腐女子 異界で悶絶する【改訂版】

魔女の考察

　魔女は思う。

　こいつが本気を出せば、国一つ滅せるかもね……。

　弟子の力量を推し量り、考える。
　でも、まったくこいつには欲がない。
　あるといえば、行方不明だが、妹のことだけだ。

　あと、こやつは子供に妙にやさしい。
　不思議な美男だね。
　女には一切興味をもたないし。

　忍は魔女の知識と人脈をかりて、孤児院を設立した。
　魔女はちょっと王宮に顔が効くのだ。

　王宮と連絡をとり、孤児院の子供達にもそれなりの高等教育が受けれることを確約し、資金も調達できるようになった。
　最初は嫌がっていた魔女だが、忍の鉄壁の睨みをみて、考え方が変わった。
　そして、なにか魔女は王宮の弱みをにぎっているせいか、すぐに許可も予算もおりた。

　孤児院は教会のすぐ隣に建てられた。
　庭には子供たちの遊び声が聞こえる。
　その中には、まだやってきたばかりの子供もいる。

　仲間から、離れて一人の子供が、庭の端で土をいじっていた。
　一昨日入ってきたばかりの子だ。
　まだ５歳くらいだろう。

　周りになれないのだ。
　どうやら、親が育児放棄して、寝ているところを路上に置いていかれたらしい。

　忍は、その子をみると、すっと近寄った。
　やさしく声をかけている。
　驚く少年。

　あんな美形に声をかけられれば、子供だってそりゃ驚くさ。

　その氷の微笑が融解し、優しく微笑んでいた。
　忍が少年の頭を愛おしむように撫でる。
　少年の頬が赤くなっていた。
　そして、忍はその子の手をゆっくりと取り、一緒に他の子供達の輪の中へと入っていった。

　子供達のあたらしい友達を迎える歌が外まで響いてきた。

　めずらしいね。
　あの仮面の微笑が壊れているね。
　なにか思い出したのかね。
　まあ絶対に妹のカナのことだろうけどね。

　はあっと魔女はため息をついた。