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お付き合い編 忍 飛人?と出会う

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 「シルク……君に会わせたい人がいる。来てくれるよね」
 「……ああ」

 軽く返事をする。

 シルクは殿下の後を追い、外廊下を渡り、一つの場所にたどり着く。 
 ここは王宮の北側にある区域だ。
 裏はすでに森に囲まれており、王宮内でも一番外れであり、人通りも少ない。
 なぜなら、ここからは王族や神官以外は基本的に立ち入り禁止の神聖なる場所だ。
 そこには大きな鉄格子で出来た草模様の門があった。
 そして、その奥には、神殿と呼ばれる白亜のきらめく塔がここから垣間見れる。

 「悪いが、ナターシャ。君はここまでだ。ここからは私とシルクだけで行く」

 ミハエル殿下はナターシャに微笑みかける。

 「はぁーっ、わかりました。殿下。どうぞよろしくお願いいたします。シルク、言っておくよ。ぶっ壊すな、この王宮。妹さん、泣くからな。そんな厄介なことすると……」
 「ああ、わかっている。確かめたいことだあるんだ……」

 魔女は仕方がなくそこを離れる。
 ミハエルが自分の手を門のところにある端末に当てる。
 光が放たれ、魔号が色と形となって光り出した。
 そして、金属音が擦れる音とともにこの門が開いた。

 「さあ、シルク。入って」

 二人はそのゲートをくぐり、庭園の一部だと思われる花と緑のトンネルをくぐり抜けていった。
 さすがに神殿とよばれる区画であって、綺麗に庭が整えられており、空気に清潔感がある。
 しばらくすると、その塔の入り口に円形の広場があり、そこに一人のオレンジ色の短い髪をした男性が丸テーブルを囲み、お茶を飲みながら、なにか本を読んでいた。

 忍はその男の背中を凝視した。

 そして、近づいてくる人を感じて、そのお茶を飲んでいる男は振り向いた。
 その若い男が「あ、ミハエル殿下」と言葉を発したと同時に、シルクは手を上にあげ、空に円を描き、時間を止めた。

 すると、不思議なことに、ミハエルの時間だけ止まった。

 いや、正確に言えば、この男と忍の時間以外、全ての世界の時間が止まったのだ。

 ****

 二人の男が目線をそらさず、凝視する。

 隣には、あっと口を開いたままのミハエル殿下がいるが、それは関係ないらしい。
 でも、もう一人の男は、

「あ、時間止めましたね。すごいな。こんなこともできるのか?」と驚いている。
 そして、軽くミハエル殿下の頭を叩きながら、『ふーん、すごい、本当だ。』とかいいながら、感動しているらしい。

「お前は誰だ?」

 忍がしびれをきらして、質問する。

「わたしは、なんだっけ……ほら、あれですよ。魔女ですよ。あ、でも女じゃないからね。一応、肩書きは魔女キリアです。本当は魔術師って言いたいんですけど……ほら、設定が魔女なんですよ。あの7人の……ほら、魔女って日本語だと、女だけど、本当は男女両方指すみたいですよ。そのせいなのかな~」
と言って、頭をポリポリかいている。

「7人の? おまえもしかして……」
「そうそう。覚えています? あの設定。あの7人の一人ですよ」
「おまえ、もしかして転生者か?」

 忍がそう答えながら、自問する。
 時間を止めている時の発動できる魔術を考える。
 あまり、空間に穴を開けるのは考えものだと思慮していると、この目の前にいる不可思議な男について解析を始める。
 たしかに魔力は甚大らしい。
 でも、まだ俺ほどではないが……。

 「さすが! シルクというより、忍って呼んだほうがいいかな」

 シルクがじろっとこのふざけた男を見る。
 得体のしれない不安に駆られる。

 「そんな殺すような目でみないでくれ。お前、オレがわからないのか? 忍?」

 このふざけた男は俺を哀れな目で見返し、微笑みかけた。

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