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新婚編 初夜
しおりを挟む結婚式が終わった。
というより、もう強制的に、終わらせてしまったと言っていい。
本当は、式とそれに続く宴がもっと長引くはずだった。
隣国からの来賓からの祝辞をもらった後、国の重要な者達からの挨拶を受ける。
たぶん、これだけで、何時間もかかっている。
前から話し合っていたようで、パレードだけは別の日に行うことになったらしい。
それから、会場は移られて、月の間で祝賀会が開かれる。
これには主要な騎士団のメンバーや王族、貴族も会場を賑わし、それぞれが私たちに挨拶をしにくる。
笑顔を取り繕っているが、みなその奥の表情が怖い。
ヴァンがだんだんとイライラしてきてる。
いつも微動たりともしない立ちポーズに変化がある。
足がなんと貧乏揺すりだ!ありえない。団長が貧乏揺すりだなんて!!
フェリスも、いつもの表面的な外面笑いに磨きがかかっているが、それがもっと恐ろしくなっている。
忍並みの冷たいエアーを彼の横にいても感じるのだ。
なぜだ!
ケヴィンはさすが家令であるから動じていない。
が、イケメンレーダーで目が冴えているカナは見逃さなかった。
後ろに手を組んでいるケヴィンの爪が……食い込んでいる!
それも、すっごくだ。
だけれど、忍がいつものように冷静な微笑を浮かべている。
これはいつもながらで、それがかえって怖い。
ヴァンが呟く。
「もういいんじゃないか……そろそろ」
フェリスも、
「あー、カナが疲れないうちな……」
ケヴィンが、
「カナ。疲れましたか? 大丈夫ですか? 飲み物をいただきましょうか?」
忍が、
「カナ。どうする?」
と4人の夫に覗き込まれる。
会場はそんなイケメンたちに甘い言葉で囁かれ、見つめられている私に、既婚も未婚も関係なしに、女性達が、黄色い悲鳴をあげている。
あああ、恥ずかしすぎる……。
酔っ払った貴族の一人が、酒を片手に持ちながら、
「ああ、すごいな。この舞姫様は、こんな国中あげての最高の男たちを手にいれて……きっと寝床でも……」
と下世話な話になった瞬間、吹っ飛んだ。というより、消えたに近い。
フェリスが、「下品な話になりそうなので、飛ばしました。大丈夫ですよ。城の牢屋に転移させました」とにっこりと微笑む。
ええ! 親父エロギャグ、いまならかわせるから!! 出してあげてっと懇願するが、「大丈夫、心配しないで……」と言われる。
なんだが、結婚初日から不穏な動きだ。
ヴァンも触っていた長剣から、手をやっとはずす。
ケヴィンが、その連絡事項を近くの家臣に告げた。
なにかその飛ばされてしまた貴族の処置について言っているようだ。
「出してあげてね!! セクハラ発言はいけないけど……」と飛ばされたおじさんを気の毒に思う。
全てが連携プレイのようだ。
それを微笑みながら、見守る忍。
「このカナの旦那の選択は間違ってなかったね。」と忍がカナに囁いた。
まあ、それを聞いて、小さく「うん……そうかも」と頷いた。
だって守られている感が半端じゃない。
もうここにすでに本当の大家族が出来てしまったようだった。
なにかこの結婚式が終わったことで、5人の結束みたいなものが生まれたみたいだ。
それは、今までわたしになかった感覚だ。
まったくをもって、四人が大切な夫と感じる。
誰一人として欠けることができないと思う。
でも、今、また再びその状況に悶絶する自分がいる。
四人もの伴侶を得た私って、大丈夫なのだろうかと不安になる。
そんな中、国王が、「そろそろ踊ったらどうだ?」とフェリスに助言する。
だか、その時、うっかり私があくびをしてしまった。
それをじっと4人に凝視された。
え、なに!! 国王の前で欠伸したら、まずいの? 無礼すぎて、打ち首とか??
「え、ごめんなさい。ちょっと疲れてしまって……」と謝ると、
四人が四人とも、
「「「「踊りはいりません!!!」」」」と強引に断る。
国王リヒッド・ロゼリア・グレンヴィルも、その四人の旦那の熱意に負けた。
急に、フェリスに、がばっと抱っこされた。
ああ、結婚式に打ち首決定とは、情けなさすぎるっ。わたし……。
「父上、我妻が大変疲れているようなので、これで失礼いたします。」と切り出した。
残りの三人も頷きながら、深く国王にお辞儀をする。
国王リヒッドは、呆れたように我が子を見つめながら、
「まあ、しょうがないな。おめでとう。フェリス。幸せにな……」と父としての言葉を述べた。
腕に抱かれたまま、フェリスに聞いてみる。
「あの……欠伸ってそんなに悪いの? もしかして、打ち首とかじゃないよね……」
フェリスがふっと笑みをこぼすと、
「初夜のまえに欠伸する花嫁を見て、いい気分になる花婿がいるでしょうか? カナ」
「あ……」
「みんな寝かせたくないんですよ。今宵は貴方のことを……」
ケヴィンが横から話し出す。
えええっと思っていると、その意味が、なぜあれほど旦那衆が、式を早く終わらせたいか、わかりました。
ただいま、またあのキングベットが四つも並べられている部屋に来てしまっている。
やばい。
きたよ。
打ち首ではなかった。
違う時間でした。
悶絶タイムが……。
なぜか、不安がっているど、抱っこされている私に向かって忍が話しかける。
「カナ。今日は俺だけにカナの身体を洗わせて欲しい……」と懇願する。
これは前々から、言われていた。
渋る他の夫達に、私から説明する。
「ごめんね。みんな。あとでいっぱいみんなと一緒にいたいと思う。このお風呂の時間だけ、忍と二人になりたいの……」とお願いする。
三人とも『仕方ないなー。』とか、『まあ、姫にそういわれちゃなー、待っているよ。外で』、『カナも忍と特別な時間を今まで、過ごしてきたんですから、わかりました』とか言われながら、納得してくれた。
「忍、暴走するなよ……」
フェリスが忍を目でサインを送る。
「ふっ、大丈夫。ありがとう。ちょっとだけ、カナを借りるね……みんな、すまない」
浴槽に丁度良い温度のお湯が注がれる。
そこに優しく服を脱がしたわたしを忍はゆっくりと落とした。
ドアは閉められた。
心地よい湯気がバスルームを包む。
「どう? お湯の温度?」忍の声が浴室に響く。
「うん、気持ちいいよ。忍は入らないの?」
「うん、入る。カナの一緒に入りたい……」
自分の着ているものを脱ぎ出し、それから、ゆっくりと一緒のタブに入る。
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手つきは、滑らかであまりいやらしさは感じられないものの、何かを躊躇いながら、洗っているような感じだ……。
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「え、僕を心配しているの?」
「うん……だって、忍……最近、その……」
恥ずかしくて、先が言えない。
「……カナを抱かないから?」
「う、うん。ちょっと心配……もう忍にとって、私って魅力ないのかなとか思っちゃった」
「……………………」
お風呂の中でアワアワなのに、いきなり抱きしめられて、深いキスを落とされる。
んんんんんんっーーーーと息が苦しいが、久しぶりの忍とのキスに身体が震える。
「あああ、忍、大好き。愛してる。もっとキスして……」
「…………カナぁ!」
頭をがっちりと支えられて、顔以外は浴槽の中に沈む。
キスをしながら、忍が質問攻めをする。
「あああ、カナ……本当に準備はいい?」
んんんぅ。
「大好き。カナ、君がヴァンから挿入されて、イクのを見守るよ。僕は……」
んんんんっ。
二人はそのままアワアワの中、ずっとキスをしまくりだった。
あまりにもキスを長い間しているので、外からノックがかかる。
「すみませーーん。外で待っている夫たちが業を煮やしております。特にフェリス殿下がやばいでーす。部屋が壊れそうです。」
とケヴィンの声がドア越しから聞こえてくる。
「ああ、わかった。悪かった。もうすぐ出るから……」
と言って、忍が名残惜しそうにキスをやめた。
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