腐女子 異界で悶絶する【改訂版】

お付き合い編 魔女の正体

　「カナ！ 大丈夫か？」

　埃の中から、聞きなれた声がする。

　「し、忍？ 大丈夫。私、ここにいる」

　埃の中から忍が現れた。

　「カナ！！」

　忍がカナを抱きしめる。

　そして、そこには、慌てて入ってきた、もう一人の男とさっきの緑髪の美女がいた。

　「あーあ、忍。時を進めなさい。こんな事態にまでしてしまって……」

　その男はまるで自分の子供を怒るように諭す。

　この声……とその口調……もしかして……。

　「え、ちょっと待って……もしかして……そのオレンジのイケメンの方……お父さん？」

　このオレンジ色の髪の毛のイケメンが、なぜかお父さんの口調と声にそっくりなのだ。
　そして、まさか……この緑髪の美女は？？

　その女性を振り返ると、
　「じゃーん！ 正解。お母さんです。でも、ここでは魔女アリスよ。素敵でしょ？ カナちゃん、ママを見て！ このボディと若さ！素晴らしいわ。お父さんもイケメンに生まれ変わって、ちょっと新婚みたいだわ。私たち！」
と熱く二人の前でキスをする二人。

　なんですと～！

　「ちょっと、どういうこと？ 忍」

　はあっとため息をつきながら、忍が説明しだす。

　「この二人は父さんと母さんだよ。転生してわざわざやってきたんだ。俺たちに会いに」
　「え？？？転生」
　「そうだ。転移してしまうと、このゲーム上システムがセーブなしの再起動してしまう。それは俺たちの存在を否定するものだから、かなりやばい。それを父さんはおれのプログラミングを解読して、悟ったんだ。だから、このゲーム上のキャラクターに転生する方法を思いついたらしい」
　「あー、大変だったよ。カナと忍が消えてしまって、僕たちは焦ったよ。でもね、忍が今まで実験していた仮想現実やら人工知能などの資料をもとに、いろいろ仮説を立ててみたんだ。母さんと。でも、一番は、忍は絶対に、カナをおいて何処に行くはずもない。そこで、君たちいなくなった時に置いていったあのゲーム機を拾ったんだ。あれをね」

　「え、父さん……あれ見たの？？」

　一応１８禁のゲームでかなりエッチだ。
　親に見られるのは恥ずかしい。

　「あーー、まーー、なんというか。見ました。母さんのほうが、なんか燃えていたな」
　「え！最高だったわ。もう美形満載で、忍はいいもの作ったわね」

　にっこりと微笑む美女。

　「カナ。この人たちはこのゲーム上のキャラクターに転生したんだよ。二人ともあのフェリスを祝福した７人の魔女だよ」
　「え！ でも父さん、完全にオレンジ色のイケメンって」
　「あ、それはそこまで、俺がキャラ設定していなかったからね」
　「そうなのよ。カナちゃん。他のキャラだとなんていうの。もしかしたら、他の男性とイチャイチャしちゃうじゃない。困るのよ。そういうの。でも魔女なら、ないでしょ。それに異界でちょっと魔女してみたいじゃない」

　ルンルンの魔女になりきったお母さんがいた。

　「父さんも、母さんが魔女なら……一緒に魔女になりたいと思ってね。なぜか見た目がオレンジ髪のイケメンになっちゃったけど」
　「ああ、だぶん、男性女性の識別が曖昧になったんだろうな、転生の際に。でも、父さん、どうやって転生できたんだい？ おれはそれが知りたい」

　「それが不思議でね。ぼくもこのプログラミングを自分のパソコンにダウンロードしてね、いろいろ解析していたんだよ。それで、何度もやってもうまくいかなくてね……馬鹿馬鹿しいとおもったんだけど、仮説として、ifの文章をいれてみた。if もし我々が７人の魔女として、この国を１ヶ月へ行けたら……と始めたんだよ。その時にね、母さんがお茶を持ってきてくれて、飲もうとしたら、お茶が熱くてこぼして、それから、急に熱くなって光に飲まれたんだ。」

　「そうか。そういうことか……」と、忍が言う。
　「だから、誘拐してごめんね。多分あと少ししか此処にいれないんだと思う。もうここに来てから、二週間はたっている。あと二週間しかないから、どうしても忍とカナに会いたかったの。だから、魔力が使えるようになったから、強引に連れて来ちゃったの……ごめんね」

　「お父さん……お母さん」

　見た目は全く違うけど、言葉の端々に親のぬくもりを感じた。

　「お父さん、お母さん、実はわたし、記憶を取り戻しているの。５歳前の……」
　「「ええ！カナちゃん！だいじょうぶなの」」

　「うん、大丈夫。ありがとう。忍がいたし、大丈夫」

　三人で仲良く色々な話をし始めた。
　この国に来た時のことや忍が探しにやってきたことなどだ。
　もちろん、あのカレンダーの話などもした。
　お父さんとお母さんは喜んでくれた。

　忍がそのやりとりをみながら、ようやく手を回し、時間を進め始めた。

「まあ、そろそろ戻そうか」と呟いた。