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お付き合い編 ケヴィンとのデート
しおりを挟む「カナ、今日はありがとう。わたしと“デート”してくれて」
なぜかデートなのに仕事着の燕尾服をきたケヴィンが微笑みながら、わたしに話しかける。
二人で黒塗りの箱型馬車に乗っている。
お忍び用なのかわからないが、外見はあまり装飾感がない小ぶりな馬車であるが、内側は大層に豪華だ。 赤のベルベットのクッションとるオーク材に所々、金箔の装飾がなされた豪華な内装。ちょっとお姫さまが自分の執事と愛の逃避行に出た感じがする。
しかも、私の好みをおさえた黒の燕尾服なんです。ケヴィンったら、ありがとう。福眼。
どうやって、フェリスを巻いてきたのかなと疑問に思う。
なぜなら、デートの情報はなぜか王宮を駆け回り、ヴァン団長まで迫ってきたからだ。
一応、団長とのデートはオッケーしたけど、大丈夫だよね。
「ううん、そんな。全部決めてくれてありがとう。本当楽しみ」
窓から見える景色に目を奪われる。
石畳の道並みをじっとみながら、マーケットやら人々がカゴなどに買い物したり、子供たちが輪投げで遊んでいるのを横目で楽しむ。
これから行くところはケヴィンの実家に近い避暑地らしい。
どうやらケヴィンは貴族の出身だけれど、代々王家につかえる血筋で、ほぼ王宮に住み込みの生活を送っている。まあ、それはフェリスも同じだからね。王子だもんね。
「これから行くところは、この国の貴族達が避暑地としてよく訪れるところで、貴族達がセカンドハウスなどが建ち並ぶところです。山の麓に湖があって、とても綺麗なところです」
「へえーー、それは楽しみだね。」
「ただ、わたしはただのしがない貴族の身の上……貴女を楽しませるセカンドハウスがありません。申し訳ないです」
「え、そんなこと。気にしないで。フェリスじゃないんだから、やめようよ。そんな持ち物自慢」
ケヴィンが自分をじっと見ていた。
破顔した笑顔が可愛いと思ってしまう。
「ふふ、カナってやっぱり、面白い。持ち物自慢なんて」
ケヴィンの顔に明るさが戻る。
馬車はすでに林道を走っていた。
砂利道をそのまま馬車は進む。
まっすぐの田舎道だ。
春先のため、新緑が綺麗だ。
考えてみると、こっちの世界に来てからのほうが、自然を楽しめる体になっていた。
ゲーム三昧からゲームのなかに入ってしまったのだから……。
御者からはまったく私たちが見えない。
異界の世界でも、目に見える自然は日本と同じだ。
ちょっとただ緑の風景を見ているだけなのに、懐かしい気分になる。
そうだ。あんまり旅行とかこの王宮から出たことなかったなーと思っていると、目の間に座っている美形が私をじっと見ていると思いきや、視線をパッと外される。
さっきの会話から幾分か時間が経っていた。
もうすぐ着くのかなと思った。
ケヴィンったら、具合でも悪いのかと思う。
なぜなら、ケヴィンは急に目的地が近くになってくるにつれて無言になったからだ。
頬は桃色だし、手はぎゅっと前に握って自分の膝の上で固まっている。
「だ、大丈夫? なにか具合悪いの? もしかして、馬車苦手?」
乗り物酔いしているのかと心配して、声をかけると、ふっとため息をついたかと思うと、ちょっと微笑みが浮かぶ。
「カナ。貴女という人は……どれだけわたしは貴女に狂わされるのでしょうか?」
急にケヴィンが立ち上がり、そのふわっとした男性的な色香を匂わせて、わたしの隣に座る。
意味がわからないが、かれの色香にあてられる。
ああ、この匂い素敵。
彼に面している体の横が熱い。
「カナ、ちょっといいでしょうか」
ええっと言っているうちにケヴィンの男らしい片腕がわたしの肩に回される。
そして、もう一つの大きい白い手が、わたしの手を握る。
美しい長い黒髪の男が、熱情を潤わせた目線でわたしを見つめる。
よく忍はわたしのことを鈍感とか、腐女子とかいろいろバカにするけれど、
それだって、こんなわたしでも、これだけはわかる。
だって、
こんな
色っぽい視線。
胸がきゅんとしちゃう。
ケヴィンはわたしのことが好きなんだ。
最初はすごい鉄仮面、冷徹のケヴィンだったけど、意外にシャイで、言葉はストレートだ。
「カナ……。口付けしてもいいですか?」
揺れる馬車の中で、突然、上半身を引き寄せられて、黒髪がわたしの頬にかかる。
決して、強靭とまで言えなくても、細い体から引き締まった筋肉と何とも言えないほのかな色香が彼の黒の燕尾服から漂う。
彼の二つの指で顎をくいっと上げられる。
あ、これって。
女の子の憧れ、アゴくいじゃんと思った私であったが、その後は他の感覚が支配し、私を酔わせる。
あああ、ケヴィン……。
やさしく甘い彼の唇が私のを奪う。
まずは唇と唇だけの軽いキス。でも心臓はうるさいくらいに鳴っている。
彼の瞳が自分を射っている。
「……愛してる」
また蕩けるような顔と麻薬のような囁きで私を砕けさせる。
深く悩ましいほどのいやらしさで、ケヴィンは舌を私の口の中に入れ始めた。
絡みつく唾液をさらに舐め回すように彼の舌が激しく蹂躙する。
「はあ……あっ」
口から欲情と快感が混じった声を漏らしてしまう。
こんなに男性的な部分が潜めていたその瞳を見つめ返した。
彼の目がまるで野獣のように燃えているようだった。
もう気がついたら、後頭部に彼の手がガシッと抑えられ、もうキスされまくりだ。
「あああ、最初に会った日から、こうやってあなたにキスをしたかった」
壮絶な色気で、その瞳が私を悶絶へと導く。
この深いキスがとてつもなく永遠に続く。
「あ、それって……あ、だめ……そこ……そんな」
どこにそんな獰猛なものを隠しているのかわからないほど彼のキスは心も身体も震わせていく。
ああ、わたしの下腹部がジンジンしてきた。
ケヴィンの唇が白い糸をひきながら、私の唇を離れる。
ああ、わたしに明らかに欲情を向けている彼の目はとっても愛おしい。
そのねっとりとした舌をわたしの赤みをました頬、耳へと移り出す。
首を思いっきり吸われる。
あああ、いたっ
「……今日だけ、貴女を独り占めしたい」
ペロンとさっき強く吸ったところを舐め、今度は首元をどんどんさがってキスを重ねてくる。
ああ、彼の唇が胸の双方の上をなぞり始めた。
下半身がぞくぞくしだした。
もう完全に彼の思い通り状態だ。
デートのしょっぱなから!!!
こんな悶絶状態なんて!!
(まだまだ続きます)
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