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お付き合い編 最終章1 観察日記

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 最近、おかしい。
 なにか男4人衆がこそこそと話し合っているのを何度も見かけてる。
 そして、『あれ、皆んな、なにしているの?』と聞くと、みんな『あー、カナ。なんでもないよ』と言って、蜘蛛の子を散らしたように逃げていく。
 そのあと、必ず忍が、『どうしたの。カナ。いつも可愛いね』とか、フェリスが『うん、カナは本当にいつも可愛すぎ』とか言ってくる。

 あれ、なんかおかしい。
 だって、この二人、言っちゃ悪いが、あんまり仲良くないはず……。

 なんか怪しいと私が言うと、二人とも、

 「何言っているの、カナ。フェリスと僕は仲良いよ。だって、二人ともカナが大好きだからね~!」
と言って、フェリスの肩を組む。

「お、おう。そうだ。俺たちはまったく仲がいいんだよ……」
と言って、笑っている? いやいや、それって苦笑いじゃない?

 そんなことをやらかしている間、

 あ!

 ケヴィンとヴァンが、さっと何かを隠しながら、素早く去っていく。

「え!!なにしているの~?」と追いかけようとしたら、忍に掴まれ、いきなり顎クイだ。

 んんっーーーーーーーーーーーっ

 甘いキスを落とされる。

 「ほら、カナ。そんな可愛い顔しないの」

 ちょっと、え、なんなの……。

 そこへフェリスも介入する。

 「おい、忍。いつも思うが、お前は周りを容赦しないなっ……」

 そんなことをいいながら、フェリスも後ろから抱きしめてきた。

 「カナ、忍だけが男じゃないんだよ。俺もいるんだ」

 そして、あれーーーーーっ。

 フェリスさえも私にキスを落としてくる。

 え、、マジ。しかも、深いやつだ。あああ、やばい、腰が抜けそう……。

 なぜか真昼間から、しかも野外で、二人の男に囲まれキスを繰り返される。

 しかも、もうトロントロンッのぐてんぐてんっになった私に、

 「あー、もう……そんな蕩けた顔。もういまベットにいって食べちゃおうっか……フェリスも一緒に来てもらう?」
 「お!! おい……いや……まて、いいかもしれない。将来の練習だ……」

 ははあ? 
 ちょっと待ってくださいませ。

 「カナ。想像してみて……イケメン二人の裸の絡み合いを生で見ながら……しかも、その二人がアンタをイカしちゃうの……」

 ぎょえーーーーーーー!

 鼻血悶絶大パーティーになってしまう。
 生命体として、危機を感じたカナは、思わず十八番を発動してしまった。

 二人の男の間をハッとすり抜け、後方に突然高速ムーンウォークで走り去ったかと思うと、カナの必殺の一つ、プロレスの技、ランニングエルボを忍に食らわせる。

 うぐっっと唸る声がなると同時に、フェリスに回し蹴りを食らわす。

 もちろん、この男二人に対して、カナの一撃なぞ、致命的にはまったくならない。
 が、油断していたのもあって、この二人の男は悶絶した。

 「……なんか、気に食わない。みんな隠している」

 そう捨てゼリフを吐き、カナは立ち去った。
 しかも、あっかんべー付きだ。

 「「・・・・」」

 腹に受けた痛みとともに二人の男が唖然としている。
 可愛いペットに噛み付かれたような気分だっと立ち去るカナを見て忍は思う。

 「お、おい、なんだよ、いまの! 忍」
 「あ、フェリスは知らなかったね……カナはね、まぁ、おれの指導もあって、かなりの格闘技……じつは網羅している。今日は彼女のお情けがあったから、急所は狙われていないよ」
 「き、きゅうしょ? どんだけ、お前あいつに教え込んだんだ」
 「まあ、魔法の使えない世界で、下ごごろあるやつらからは守れる程度だよ……」


 ****



 絶対に、なにかあの4人で悪巧みを考えているはずだ。
 なんだろう。

 これは十八番の観察モードが入ってしまう。

 最近はちょっと出番が少ない観察日記をつけてみることにした。
 しかも、このごろ私の寝室の周りでは大改装が行われているらしく、朝からうるさい。
 そのため、朝起きは全く苦にはならなかった。

 朝5時。

 ヴァン団長、早朝の走りに出かける。
 どうやら王宮外まで走りにいくみたい。

 ケヴィン 朝の身支度をしているみたい。
 部屋には、入れないから、不明。

 フェリス 結界があるのか……全くわからない。
 たぶん、寝てる?と思ったら、どうやら演習場でリヒトたちと朝練をしていた。
 意外に努力家なんですね。

 忍 ベットの中で寝ているはず。
 だって、私が置いてきた。
 案の定、帰ってきたら、やっぱり寝てた。
 しかも、観察を終えて帰ってきた私を見て、『おかえり、ハニー、どう? 楽しかった?』とか言ってキスしてくる? 
 え? バレてる??


 朝7時。

 朝ごはん、みんなそれぞれ別々に食べる。
 ヴァンは宿舎で他の団員と食べる。
 『おれもいつかカナと朝ごはんを一緒に食べたい!』といいながら、いつも宿舎で食べている。
 ケヴィンは家令であるから、その前にさっさと食べているみたい。
 忍は、いつものように私と食べる。最近は、フェリスがおれも一緒に食べたいと言い出し、よく3人で食べる。そして、食べ終わったはずのケヴィンが、業務連絡ということで、お茶だけ一緒にする。


 朝9時。

 ケヴィンとの勉強が始まる。
 だいたいお昼まで続く。
 最近は、デートの件から、ケヴィンの甘い態度には、磨きがかかっている。
 なぜかあれから、いっつも恋人つなぎをしながら、授業を受ける。
 でも、片手が使えないとページもめくれないから、正直面倒だ。
 だが、そんなことを許さないかのように、『だいじょうぶ……私がめくって差し上げます』と流し目で言われる。

 いや、甘すぎるって。
 ああ、そんなことを思って、彼を見上げると、キスされてしまう。
 ケヴィンの影に自分がすっぽりと隠れてしまう。

 しっとりとした彼の舌が自分の口腔内に侵食し始める。

「ああ、カナ。ごめん。あまりに貴方が美味しそう過ぎて……」
と、ぺろっと舌を舐める仕草をする。

 勉強、キス、悶絶、勉強、キス、悶絶を果てしなく繰り返すこの時間……体力と精神がかなり疲れる。

 であるから、この時間みんなの予定は不明だが、いろいろ調査してみたら、どうやら……

 ヴァン 騎士団の指導と業務の仕事
 フェリス 王子としての執務
 忍 ふらふらしている?それとも、仕事か?

 という結論だった。

 忍は、働いているのか?

 昼12時。

 最近はヴァンとお弁当を食べるのが日課だ。
 だから、ヴァンは怪しくない。

 忍とフェリスはどうやら最近、ときどき一緒に食べているらしい。怪しい。

 ケヴィンは『仕事が溜まっているので、カナと別れるのは悲しいけど……』と言って、どうやら時間短縮のため、自分の執務室で、軽く昼食を食べながら、仕事をこなしているらしい。家令っていったって、ほとんどフェリスの右腕だ。忙しいことには変わらない。

 午後3時。

 フェリスとは必ず、3時のお茶を一緒にすることにしている。
 朝から忙しい彼が『カナと会えないなら、第一王子を辞めたい!』とだだをこねたため、では3時のおやつの時間にしましょうっということになった。ときどき忍が邪魔しにやってくるが、フェリスがカンカンに怒って、忍を睨み付けるので、なぜか忍もフェリスの時間を邪魔しなくなった。

 天気のいい日は、いつも木陰にまったりと過ごす。
 でも、だいたい木の影で悶絶もののキスを食らうのだ。
 彼の熱い舌と唇は、いとも簡単に私を蕩かしてしまう。
 いつ見ても、フェリスの美しい瞳と鼻梁を眺めながら、『なんでこの人は、私なんか選ぶんだろう』と疑問に思ってしまう。

 いつも一時間ぐらいの休みだが、半分以上がキスに注がれる。後の半分は、お互いに何をしたかとか、おやつを食べる時間だ。

 ケヴィン:業務
 ヴァン:業務
 忍:たぶん勉強?か、遊んでる?


 午後5時。

 夕食はまちまちだ。
 忍とはいつも一緒に食べる。
 それはあまり変わらない。
 フェリスやケヴィンもくる時もあるが、彼らは、別々で王宮で食べることも多い。

「はやく、カナと一緒に食べたい~」とフェリスはいつもブツブツいっている。


 午後7時。

 こちらにはテレビもスマホもないから、かなり暇!と思っていたが、騎士団の宿舎に遊びにいったり、(みんなでボードゲームとかする)部屋で本を読んだり、王宮の催し物などがあり、意外と忙しい。

 午後8時。

 湯浴みをする。
 ここだけ、プライベートな時間を死守する。
 忍が絶対に邪魔をしてくるときもあるけど、『女の子には一人の時間も必要です!』と突っぱねる。

 午後9時。

 ベットの上で、すきなBLの本を読む。
 最近はまっているのは、『禁断の愛:銀箔の魔術師と孤高な王子の危ない関係』だ。
 どうやら、この本、忍とフェリス殿下のいけない関係を描いたものっぽい。
 本人たちを横目に、かなり内容的に濃いので、BLファンとしてはかなり楽しめる。
 また、もう一つのお気に入りは、これもまた『禁断:騎士団の危険な同僚』というのがある。これも、作者はどう考えても、リヒトとカインを知っていると思われる内容だ。ライバルと思っていた二人が、実は惹かれあい、禁断の道に走ってしまうという内容だ。

 そんな本を読んで、ニマニマしていると、今度はもっとニマニマしたイケメンがベットの上から迫ってくる。

 絶対にわかってやっている、こいつっ!!と思う。
 だっていっつも超絶な色気で迫ってくる。

「カナ。きょうはまだ朝しかキスしていないよ。ぼくは……」

「え……ああ、たしかに……」と正直に答えた私はいけなかった。

 いつもこれでデロデロのぐちゃぐちゃのべちゃべちゃだ。
 気がつくと忍の頭が股に挟まっている。
 彼の長い指がいやらしい音を立てながら、私を追い込んでいく。

「カナ、もうすぐ、きみを本当に幸せにしてあげるから……」

 忍は深く呼吸をすると、その想いをその指先に込める。
 上り詰めていく愛しき人のピンクに染まる頬を見ながら、やさしく微笑んだ。

 観察日記……ここに撃沈。
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