気さくな人たちばかりだ。まあ値段も2000円って決めたら、みんな気張らないで持ってきてくれたらいいなーと思っていた。
紅茶セットかマフラーみたいのがいいかなと思ったけど、なかなかいい予算2000円以下のマフラーが見つからない。あ、そっか私作れちゃうんだ! いきなり手編みってもらった人にはちょっと重いかなと思うけど、思ったようなデザインがないから、あと2日間で編みあげることを決心する。
急いで、大型店舗の手芸屋さんに駆け込んだ。混み合っている店内で試行錯誤したあと、だれでも似合うように緑青系のクールな感じの毛糸を選ぶ。毛糸を買って残ったお金で紅茶のパックを買った。まあ、これで2000円きっちりと使うことができた。
よし。
学校がないから結構時間があって待ち時間にこそこそと編み続けた。でも、さすがにみんなの前で編むことはできないから、家に早く帰ってテレビをみながら仕上げた。
で、できた! これなら、だれがまあもらっても大丈夫?
いや、いつか絶対に突き止める!と心に誓う。
でも、いまもう21日であと3日でクリスマスイブ!!!
学校でもこのイベントを目前にカップルが目立ってきた。テレビでもクリスマス番組の予告が多い。やっぱりこのクリスマスのウキウキ感には私はちょっと閉口気味だ。
『クリスマス、大切な人過ごす日』ってフレーズでCMが流れている。恋人同士の二人が熱く見つめ合い、大切な人と過ごすにはこの場所が最適っと宣伝していた。六本木にある複合型施設のコマーシャルだった。
あー、クリスマス。仕事があれば、あのメガネインテリさんプラスちょっと変態? の真田さんと俺様美形御曹司と過ごしてしまいそうだ。悲しい~。
まあでも御曹司様とはそんなに会う事はなさそうだと思っていた。年末になるとこういうトップの人たちは忙しそうだと読んでいたが、自分もなぜかちょっとだけ忙しくなり、今日すでに2回も!!よばれていた。
パソコンと携帯。
定番だよ、定番。お忘れ物の!
おい! 蓮司会長。これから忘れ物老人と命名したくらいだ。
一回、脳細胞を徹底的に検査するべき。
でも早く帰ってまったりしたい私は、もう超特急でお運びしている。
1度目は朝の10時頃、本社の会長オフェスへのお届けを実施。
トントンっ。
「失礼いたします」
「……入れ」
一礼してから部屋に入る。蓮司の顔も見ずに、さっとカバンから忘れ物を出し机に置く。
「はい、忘れ物のパソコン、お届けものです!」
「あ、ありがとう。そこへ……」
「では失礼いたします!!」
蓮司が何かを言おうとした瞬間、もう美代は彼のオフィスのドアの外へと消えていた。
2回目のは会社関連のパーティーでのお届け。はー、なぜ朝の時点で気がつかない。彼は携帯を2種類持っている。もう1機の方を忘れたらしい。
もう美女の山など怖くない。ついた豪華絢爛なパーティー会場内を不気味な配達用のつなぎで闊歩する美代がいた。
この会場に着く前に真田が、
「美代様、まあ一応あのドレスコードがありまして、このパーティーは……一応、こちらでも用意してありますが……」
「え? ドレス。そんなのいらないですよ。ぱっと渡して、ぱっと帰ります。変にドレスなんてきていたら、オネー様方から殺しビームが発射され、心身ともにストレスが重症化しますので、この方がいいです」
ちなみにこの配達用のつなぎ。上から下まで激しいオレンジ色だ。パーティーには完全にそぐわない。
真田が止めるのも聞かないで、現地に乗り込んだ。
案の定また美女の人だかりだ。いや本当にこのつなぎでよかった。このオレンジの発色がオネー様方を『ひぃっ?』とちょっと引かせる効果があるようだ。シメタ……。
ずんずんと中に入り込み、ビシッとスーツに身を固めた蓮司会長の後ろから近づき、空いているその手に携帯を握らせる。
彼がはっとした顔をして振り向き、美代の姿を見つめると非常に驚いた顔して、
「……なぜだ……」
と一言いう。
ーーあれ? なぜだって言われても、あなたがよこしたんじゃないですか?と呆れた顔をする私。
果たしてそれが御曹司様に伝わっているのかよくわからない。この場からすぐにでも去りたい私は、まさか蓮司が自分を引き止めようと手を伸ばして捕まえようとしているのが全くわからなかった。
彼の手が美代の腕にかかる寸前、違う美女の一人がぐいっとふたりの間に入り込む。
「あら蓮司会長。そんな……気がはやいですのね」
間違えて違う女の腕を握ってしまい、蓮司はむっとした表情をするが、美女はイケメンに睨まれて恍惚とした表情を浮かべていた。
美代はそんな様子は横目でみながら、その会場から走り去っていた。
はああっと深いため息がその御曹司から漏れた事にはだれも気がつかなかった。
***
あのパーティーのお届けの後、また館に戻ってまったりとしていた。実は年末までの冬休みの間、自宅を9時過ぎに出てパソコンとか勉強道具を持参して、大原邸で待機することにしている。出たり入ったりだと大変だからだ。大晦日とお正月2日までは休みをもらうことにした。別にこれといってすることはないのだが、まあ、まったりと紅白を見て、そばを食べてゆっくりしたいと思っていた。それに最近やっと女友達ができて! その子と初詣など行けたら嬉しいと思っている。
実は大原邸、でっかすぎて落ち着けるところがない。
だから、いつも厨房の片隅でシェフ松田さんがいろいろ仕込みをしているのを覗いたり、ちょっとした掃除ならメイドの丸山女史(なぜかみんなそう呼ぶ)を手伝ったりした。
大原邸の車が寄せ付けられる玄関ホールには吹き抜けのロビーがあり螺旋状の階段があるのだが、その豪華絢爛な場所のセンターには、クリスマスらしい大きなモミの木が飾られ、外国の映画に出てくるような洋物の飾りがあちらこちらに飾られおり、とても見事だ。
「す、すごいですね。豪華絢爛というか」
「でも、当主自体はこれをまったく楽しむ時間がないんだよな」
仕事の途中で入ってきた松田さんが悲しむ。
「そうですね。蓮司様は年末は、パーティーが15分刻みにはいってますから、都内を回るだけでも、大変な時間です」
真田さんも同意した。
「なんだか、もったいないですね。こんなにすごいクリスマスツリーなのに……見てくれる人がいないなんて……」
「あ、美代ちゃんはなんか予定があるの? クリスマス」
そこにやってきた冬季は意外に暇な庭師の福嶋親子の子の方が、さっと現れた。彼はまだ20代後半っぽいが、いつも福嶋の子の方っと呼ばれている。名前は拓(たく)だ。頭はさっぱりとした短髪で、きさくな兄貴といった風貌だ。
「あ、拓さん、お久しぶりです。いまはお休みのシーズンではないんですか?」
と聞いてみると、意外に忙しいらしい。福嶋のおやじさんは、剪定などが専門で、この拓のほうは家の周りの修繕などを一切に任されている。だから、もう何でも屋さんに近い。
なんだか私の仕事に似ていて、親近感を持ってしまう。
「ああ、なんか水周りがちょっと心配って、メイド長の丸山女史に言われてよ。外回りの配管が冬凍らないか、いま点検中なんだよ。でも、そう、ところでクリスマスイブの24日は?」
「え? クリスマスだなんて……なんか遠いイベントです。仕事で呼ばれなければ家で虚しくご飯を食べるだけですよ」
「……そうなの? だったら……おれと……」
と拓が言い出した途端、知らない間に現れた真田が口を挟む。
「あ、今年のクリスマスは、大原家で本家に勤めているものだけのささやかなクリスマスディナーパーティーをするつもりです」
「「「「????」」」」
初めて聞いた話なので、みんな顔がビックリマークだ。
だってあと3日後の話だ。
一番唖然としているのはシェフの松田だ。彼は妻子持ちなので、いつも24日と25日は休みをもらって家に帰っている。この館でクリスマスのパーティーなどした事がない。
「大丈夫です。松田さん。あなたは不参加でも参加されても、またはご家族でこちらにこられても大丈夫です」
「ええ?? 妻と子供を連れてきていいんですか?」
「はい、構いません。内輪のパーティーです」
「俺もいいんですか?」
拓がびっくりして、おずおずと尋ねる。
「大丈夫です。よかったらお父様の福嶋師匠にも参加されるかお尋ねください」
「おお!!ひゃほーー。でも、じいさん意外に出不精だからな。まあ聞いてみる」
「あの~~、忘れ物お届け係もいいんですか?」
真田がにっこりと美代に微笑む。
「もちろんですよ」
うわーー、うれしい。
クリパだ、クリパ!!
「あの、真田さん!!」
「はい、何でしょうか?」
「クリスマスといえば、プレゼントですよね!!」
「ああ、美代様はまだサンタクロースを待っているのですか?」
「あ、いえ、そういう年齢では残念ながらそうではありません。あのみんなで、クリスマスのプレゼント交換しませんか?でも、できる人だけでいいですが。あと三日ですし!!」
「プレゼント交換ですか?」
「そうです。値段を決めてしませんか?」
「面白いな。それはいいかもな」
「じゃー、無理のない2000円ぐらいはどうでしょう?」
「さすが倹約家の美代だな。値段がいいな。それぐらいならいいぞ」
拓が笑う。
「あと、SPの人たちも暇な独身者が多いかもしれませんから、声をかけましょう。丸山女史には私から話します」
美代が手を上げて言う。
「わかりました。だいたいの人数はこちらで把握していますが多分30人程度になるかと思っています。当日どれだけのSPが蓮司様につかれるかまだ未定です。なにかみなさん食べたいものありますか? 松田シェフはお仕事しなくてもいいですよ。一緒にパーティーを楽しみましょう。こちらで食べ物などは用意します」
「ええ、いいのか? なんだかこえーな。でも、真田さんがそう言うならな……まあ帰って。かあちゃんに相談してから、決めるけど……おれは実はこってりしたピザとか食べてえなーいつも高級料理しか作らないからな……おれ」
「ふふふっ。松田さん、面白い!!」
「あ! おれ、絶対に寿司食いてえ!!真田さんよ。寿司よろしくな。あの銀座の一流の寿司とか食ってみてえ」
「わかりました。寿司にピザとなんだか、すごい合わせになってきましたね」
「美代様はなにかありますか?」
「んんんーーーっ。憧れはチキンの丸焼きだけど、意外に、ケンツッキーのフライドチキンも捨て難いなーー」
「あの、まあ拓さんを除いて、皆さまこの大原家の財力というか力をバカにしておりますか? それが本当に食べたいものなんですか?」
「「ほんとうです!!」」
庶民的な味を求めたシェフの松田、美代は口をそろえる。
「まあ、わかりました。あと他の方にもなにがたべたいものを聞いてみますね。
まあではそれまで、みなさん、お仕事に頑張りましょう!」
「「「うおーーー」」」
と三人は声を上げた。
***
るんるんるん。
クリスマスが近づく中、仕事に追われる上司を負い目に、完全に人生初めてのクリパに心も体も舞い上がっていた。今までクリスマスに浮かれていた人々を卑下していた自分にあやまる。ごめんなさい、裏切るのは超はやい私です。
交換するクリスマスプレゼントは、結構悩んだ。女性になるのか男性になるのかもわからないから、どうしてもユニセックス対応のギフトを考えなくてはならない。うーーん。難しい。でも、意外とここで働いてくれる人は気さくな人たちばかりだ。まあ値段も2000円って決めたら、みんな気張らないで持ってきてくれたらいいなーと思っていた。
紅茶セットかマフラーみたいのがいいかなと思ったけど、なかなかいい予算2000円以下のマフラーが見つからない。あ、そっか私作れちゃうんだ! いきなり手編みってもらった人にはちょっと重いかなと思うけど、思ったようなデザインがないから、あと2日間で編みあげることを決心する。
急いで、大型店舗の手芸屋さんに駆け込んだ。混み合っている店内で試行錯誤したあと、だれでも似合うように緑青系のクールな感じの毛糸を選ぶ。毛糸を買って残ったお金で紅茶のパックを買った。まあ、これで2000円きっちりと使うことができた。
よし。
学校がないから結構時間があって待ち時間にこそこそと編み続けた。でも、さすがにみんなの前で編むことはできないから、家に早く帰ってテレビをみながら仕上げた。
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