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夜会参戦 二
しおりを挟む現在、眩いほどのシャンデリアの輝きのもと、王子ミハエルと国王と王妃が会場の王座の方に腰を下ろしていた。
会話をしながら、夜会での様子を見守る王族達。
まだ七歳であるミハエルの足は、その豪華な椅子に座ると床につかないため、足踏みのような豪華な台座が置かれていた。
その可愛らしさにみな心を奪われていた。
上手く会場に入り込んだカナが、ふと会場を見渡すと、フェリスがあの噂の三大公爵の一つ、アドリーナ公爵の令嬢のダイナマイトボディの姉さん、ナタリー様と踊っていた。
ナタリー様は、あのダイナマイトボディがかなり引き立つような真紅のドレスを着ていた。
もちろん、襟ぐりはかなり危険なぐらいに開いている。
あの胸の盛り上がりはほとんどコルセットなしでもいけそうなんじゃないだろうか? と想像する。
だが、ナタリー様の顔立ちなのか、それとも振る舞いのせいか、下品に全く見えない。
あのカレンダー作成時に、彼女と関わったが、とても公爵令嬢とも思えないくらいにキップのいいお姉様だった。
お愛想かもしれないが、二人は笑顔で踊っている。
会場の貴婦人たちは、皆、感嘆のため息をついていた。
二人の肩を並べて踊る姿は物凄い絵になる。
ちょっと胸に痛みを感じた。
あんないつも愛を囁いているのに、やっぱりフェリスはリアル男子だし、悪魔だなっと思ってしまった。
純情な腐女子の心を揶揄うなんて……。
仕方がない……。もうちょっとイケメン観察して、マカロン的なお菓子を食べて退散するかっと心に決めた。
視線を移すと違うものが目に入った。
あ、ヴァン団長!
ミハエル殿下と思われるかわいらしい少年の真横にいる!!
素敵!
団長が着こなしているのは夜会用の軍服だなと推測した。
イけるイケメンオヤジとなっている。
黒地に金色のモール。
いっぱいなんだが勲章がぶら下がっている。
おーー、いっぱい令嬢の視線集めているけど、残念だけど、護衛だから誰とも踊れないじゃん。
ああ、またこの夜会で機会を見逃しているよ……ヴァン団長……。
せめて視線に気がつこうよ。
ミハエル王子の周りをガン見しているから、ぜんぜん周りの令嬢の視線に気がつかない。警護だからしかたないか。
こんどはカインを見つけた。
へへ……カインくん。わたしを舐めたらあかんですよ……。
口調がだんだん変になってくるカナ。
なぜなら、カインは変装をしていた。
しかも女性に!
これはあとで聞いてみようとカナは心に決めた。
カナの予想だか……女子に混じって、なぞのもう一人の公爵令嬢のさぐりを入れているんだなと感じだ。
がんばれ。
カナはいろいろな騎士団のイケメン軍服姿をみてご満悦になっていた。
食べ物も美味しいし、問題なかった。
何度か男性に声をかけられそうになったが、早業で逃げ去っていた。
いま、ここで踊る勇気なんてないし、下手にボロが出て、誰かに追求されたら、招待されていないのがばれて一貫の終わりだ。
そんな時……カナのイケメンレーダーに壇上の脇の一人が引っかかった。
目があう二人。
え? あれは。
視界に入ってきた人物を凝視し、自分の目を疑う。
銀箔のように輝く髪……。
紫紺の色を光らせる美しい瞳……。
白を基調としたローブのような衣装に金の飾り紐がかけられ、装飾の意味合いが強い長剣を腰から優雅にさしていた。
「え……マジ???」
でもなぜ銀髪????
あちらも、カナの姿に目を見張る。
震える彼の唇。
体から、なにかを発するようにカナを視線で捉えていた。
そして、なにもいわずに優雅に御座の階段からゆっくりとこちらの方へ歩き始めた。
時間がゆっくりとスローモーションに感じる。
「……シルク、どうかしましたか?」
ミハエルが声をかけたが、そんなのはシルクに聞こえない。
ヴァンもミハエルが狼狽えているので、その原因となっているシルクを目で追う。
ミハエルの声掛けを無視しているシルクを止めようかとヴァンは思案した。
でも、それも急に起こった歓声に邪魔されて気がそれた。
わーーと、人々が拍手をする。
ちょうどフェリス殿下とナタリー令嬢のファーストダンスが終わり、その余韻につつまれた会場は興奮した空気に包まれていた。
さあ、つぎにフェリスが踊るのは誰なのか?
会場はフェリスの動向を探っていた。
そんな会場がざわめいている中、マルトで氷の微笑とよばれる美丈夫のシルクが前を通ると、その神々しいまでの美しさにフェリス達のダンスを見て興奮していたグレンヴィルの貴族達も驚いて、自然に道を開けてしまう。
その会場の違うざわめきにフェリスもケヴィンも顔を向けた。
本来ならこのような公式行事には顔を見せないでいた。
しかし、マルト王国の正式な訪問は、外交上重要な意味があったため、今晩は珍しく顔を出していた。
そんな喧騒の中、カナは見覚えのある顔に凝視されているのにもかかわらず、またマカロンもどきを口に入れようとしていた。
ありえないっと思って無視をしていたのだ。
そして、どんどん近づいてくる銀白色の髪の美男子が満面の笑みを浮かべて、自分にやってくるのを気がついた。
なんかやばい感じだ。
しかも、あいつにそっくりだし。
逃げる?
すでにカナの体はその窓のすぐ側まできていた。
思った時には体が動いており、体が窓の外にすり抜けようっと思った瞬間、とっさに腕を掴まれた。
見上げると、目の前にシルクがこぼれそうな笑みを浮かべていた。
「カ……ナ……やっぱり………カナ!! 会いたかった………」
と言って、カナの腕を引っ張って、自分の腕の中でぎゅっと抱きしめた。
その美しい銀箔の長い髪がカナのドレスに絡みつく。
「んんん!!!! ぐ、苦しい………!」
それを見たかどうかは確かではないが、瞬時にフェリス殿下もケヴィンもカナたちの前にやってきていた。
ケヴィンがさっとシルクとカナ達の前に現れる。
あだ名が鉄仮面とも呼ばれるケヴィンに相応しく、全くの無表情で読み取れない。
「シルク殿。申し訳ないが、その令嬢から手を離していただけないでしょうか」
友好的である態度は見せながらも、ケヴィンは腰の長剣に手を乗せていた。
にわかに眉間にシワがよっているように見えた。
後ろでフェリスが唖然としている。
ここで介入出来ない自分の立場を苦々しく思っていた。
ここで王太子が出てきたら、かなり事が大事になってしまう。
それを避けるために、フェリスは我慢してケヴィンの後方で黙っていた。
ケヴィンが口を開ける。
「シルク様……。こちらは、わたしが身元引受人となっております辺境の伯爵令嬢カナ様です。今日は体調不慮のため夜会は欠席のはずでしたが、無理をして出てきてしまったようです。来賓に無礼があっては差し障りがございますので、どうぞカナ様をこちらに返していただけますか?」
黒燕尾服のケヴィンは慇懃に言葉をのべながら、謝罪した。
シルクは、まだカナを腕の中にしまっていた。
しかも、ぎゅっとさらにカナを腕の中にしまい込む。
その紫紺の目だけは光っていた。
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